響きと怒り
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響きと怒り First edition cover
著者ウィリアム・フォークナー
原題The Sound and the Fury
アメリカ合衆国
言語英語
ジャンル南部ゴシック小説
出版社ジョナサン・ケープ、ハリソン・スミス
出版日1929年
出版形式ハードバックおよびペーパーバック
ページ数336
ISBN.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}0-679-73224-1
OCLC21525355
DDC813/.52 20
LC分類PS3511.A86 S7 1990
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『響きと怒り』(ひびきといかり、原題:The Sound and the Fury )は、アメリカ合衆国の小説家ウィリアム・フォークナー小説である。1929年に発表された。ジェイムズ・ジョイスヴァージニア・ウルフなど20世紀ヨーロッパの小説家が開拓した「意識の流れ」と呼ばれる手法など多くの叙述スタイルを採用した。フォークナーにとっては4作目の小説であるが、発売当時は評判を呼ばなかった。しかし1931年、フォークナーの第6作『サンクチュアリ』(フォークナーが後に主張したように、この扇情的な話は金のためだけに書かれた)が出版されると、『響きと怒り』も売れるようになり、フォークナーに批評家の注目を集めるようになった。

1998年、モダンライブラリーは20世紀の英語小説100傑の第6位に『響きと怒り』を挙げた。
概要

『響きと怒り』は、架空のヨクナパトーファ郡を舞台にしている。この小説は、アメリカ合衆国南部の特権階級だったコンプソン家がその家族と名声の崩壊に苦闘する姿を中心に据えている。4つの部に分かれており、第1部「1928年4月7日」は、33歳の重い知的障害を持ったベンジャミン・"ベンジー"・コンプソンの視点から描かれている。ベンジーの部は、語られている時点が頻繁に変化するため、話の筋を掴むことが難しい叙述法が採用されているのが特徴である。第2部「1910年6月2日」は、ベンジーの長兄クウェンティン・コンプソンの意識に焦点を当てて、その自殺に至る過程が語られている。第3部「1928年4月6日」は、クウェンティンの弟で皮肉屋のジェイソンの観点から書かれている。第4部「1928年4月8日」は、第1部の翌日であり、主に一家の黒人召使のディルシーなどを使って、三人称全知視点から書かれている。この部では、ジェイソンも焦点になっているが、家族全員の思考と行動にも目が注がれている。
表題について

この小説の題は、ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『マクベス』第5幕第5場にある、マクベスの独白から採られている。@media(min-width:720px){.mw-parser-output .columns-start{width:100%}.mw-parser-output .columns-start div.column{float:left}.mw-parser-output .columns-2 div.column{width:50%;min-width:30em}.mw-parser-output .columns-3 div.column{width:33.3%;min-width:20em}.mw-parser-output .columns-4 div.column{width:25%;min-width:20em}.mw-parser-output .columns-5 div.column{width:20%;min-width:20em}}

英語(原語)Told by an idiot, full of 'sound and fury', Signifying nothing ? Macbeth、Macbeth by William Shakespeare

日本語訳白痴(ばか)が話す話だ、騒ぎも意気込みも甚(えら)いが、たはいもないものだ。 ? マクベス、坪内逍遙 訳『マクベス』第五幕 第五場[1][2]

「白痴が話す話」という句からもわかる通り、この物語はベンジーから見たコンプソン家の様子から始まる。その概念は、クェンティンやジェイソンにも広がり、その叙述からそれぞれの愚かさが示されていく。さらに重要なことに、伝統的な南部の上流階級の衰退と死、すなわち「塵にまみれて死ぬ道筋」を語っている。最後の「何のとりとめもありはせぬ」が最も意味深長である。フォークナーは、ノーベル文学賞を受賞した時のスピーチで、人は心から来る物、すなわち「普遍的な真実」について書かなければならないと語った。
あらすじ

この小説の4つの部は、多くの同じエピソードに関わっており、それぞれが異なる視点から語られるので、異なる主題と出来事に強調が置かれている。脈絡が無く錯綜しているように見える小説の構造は、真の大意を分かりにくくさせている。特に語り手が全て独自の見方であって(信頼するに足りず)、その証言が必ずしも信用できるとは限らない。フォークナーは、この小説でも、語り手の意識が過去の重要な瞬間に戻るときに斜字体を使って示している。しかし、時点の移動が常に斜字体で表されているとは限らず、フラッシュバックの間も異なる時間の経過が必ずしも斜字体のまま表現されてはいないので、斜字体を使うことがさらに混乱を呼んでいる。時点の移動は煩わしく混乱させられるので、特別に注意して読む必要がある。

話の大筋は、かつて南部の貴族的家系であり、南北戦争の英雄コンプソン将軍の子孫である一家の没落である。フォークナーが戦災を受けた南部の再建時における問題の原因と考えた人種差別、貪欲さ、身勝手さ、および個人が決断する者となるための心理的無能さといった悪徳の餌食になる。小説に語られる30年ほどの間に、一家は財政的に破綻し、信仰心を失い、ジェファーソンの町の尊敬も失い、多くの者が悲劇的な死を迎える。

フォークナーは、後に4ページのコンプソン家の歴史「ポータブル・フォークナー」を著した。これはフォークナーが『響きと怒り』を書いたのと同時期にその歴史を書きたいと思ったと自ら語っていたものである。
第1部「1928年4月7日」

第1部は、ベンジャミン・"ベンジー"・コンプソンの語りである。ベンジーは、その白痴故に一家の恥の源となっている。ベンジーの世話を心から行おうという数少ない人物は、ベンジーの姉のキャディと黒人女召使のディルシーである。その語りは、全体に脈絡のなさで特徴付けられており、継ぎ目のない意識の流れの中で、出来事が寄せ集められている。また、その期間は、ベンジーが3歳の1898年から現時点の1928年までである。この部における斜字体の存在は、話の重要な転換を示すように意図されている。これは、フォークナーが、執筆当初に時間の移動を表すために異なる色のインクを使おうとしたことに由来する。この部は、時間軸の錯綜により、特別に難しくなっているが、この文体のおかげで全体のリズムが形成され、時間軸が整ってはいなくとも、多くの人物の真の心の動きに対する先入観念のない見方を提供している。さらに、ベンジーの世話をする人物が時代を追って変わって行くことで、時の移りが分かる。現時点のラスター、ベンジーが10代のときのT・P、乳幼児のときのヴァーシュがその例である。

この部では、ベンジーの3つの愛情を見ることができる。すなわち、炉火の光、かつてコンプソン家のものだった土地に造られたゴルフ場、および姉のキャディである。しかし、キャディは、生んだ子供が夫との間の子ではなかったために夫から離婚され、現時点ではコンプソン家から消えてしまっている。一家は、長男のクウェンティンのハーバード大学での学費を調達するため、地元のゴルフクラブにお気に入りの牧場を売ってしまっていた。小説の冒頭で、ベンジーは、召使の少年ラスターと同行しており、ゴルフ場のゴルファー達を見ながらお気に入りの姉の名前「キャディ」をゴルファー達が呼ぶのを聞こうと待っている。ゴルファーの一人がゴルフ・キャディを呼んでいるとき、ベンジーの心の中では姉に関わる記憶がめまぐるしく入れ替わり、一つの重要な出来事に行き着く。それは、コンプソン家の子供達4人の祖母が死んだ1898年であり、その葬儀の間、子供達は外で遊ぶよう命令されていたことである。キャディは、家の中で進行していることを見るために、庭の木に登り家の中を覗いている。彼女の3人の兄弟であるクウェンティン、ジェイソン、ベンジーは、上を見上げていると、キャディの下着が泥で汚れていることに気付く。この出来事は、ベンジーの最初の記憶であり、残りの物語を通して、彼はキャディと樹木を結びつけて考えるようになる。現にベンジーは、しばしばキャディは樹木の匂いがすると発言する。この部の中でもう一つ重要な出来事は、ベンジーの障害が明らかになった1900年に、それまでのモーリーからベンジーに名前が変えられたことである。モリーという名前は、伯父(母の兄)の名前を貰ったものだった。1910年のキャディの結婚と離婚、および門の鍵が外れていてベンジーが監視されていなかった時に少女を襲ったことからベンジーが去勢されたことは、この部のなかで簡潔に語られている。
第2部「1910年6月2日」

コンプソン家の子供達の中でもっとも知的で自責の念に苦しめられているクウェンティンは、フォークナーの叙述法の好例を与えている。クウェンティンは、ハーバード大学の一年生であり、ケンブリッジの通りをうろつきながら、死を考え、妹のキャディと家族が離反したことを回想している。第1部と同様にその叙述は厳密に時系列ではないが、ハーバードにいるクウェンティンと記憶の中にいるクウェンティンとのあざなえる2つの糸は、はっきりと区別できる。


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