領土問題(りょうど もんだい)または領土紛争(りょうど ふんそう)とは、該当する地域がどの国家の領域にあたるかを国家間で争うことである。 国境の線引きに関するわずかな見解の相違や小さな無人島の帰属といったレベルから、主権国家を自称している地域全体を別の国家が自国領土と主張する場合(台湾問題や西サハラ問題など)まである。後者の場合は国家の承認問題にも発展する。 領土問題を抱える国家同士の関係も様々である。係争地域の実効支配をめぐる深刻な対立・衝突がなく、友好的に外交や貿易、国民の往来が続く場合もあれば(ウイスキー戦争など)、分断工作を背景とする民族紛争や植民地独立運動を含めて戦争やテロのきっかけになることも多い(ノモンハン事件、印パ戦争など)。これら領土問題を戦争に発展させないために、国連は加盟国に対し国際連合憲章に基づき平和的かつ国際正義に則って解決することを加盟国に求めており、同第2条により、一国が他国の領土を武力によって占有することを禁じている。しかしながら現代においてもなお、ある係争国によって無人の係争地を占拠したり、係争地にいる他国の軍隊・警備隊や住民の抵抗を実力で排除して軍事占領したりする例はなお多くある。「国際法」も参照 よく領土問題の原因になるのが、その土地にある石油などの天然資源や農地、重要建造物、国境付近にある川とその流路変更である。また離島はそれ自体に経済的価値がほとんどなくても、本土から離れた軍事拠点として有用だったり、周囲に広大な領海や排他的経済水域(EEZ)、大陸棚が付属する可能性が高かったりするため、係争対象になりやすい。各国・民族のナショナリズムが高まった近現代では、人が住むには厳しい絶海の孤島や砂漠や高山であっても領土問題の対象となる(南沙諸島など)。 また、その土地を最初に占有した国家が領有を明確にしていなかったり、付近に他の国家がありながらもその国家の了解を得ていなかったり、居住民族が移動を繰り返して複数の民族が混住していたりするといった歴史的経緯も、領土問題の原因になりやすい。 各国政府は、係争地の実効支配を確実にしたり、その領有や返還を実現したりするため、国内外世論への訴えかけ、法的な理論武装、外交交渉や国際司法裁判所への付託、戦争など様々な手段をとる。領土問題について、個人が自国政府と異なる見解を示した場合、世論の批判を受けるだけでなくロシアのように法的な罪に問われる国もある(2014年3月の刑法改正による)[1]。 領土権を主張する根拠、すなわち領域権原として、歴史的には以下のようなものがある がある[2]。 国際領土紛争では、「国家権能の平穏かつ継続した表示[3]」という権原を基準に判定される場合が多い。 領土問題、領土紛争となるには2つ以上の国家間で領域に対する領土権の主張(要求)が必要であるが、一方で国際関係上、当該領域に対する領土権は主張しないが、国家承認の文脈において「その領域の領有は認めない」とする立場を表明する事がある。 領土問題は当事国同士での外交で解決されるのが望ましいが、当事国間で解決することが困難な場合には、国際司法裁判所 (ICJ) への付託ができる。もっとも国際司法裁判所への付託は、紛争当事国の一方が拒否すれば審判を行うことができず、つまり強制管轄権はない[4]。ただし、双方の当事国が義務的管轄権受託宣言を事前に行っている場合には例外的に付託される[5]。 しかしながら、当事国間で解決することが困難な場合には、ICJは客観的に判定することを推奨している。 例えば、 などの判決が客観的判定の推奨を確認されている[6]。 塚本孝によれば、これまでのICJ国際判例から次の様な規則が得られる[7]。
概説
領土の権原詳細は「領域権原」を参照
譲渡
売買(例:アラスカをアメリカ合衆国がロシア帝国から購入)
交換(例:アメリカが旧仏領ルイジアナの北緯49度以北と英領カナダの北緯49度以南を交換)
割譲(例:下関条約での日本の台湾取得)
征服(国際連合憲章下で現在は認められない)
先占(無主地を国家が領有意思を持ち実効的に占有すると当該土地がその国の領土になる)
添付(自然現象や埋め立て等で土地が拡張する場合)
時効(土地を領有の意思を持って相当期間平穏公然に統治することで領有権を取得する場合)
消極的領土問題
国際司法裁判所への付託
ICJ
「連合国とブルガリア、ハンガリー及びルーマニアとの平和諸条約の解釈に関する勧告的意見」(1950)
「カメルーンとナイジェリアとの間の陸地及び海の境界に関する事件」の先決的抗弁に関する判決(1998.6.11, 先決的抗弁5)、
常設国際司法裁判所判決
「マヴロマチス事件」(ギリシャ対イギリス 1924)
「上部シレジアのドイツ人の利益に関する事件」(ドイツ対ポーランド 1925)
国際判例による規則
中世の事件に依拠した間接的な推定でなく、対象となる土地に直接関係のある証拠が優位。中世の権原は現代的な他の権原に置き換えられるべき。
徴税・課税、法令の適用、刑事裁判、登記、税関設置、人口調査、亀・亀卵採捕の規制、鳥の保護区設定、入域管理、難破事件の捜査などが、国家権能の表示・実効的占有の証拠となる。
紛争が発生した後の行為は実効的占有の証拠とならない。
住民による行為は国家の主権者としての行為ではない。
条約上の根拠がある場合にはそれが実効的占有に基づく主張に優越する。
国は、相手国に向かって行った発言と異なる主張はできない。
相手国の領有宣言行為に適時に抗議しないと領有権を認めたことになる。
歴史的、原初的権原があっても相手国が行政権行使を重ね、相手国の主権者としての行動に適時に抗議しなければ主権が移ることがある。
発見は未完の権原である(実効的占有が行われなければ領有権の根拠にならない)。
地理的近接性は領有根拠にならない。領海内の無人島が付属とされることはある。
地図は国際法上独自の法的効力を与えられることはない。公文書付属地図が法的効力を持つ場合や信頼に足る他の証拠が不足するときに一定の証拠価値を持つ場合はある。
世界各地の事例一覧
領土問題のある地域(当事国)で記述。カッコ内の先頭の国が当該地域を実効支配していることを示す。
単に国家独立の成否のみを問題とするもの(アブハジア問題など)については独立主張のある地域一覧を参照。
東アジア
主に日本沿岸部〈中国・ロシア・北朝鮮・韓国・台湾(中華民国)〉を含む
東アジアの領土問題大韓帝国時代の地誌教科書『大韓地誌』 竹島(独島)は日本の領土と把握されている
択捉島・国後島・色丹島・歯舞群島(ロシア・日本)
1855年の日露和親条約以降、日本領だったが、第二次世界大戦末期にソビエト連邦が日ソ中立条約を一方的に破棄して侵攻し、占領。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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