頭髪
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頭髪(とうはつ)は、ヒト頭部に生えるである。毛髪(もうはつ)、髪の毛(かみのけ)、また単に髪(かみ)ともいう。
構成

およびそれを囲む組織である毛包から構成される器官を毛器官(hair apparatus)という[1]。毛器官は口掌、底などを除く全身の皮膚に存在し、一般に頭部には約10万本が存在している[1]。毛器官には触覚に関わる知覚神経の補助的役割があり、頭髪の場合は外力や光線からの頭部の保護、高温や低温からの保温の役割がある[1]
毛の構造200倍に拡大した毛髪毛髪の断面図

毛は3重構造になっており、内側から毛髄質(メデュラ、medulla)、毛皮質(コルテックス、hair cortex)、毛小皮(キューティクル、hair cuticle)という[2][3]

毛は通常の乾燥した状態でを12%程度含まれており、毛髪の成分中に保持されている[4]。この中には200℃の熱で毛から離れる結合水を含む[4]。そのほか、湿度の影響を受ける自由水や湿潤状態で毛が吸収した吸着水がある[4]

毛皮質同士や毛小皮同士、または毛皮質・毛小皮間をつなぎ合わせる役割としてCMCがあり、水や薬剤の通り道にもなる[2]。特に毛小皮同士のCMCは外側からlower-β層、σ層、upper-β層の3層に分かれている[5]

毛色の成分となるメラニンは毛髄質及び毛皮質に存在し、黒毛ではユーメラニン、赤毛ではフォオメラニンが多い[3]。「ヒトの髪の色」も参照。
毛髄質

毛髄質は役割が未解明な部分が多いものの、髪の透明感やツヤに影響を与えることが判明している[2]。同じ人物の毛であっても、存在している・していない場合がある[6]。規則正しい構造を持たず、ケラチンがスポンジ状で無秩序に並び、空隙や袋状の空胞を多く持つ[6]。細い毛の場合はこの部分を持たないことが多い[6]
毛皮質

毛皮質は葉巻状の構造をしたもので、毛の延長方向に規則正しく並んでいる[2]。毛の体積の85?90%を占める領域で、毛髪の水分保持や強度、髪色に大きな影響を与える。毛皮質を詳細に見ると、マクロフィブリルが数個から数十個の集まってできている[5]。このマクロフィブリルの間には親水性の非ケラチンタンパク質があり、この中にメラニンやNMF(天然保湿因子、髪の水分を一定に保つ役割を持つ)がある[5]。マクロフィブリルは更に数個から数十個のミクロフィブリルとマトリックスで構成される[5]。ミクロフィブリルは8本のプロトフィブリルで構成され、プロトフィブリルはフィブリル4本で構成されている[5]

毛皮質で形成されるケラチンは他の上皮細胞で形成されるケラチンよりも、シスチングリシンチロシンの含有量が多い[3]。シスチン、グリシン、チロシンの含有量が多い特殊なケラチンはなどにもみられ硬ケラチン(hard keratin)という[3]
毛小皮

毛小皮は無色透明をした鱗状の皮[2]。皮1枚で毛の外周の1/3?1/2程度を包み、全体としてタケノコの皮や瓦屋根のように重なった構造をしている[2]。毛小皮(キューティクル)そのものは外側からエピキューティクル、A-層、エキソキューティクル、エンドキューティクル、inner-層の順に構成されている[5]

毛の体積の10?15%を占める領域で、毛のツヤや手触り、硬さに影響を与える[2]。ブラッシングなどの物理的刺激や水・薬剤などの化学的刺激から毛を保護する役割がある[2]
化学的特徴

毛髪の構成は全体の8割がタンパク質でできている[7]。その中でシスチンを含むケラチンタンパク質の割合が毛髪全体の70%程度を占め、シスチンを含まない非ケラチンタンパク質が全体の10%程度を占める[7]。タンパク質を除いた残りがCMC脂質(脂肪酸セラミドコレステロール)・水分・メラニン色素・NMFなどである[7]

毛髪の形状が最も落ち着く等電点pH4.5?5.5の弱酸性のとき[4]。パーマやヘアカラーで毛髪を膨潤させるためにアルカリ性の薬剤を用いるが、施術後は弱酸性の薬剤を用いてアルカリに傾いた毛髪を元の状態を安定させる[4]
その他

古くから経験的に頭髪から得られた毛は丈夫なことが知られていて、科学的には1本の毛では100グラムの重さを、頭髪全体では12トンの重さを支えることができるとされる。これはアルミニウムの強さに匹敵する。それを利用した例として、日本京都にある東本願寺では、明治初期の再建工事における重い建材の運搬移動に、当時入手可能だった素材(など)の綱では強度が足りず、現代のように頑丈なワイヤーロープなども存在しなかった事から、門徒の女性が寄進した髪の毛と麻をより合わせて作られた毛綱を用いた事がよく知られ、その実物が現在も展示されている。

毛はその環境および、機械的、化学的な経歴に対応する。例えば、湿っている毛を成型して乾燥させると、その型を保つ。その型は再び毛が湿ると失われる。これは髪の毛に含まれる蛋白質同士の水素結合による。湿っている状態でない時でも熱風を加え、瞬時に冷やすことで型を保つことも可能である[8]。さらに恒久的なスタイリングのためには、化学的な処理(パーマネントウエーブ)によってジスルフィド結合を破壊し、再構成する。
加齢による変化「ヒトの髪の色#加齢による髪の色の変化」も参照

老人は毛の内部の色素が失われるため、灰色の(実際には色の無い)毛に発達する傾向がある。非常に薄い色の金髪が加齢に伴っての同様の色素喪失を来した場合は真っ白に見える。


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