領域権原
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領域権原(りょういきけんげん、: title to territory; territorial title[1])とは、一定の地域について領域主権を有効に設定し、行使するための原因または根拠となる事実である[2]。領土権原[3]、領有権原[4]、領土取得権原[5]といわれることもある。領域権原にもとづいて特定の地域が国家に帰属し、その地域に国家の主権的な権能が行使されることとなる[6]。国家が領域権原を取得する態様として、大きく二つに分けられる[6]。ひとつはいずれの国家にも帰属していない地域を新たに自国の領域に編入する原始取得であり、先占添付がこれにあたる[6]。もうひとつは他国領域を自国領域に編入する承継取得であり、割譲併合征服時効がこれにあたる[6]
原始取得「無主地」も参照1858年に撮影されたオーストラリアの先住民アボリジニ。西欧文明に達しない段階の社会は無主地とみなされたため、1901年のオーストラリア憲法ではアボリジニの存在が否定され、オーストラリアが無主地とされた[7]

領域権原の原始取得は、いずれの地域にも属していなかった地域(無主地)を新たに自国領域に編入することであり、先占添付がこれにあたる[8]。かつては西欧文明に類する段階(文明国)に達していない地域はすべて無主地とみなされ原始取得の対象とされたが、今日ではその地域に社会的・政治的な組織が存在していて、住民を代表する首長の支配下に置かれている場合には無主地とはみなされない[8]。かつては発見も有効な領域権原と考えられていたが、現代においては否定されている[9]
先占「先占」も参照

先占とは、領有の意思を持って無主地を実効的に支配することである[7]。18世紀以降、西欧諸国による植民地支配のための重要な手段であった[10]。西欧文明に類する段階に達していない地域は先占の対象となる無主地とみなされていたが、1975年の西サハラ国際司法裁判所勧告的意見(英語版)では、西欧文明に属さない先住民だけが居住している地域であっても、固有の政治的・社会的組織があって、住民を代表する首長の権限のもとに置かれている地域は、無主地ではないとする国際慣行が19世紀末には成立していたと判断された[7]。先占というためにはまず領域取得の意思が示されなければならず、その地域を自国に編入するという宣言や他国への通告によって行われるが、一般的には個々の国家活動や関連事実から推定されるものであり、他国への通告は絶対的な条件とは言えない[10]。先占は実効的な占有を伴うものでなければならず、単に無主地を発見したり、主権を宣言したり、国旗を掲揚しただけでは不十分とみなされる[10]。例えば1928年のパルマス島事件常設仲裁裁判所判決では、スペインによる島の発見は先占による同国の領域権原を認めるには不十分なものであり、アメリカによる継続的かつ平穏な主権の行使が優先されると判断された[10]。このような実効的占有は自国の法秩序を維持し、他国の介入を有効に排除する程度の具体的な国家活動でなければならない[10]
添付

添付とは、自然現象によって国家領域の範囲が拡大することである[11]。例えば河口や海岸での土砂の堆積、海底の隆起などのような自然現象による[11]。古代ローマ法の附合理論を国際関係に類推したものである[12]。20世紀以降は堤防や埋め立てなどによる人工的な領域拡大も領域権原としての添付に含まれるとみなされるようになった[12]
承継取得1803年に地図中の赤い地域が6000万フランでフランスからアメリカ合衆国に割譲された(ルイジアナ買収[13]

領域権原の承継取得は、他国の領域について領域主権の移転・承継を受ける場合である[14]征服のように一方的な方式によるものもあるが、領域を拡大することにより他国に不利をもたらすものであるから、原則的には割譲併合のような条約方式であることを要する[14]。このほかに時効が領域権原の承継取得として認められるかについて争いがある[15]
割譲「割譲」も参照

割譲は、他国領域の一部を合意によって譲り受けるものである[5]。今日では割譲による領域変動の事例は少ないが、有償によるものか無償によるものかを問わず、領土交換のための割譲もある[13]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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