頻度主義統計学
[Wikipedia|▼Menu]
ジョン・ベンは自身の著書『偶然の理論』 ("The Logic of Chance") で、統計的確率の解説を徹底した。

統計学における頻度主義(: frequentism)とは、確率の定義(解釈)の一つで、試行回数を限りなく増やしたときの事象の頻度の極限値を、その事象の確率と定義する考え方である。この統計的確率は、試行の反復回数を増やすことで近似値として求められ、その値は個人の考え・主観によらない。この解釈は、実験科学や世論調査で起こる様々な統計的条件も考慮することができる。しかし、この頻度主義が全ての場合に有用とはいえず、賭博においては通常、プレーヤーが事前確率を知ることを必要としている。

頻度主義による確率解釈が生まれた背景には、それまで主流であった確率の古典的な定義での問題点がある。確率の古典的な定義は、サイコロ、コインなどの物理的対称性による等確率の原理に基づいて定義されていた。例えば、サイコロの古典的確率は、立方体の全ての面の物理的対称性を仮定することで求まる。この古典的な解釈は、物理的対称性を持たず推論が難しいあらゆる統計問題につまずくこととなった。
定義

確率は、標本が無作為に選ばれる実験(試行)を対象とする[1]。試行に対して起こりうる結果全体からなる集合は標本空間と呼ばれる。事象は、標本空間の特定の部分集合として定義されている。各事象は、起こるか起こらないかのどちらかの可能性しかない。事象の頻度は試行の繰り返しで測定・観測され、その頻度は事象の確率の尺度となる、というのが頻度主義による確率の解釈、概念である。

頻度主義では、試行回数を限りなく増やすと頻度が収束することを仮定している。したがって、統計的確率とは、事象の相対度数の極限値のことである[2]
対象

統計学的確率は、確率の哲学的解釈のうちの一つである。この解釈は、現実の現象に対して考えられる「確率」の概念の全てを捉えているわけではない。この統計学的確率は、大数の法則により、確率論における確率の公理と矛盾せず、さらには古典的確率には反映されない、現実での誤差や変化の影響も加味、反映される。特にベイズ確率は、理論構築のための実験に明確な指針を与えている。この指針が有用であるかどうか、あるいは誤った解釈であるかどうかについては、論争の的となっている。特に、統計的確率が、推計統計学の唯一の根拠であると誤解されている場合が多い。例えば、p値に関する記事には、p値の意味に関する誤った解釈のリストが添付されており、論争の詳細は、統計的仮説検定に関する記事に記載されている。ジェフリーズ・リンドレーのパラドックスは、同じデータセットに適用された異なる解釈が、結果の「統計的有意性」について異なる結論をもたらすことを示している[要出典]。

ウィリアム・フェラーは次のように述べている[3]:.mw-parser-output .templatequote{overflow:hidden;margin:1em 0;padding:0 40px}.mw-parser-output .templatequote .templatequotecite{line-height:1.5em;text-align:left;padding-left:1.6em;margin-top:0}

我々の筋道には、明日太陽が昇る確率を推測する余地はない。それを語る前に、我々の世界は「無数にある世界の中から無作為に1つの世界が選ばれる...」というような経過をおそらくたどっただろうという(理想化された)モデルに同意すべきである。このようなモデルの構築は小さな想像力で済むが、それでは面白くないし、意味がないと思うのである。

フェラーの発言は、別の確率解釈で日の出問題の解法を発表したラプラスを批判したものである。ラプラスは、天文学と確率論の専門知識に基づいて、出典を明示しかつ即座に免責事項を記したにもかかわらず、その後2世紀にわたって批判が続いた。
歴史「確率の歴史」も参照

頻度主義の予見として考えられるものに、アリストテレスの『弁論術[4]での次の記述がある:

可能性が高いとは、ほとんどの場合に起こることである。the probable is that which for the most part happens[5]

ポアソンは、1837年に客観確率と主観確率を明確に区別した[6]

その後、ジョン・スチュアート・ミル、エリス(「確率論の基礎について」[7]、『確率論の基本原理についての指摘』[8])、クルーノー(「偶然と確率の理論の公開」[9])、フリースがほぼ同時に出版し、頻度論的見解を導入した。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:50 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef