風疹
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風疹

風疹患者の紅斑
概要
診療科感染症内科学, 新生児学
分類および外部参照情報
ICD-10B06
ICD-9-CM056
DiseasesDB11719
MedlinePlus001574
eMedicineemerg/388
Patient UK風疹
MeSHD012409
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風疹(ふうしん、: Rubella)とは、ウイルス感染症の一種で、風疹ウイルスによる急性熱性発疹性感染症[1]。一般に日本では「三日はしか」「三日ばしか」としても知られ、英語では「German measles(ドイツはしか)」とも呼ばれている。日本では「風しん」(「疹」が常用漢字に含まれていないため)として、感染症法に基づく五類感染症に指定して届出の対象としている[1]

伝染力は、水痘(水疱瘡)、麻疹(はしか)、ノロウイルス感染症よりは弱いが、インフルエンザより強い。日本ではワクチン接種を受けていない成人男性の患者が多い。効果的な治療法は無く、症状に応じた対症療法が行われる。発症防止策はワクチンによる予防接種のみで、妊娠初期に妊婦が感染した場合の先天性風疹症候群が問題となる。
疫学

本疾病は罹患歴があると再罹患しないとはされるが、経年により抗体価が低下している場合や、がん治療などで免疫力が低下した場合など、まれに再発することがある。日本では、かつて5 - 9年ごと(1976、1982、1987、1992年)に大流行があったが、男女幼児が定期接種の対象となって以降は、大きな流行は発生していなかった[2]。しかし、2012年 - 2013年、2018年 - にかけて、成人男性のワクチン未接種者を中心に、風疹の大流行が発生した[3][4]。2013年流行後に大阪府で行われた調査によれば、妊娠適齢期の20 - 30代女性の20 - 30 %が感染を防御できる十分な抗体を保有しておらず、潜在的に先天性風疹症候群が発生しやすい状況にあると報告されている[5]
原因

ウイルスは、感染者の咽頭から排出される体液に含まれ、飛沫感染または直接接触感染する。インフルエンザウイルスよりも小さく、手洗い・うがい・マスクの着用では、感染防止ができない。伝染期間は発疹の発症前1週間から発疹出現後4日間[6]トガウイルス科ルビウイルス属、直径50-70nmの一本鎖RNAウイルス。正十二面体のカプシド構造を有する。
症状
臨床症状

特徴的な症状は、「発熱」「発疹」「リンパ節腫脹」[7]で有るが、臨床症状だけで風疹と診断することは困難[8]

成人の臨床症状は、麻疹に似る[7]。無症候例は、30 - 50%とされている[9][7]。また、小児より重症化しやすいとの報告がある[7]

潜伏期間は2 - 3週間程度。

初期症状(発疹の1 - 5日前)は微熱、頭痛、倦怠感、鼻水、せき、痛みのないバラ色の口蓋斑点(典型的な3症状である紅色斑丘疹、発熱、頸部リンパ節腫脹が現れない場合、溶血性レンサ球菌による発疹、伝染性紅斑などとの鑑別を行う必要がある)。成人発症者では、90%以上にリンパ節腫脹[7]

顔、耳後部から、赤く癒合性のない点状の紅斑(発疹)が全身に広がり、多くは3 - 5日程度で消える(20 - 25%は発疹が出現しない)。

小児発症者の約25 - 50%に、38 - 39℃前後の発熱が3日間程度続く。成人発症者では、5日間程度の発熱。

耳介後部、後頭部、頚部のリンパ節の腫れ。発疹出現5 - 10日前から数週間にわたりみられる。

眼球結膜の軽度充血や、肝機能障害が見られる場合がある。

小児では咽頭炎のみがみられたり、無症候性感染(不顕感染)であることも多い。

発疹の色素沈着[7]

血液検査

白血球減少、血小板減少

血液中風疹IgM抗体検出

診断

臨床診断は不正確なことが多い。

発疹出現から28日以内の血液中風疹IgM特異抗体検出が確定診断になる。ペア血清を用いて、CF、HI試験、ELISA法などで4倍以上の上昇で診断する。PCR法、ウイルス培養は一般的ではない
[10]

急性期の咽頭ぬぐい液、血液、尿からRT-PCR法、リアルタイムRT-PCR法などの方法で病原体の遺伝子を検出する。早期診断に有用であるが、実施可能な機関は少ない[11]

鑑別診断

麻疹(はしか)、デング熱突発性発疹、コクサッキー・エコー・アデノウイルス感染、伝染性紅斑猩紅熱
合併症

妊婦の妊娠初期の感染は胎児に先天性風疹症候群を引き起こす。また関節炎血小板減少性紫斑病(1/3,000 - 5,000人)を合併する可能性があるほか、急性脳炎を起こす(1/4,000 - 6,000人)ことがあり、極めてまれに重篤な状態に陥る。
先天性風疹症候群先天性風疹症候群の一つ・白内障になった新生児の眼詳細は「先天性風疹症候群」を参照

妊娠10週までに妊婦が風疹ウイルスに初感染すると、90%の胎児に様々な影響を及ぼす。この先天性風疹症候群(congenital rubella syndrome:CRS)の典型的な三大症状は、心奇形・難聴白内障である。11 - 16週までの感染では10 - 20%に発生する。妊娠20週以降の感染で発生することはまれとされる[10]

診断は、新生児血清IgM特異抗体検出で確定診断可能。エコー下穿刺液によるPCR法で胎内診断も可能である。しかし、先天性風疹症候群を容易に再現できる動物モデルが存在していないため、発症機序は解明されていない[12]

1941年にグレッグによって、新生児に白内障や心奇形が発生したと初めて報告された。成人でも30 - 50%程度の無症状感染者[9]があるので、母親が無症状であってもCRSは発生し得る[13]。また、出生前に感染した乳児は、出生後数ヶ月感染力を持ち続ける[6]とされている。
先天性症状

胎内死亡

流産

心奇形(
動脈管開存症肺動脈弁狭窄症が多い)

眼異常

白内障

緑内障

網膜症(脈絡網膜炎)

小眼球症


聴力障害(感音性難聴

脳性麻痺

髄膜脳炎

低出生体重児

インスリン依存性糖尿病

注意点

妊娠21週以降の感染であればCRSのリスクは低く、通常は妊娠が継続される。
治療

特異的な治療法はなく、症状を緩和させる対症療法のみ。発熱・関節炎に対しては、解熱鎮痛剤が用いられる。
ワクチン接種による予防

風疹は、ワクチンで予防可能な感染症で予防接種が唯一の予防法である。幼小児期に予防接種が行われている。世界では、MMRワクチンに含まれた形で2回接種を行っている。


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