頭髪
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頭髪(とうはつ)は、ヒト頭部に生えるである。毛髪(もうはつ)、髪の毛(かみのけ)、また単に髪(かみ)ともいう。
構成

およびそれを囲む組織である毛包から構成される器官を毛器官(hair apparatus)という[1]。毛器官は口掌、底などを除く全身の皮膚に存在し、一般に頭部には約10万本が存在している[1]。毛器官には触覚に関わる知覚神経の補助的役割があり、頭髪の場合は外力や光線からの頭部の保護、高温や低温からの保温の役割がある[1]

構造200倍に拡大した毛髪毛髪の断面図

毛は3重構造になっており、内側から毛髄質(medulla)、毛皮質(hair cortex)、毛小皮(キューティクル、hair cuticle)という[2]

毛皮質で形成されるケラチンは他の上皮細胞で形成されるケラチンよりも、シスチングリシンチロシンの含有量が多い[2]。シスチン、グリシン、チロシンの含有量が多い特殊なケラチンはなどにもみられ硬ケラチン(hard keratin)という[2]

毛色の成分となるメラニンは毛髄質及び毛皮質に存在し、黒毛ではユーメラニン、赤毛ではフォオメラニンが多い[2]。「ヒトの髪の色」も参照。

古くから経験的に頭髪から得られた毛は丈夫なことが知られていて、科学的には1本の毛では100グラムの重さを、頭髪全体では12トンの重さを支えることができるとされる。これはアルミニウムの強さに匹敵する。それを利用した例として、日本京都にある東本願寺では、明治初期の再建工事における重い建材の運搬移動に、当時入手可能だった素材(など)の綱では強度が足りず、現代のように頑丈なワイヤーロープなども存在しなかった事から、門徒の女性が寄進した髪の毛と麻をより合わせて作られた毛綱を用いた事がよく知られ、その実物が現在も展示されている。

毛はその環境および、機械的、化学的な経歴に対応する。例えば、湿っている毛を成型して乾燥させると、その型を保つ。その型は再び毛が湿ると失われる。これは髪の毛に含まれる蛋白質同士の水素結合による。湿っている状態でない時でも熱風を加え、瞬時に冷やすことで型を保つことも可能である[3]。さらに恒久的なスタイリングのためには、化学的な処理(パーマネントウエーブ)によってジスルフィド結合を破壊し、再構成する。
加齢による変化「ヒトの髪の色#加齢による髪の色の変化」も参照

老人は毛の内部の色素が失われるため、灰色の(実際には色の無い)毛に発達する傾向がある。非常に薄い色の金髪が加齢に伴っての同様の色素喪失を来した場合は真っ白に見える。このように加齢変化した頭髪を白髪(しらが、はくはつ)という。白髪は通常の加齢の特徴と考えられている。

白髪が生ずる年齢は人によって異なるが、一般に男性は女性よりも白髪になりやすい。一般的に75歳以上になるとほとんどの人が少なくとも白髪交じりであり、85歳までにほとんどの人が元の色の毛を失って総白髪になる。

ハーバード大学医学部は、白髪になったり、ハゲたりするのは宿命で、いろいろな治療法があるが、基本的には効果がないと発表した[4]
毛包

毛を取り囲む組織層を毛包(毛嚢)といい、皮膚面に斜めに伸びており、内側は上皮性成分、外側は結合性組織性成分の二重構造になっている[5]。上皮性成分は内毛根鞘と外毛根鞘に分けられ、それぞれを総称して毛根鞘と呼ぶ。毛根鞘は髪を頭皮につなぎとめる役割を担っており、薄い膜のような見た目をしている[6]

毛包の皮膚面の一部はやや隆起しており、毛隆起(hair bulb)という[1]。また、毛孔は漏斗状に開口しており、毛漏斗(infundibulum)という[1]
縮毛と直毛髪質の世界分布:濃い斜線は縮毛、薄い斜線は直毛。「en:Hair#Texture」を参照

髪質(Texture)に縮毛(縮れ毛)と直毛がある。これは、東アフリカの森に起源をもつ人類が草原へ移動して、直射日光から脳を守るために頭髪が発展して縮毛になり、さらに比較的寒冷地のヨーロッパへ移動した人類は、むしろ脳の温度を守るために直毛になった、という最近の説がある[7]日本人の髪質は、縮毛と直毛がほぼ半々で、これは南アジアを通して来た人々と、ヨーロッパから北アジアを通じてきた人々の混成だからともいう[8]
頭髪の部位用語

トップ - 頭髪のてっぺんで、主に
つむじ周り。

生え際 - ヘムライン、フェイスラインと称される。もみあげともみあげをつなぐ顔周り。

アウトライン - 髪型で下側、および外側のラインを呼ぶ。

モヒカンライン - 髪の中央の縦のラインを呼ぶ。この部分が他の部分より長いスタイルがソフトモヒカンと称される。

後ろ髪 - バックと称される。頭の後ろ、後頭部部分。「後ろ髪を引かれる」での表現でも使用される。

襟足 - ネープと称される。

前髪 - バングと称される。顔の前、(おでこ)周辺の髪。二重構造で作られた前髪はダブルバングと称される。

ハチまわり - 耳上の骨格の部分で最も出っ張る部分をハチと称し、その周辺の髪。

サイド - 髪の両横部分。耳上あたり。髪の量が多く、厚くなっているサイドはヘビーサイドと呼ばれる。

ミドルセクション - 耳上の部分。

小鬢(こびん) - サイドのうち、頭の左右前側面、こめかみあたりの髪。ここから発展して将棋で玉の囲いで玉の斜め前の部分。玉の斜め前に歩などの守り駒がいない状態を「コビンがあいている」と表現する。 また、角行での斜めから相手の玉や飛車を攻めることを「こびん攻め」と称する。

毛周期

髪の毛は一定の周期で生育と脱落を繰り返しており、毛周期(hair cycle)という[9]。毛周期は成長期、退行期、休止期に分けられる[2]。毛周期は髪の毛ごとに異なり、頭部全体では一定数を保つ[10]

成長期
頭髪が成長する時期で数年間に及ぶ[9]。成長期の頭髪は1日に0.3?0.5mm成長する[10]

退行期
成長期の後、毛包の収縮が始まると細胞分裂は停止し、2?3週間は退行期に入る[10]

休止期
細胞分裂しなくなった毛包が毛隆起部まで上昇し、毛根は棍棒状の棍毛(club hair)になって数か月留まる[10]。再び成長期に入ると毛包表皮は細胞分裂しながら下降し、毛母から生じた新しい髪の毛に押されて棍毛は脱落する[10]。1日に脱落する髪の毛の本数は約100本である[10]

毛の根元にある毛胞は非常に速く成長する。そのため抗がん剤投与などの化学療法により頭髪を失うことがしばしばある。抗がん剤は速く成長する細胞に働くため、がん細胞だけでなく毛包にも作用することによる。毛細胞の代謝を抑える為に冷却して低温に保つ事で脱毛を抑える事もある。
手入れ「:en:Hair care」も参照

人間の見た目を大きく左右する要素であるため、美容と言う概念では毛髪の手入れに気を使うことも多い。


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