非負整数
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自然数(しぜんすう、: natural number)とは、個数もしくは順番を表す一群ののことである。集合論においては、自然数は物の個数を数える基数のうちで有限のものであると考えることもできるし、物の並べ方を示す順序数のうちで有限のものであると考えることもできる。

自然数を 1, 2, 3, … とする流儀と、0, 1, 2, 3, … とする流儀があり、前者は数論などでよく使われ、後者は集合論論理学などでよく使われる(詳しくは#自然数の歴史と零の地位の節を参照)。日本では高校教育課程においては0を入れないが、大学以降では0を含めることも多い(より正確には、代数学では0を含め、解析学では除外することが多い)。いずれにしても、0 を自然数に含めるかどうかが問題になるときは、その旨を明記する必要がある。自然数の代わりに前者を正整数、後者を非負整数と言い換えることによりこの問題を避けることもある。

数学の基礎付けにおいては、自然数の間の加法についての形式的な逆元を考えることによって整数を定義する。正の整数ないしは負でない整数を自然数と同一視し、自然数を整数の一部として取扱うことができる。自然数と同様に整数の全体も可算無限集合である。

なお、文脈によっては、その一群に属する個々の数(例えば 3 や 18)を指して自然数ということもある。 N {\displaystyle \mathbb {N} } は自然数、 Z {\displaystyle \mathbb {Z} } は整数、 Q {\displaystyle \mathbb {Q} } は有理数、 R {\displaystyle \mathbb {R} } は実数。実数は複素数( C {\displaystyle \mathbb {C} } )に含まれる。
記法.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}この?には、一部のコンピュータや閲覧ソフトで表示できない文字が含まれています(詳細)。.mw-parser-output .Unicode{font-family:"TITUS Cyberbit Basic","Code2000","Chrysanthi Unicode","Doulos SIL","Bitstream Cyberbit","Bitstream CyberBase","Bitstream Vera","Thryomanes","Gentium","GentiumAlt","Visual Geez Unicode","Lucida Grande","Arial Unicode MS","Microsoft Sans Serif","Lucida Sans Unicode",sans-serif}?

自然数全体の成す集合は普通 Natural number の頭文字をとって N または N {\displaystyle \mathbb {N} } と表される。

0 を含むかどうかの曖昧さを避けるために、正の整数(0 を含まない)を次のように表すこともある:

N+ ( N + {\displaystyle \mathbb {N} ^{+}} ) または N+ ( N + {\displaystyle \mathbb {N} _{+}} )

Z+ ( Z + {\displaystyle \mathbb {Z} ^{+}} ) または Z+ ( Z + {\displaystyle \mathbb {Z} _{+}} ) または Z> 0 ( Z > 0 {\displaystyle \mathbb {Z} _{>0}} )

また、非負整数(0 を含む)を表すのに、次の記法が使われることもある:

N0 ( N 0 {\displaystyle \mathbb {N} ^{0}} ) または N0 ( N 0 {\displaystyle \mathbb {N} _{0}} )

Z+0 ( Z 0 + {\displaystyle \mathbb {Z} _{0}^{+}} ) または Z? 0 ( Z ≥ 0 {\displaystyle \mathbb {Z} _{\geq 0}} )

Z+ ( Z + {\displaystyle \mathbb {Z} ^{+}} ) または Z+ ( Z + {\displaystyle \mathbb {Z} _{+}} ) はこちらの意味でも使われる

自然数の歴史と零の地位

自然数は「ものを数える言葉」を起源とし、1 から始まる正の数であったと推定されている。文明が起こり、数字が考え出されたとき、ローマ数字ギリシア数字エジプト数字、バビロニア数字、マヤ数字漢数字、等のどれもが1から始まる正の数字であった。つまり、「物がある」という概念を量的に表そうとしたのが数であり、「物がない」という概念は「無い」という言葉で充分だった。

最初の大きな進歩は、数を表すための記数法の発明であり、これで大きな数を記録することが出来るようになった。古代エジプト人は 1 から百万までの 10 の累乗それぞれに異なるヒエログリフを割り当てる記数法を用いていた。バビロニアでは、数字を離して表記することでその桁が 0 であることを示す六十進法位取り記数法に似た方法が開発された。しかし、0 を表す文字がなかったため、例えば 10203 は 0 を空白にして "1 2 3" と正しく表記できるが、10200 は "1 2" となって 102 と区別できない欠点があった。オルメカマヤの文明では紀元前1世紀までには、数字を離して 0 の桁を表す方法が独立に用いられていた。

抽象的な概念としての数の体系的な最初の研究は、古代ギリシアにおいてなされ、数論が高度にまで発達した。古代ギリシアの数学者エウクレイデスが編纂した『原論』の第7巻の冒頭で数の定義がなされている[1]
単位とは存在するもののおのおのがそれによって 1 とよばれるものである。

数とは単位から成る多である。

これは定規とコンパスによる作図で数を定義したものと解釈できる。すなわち、任意に与えた線分の長さを単位として 1 を定義する。そして、その線分を延長した直線上で単位を半径とする長さをコンパスで測り、その直線上でその単位を半径とする円との交点を作図し、その円の直径を 2 と定義する。同様にその直線上で円の直径に半径を繋いだ線分を作図し、その線分の長さを 3 と定義する。したがって、1 は数ではなく単位であり、2, 3, 4, …が数になるため、古代ギリシア人は 1 を数として認識しなかったと言える。

1世紀頃、無名のインド人によって、初めて 0 を使った完全な位取り記数法が発明された。彼はソロバンとよく似たビーズ玉計算機で計算していたとき、数のない桁を 0 で書いて、ビーズ玉計算機上の各桁の数をそのまま並べて書き表すと、計算結果を素早く書き残せることに気づいた。この 0 は、インド人の言葉で空(から)の意味を表す「スーニャ」と呼ばれた。こうしてできた記数法は、数の記録と計算に一大革命をもたらす大発明となった。しかし、ここでの 0 は数としての 0 ではなく、空の桁を表す目印に過ぎないものであった。

数としての 0 の概念は628年のインド人数学者ブラーマグプタによって見出され、現代の 0 の概念と近い計算法が考え出された。

19世紀、自然数の集合論的な定義がなされた。この定義によれば零を自然数に含める方がより便利である。集合論、論理学などの分野ではこの流儀に従うことが多い一方、数論などの分野では 0 を自然数には含めない流儀が好まれることが多い。どちらの流儀をとるにしろ、通常は著作あるいは論文毎に定義や注釈で明示される。とくに混乱を避けたい場合には、0 から始まる自然数を指すために非負整数、1 から始まる自然数を指すために正整数という用語を用いることもよくある。

計算機科学、特にプログラミングではよく 0, 1, 2, … が使われるが、これは記憶装置(メモリー)の住所(アドレス)の相対位置を表すことが多く、相対位置としては 0, -1, -2, … も処理の中で使われることから、自然数というよりは整数の範疇である。

19世紀のドイツの数学者レオポルト・クロネッカーが「整数は神の作ったものだが、他は人間の作ったものである」という言葉を残し、正の整数が自然な数と考えた頃から、自然数という用語が定着したとされる[2]
形式的な定義
自然数の公理「ペアノの公理」も参照

自然数がどんなものかは子供でも簡単に理解できるが、その定義は簡単ではない。自然数を初めに厳密に定義可能な公理として提示されたものにペアノの公理があり(1891年ジュゼッペ・ペアノ)、以下のように自然数を定義することができる。

自然数1が存在する。

任意の自然数aにはその後者 (successor) の自然数 suc(a) が存在する(suc(a) は a + 1 の 意味)。

異なる自然数は異なる後者を持つ。つまり a ≠ b のとき suc(a) ≠ suc(b) となる。(ある種の単射性)

1 はいかなる自然数の後者でもない(1 より前の自然数は存在しない)。

1 がある性質を満たし、a がある性質を満たせばその後者 suc(a) もその性質を満たすとき、すべての自然数はその性質を満たす。

最後の公理は、数学的帰納法を正当化するものである。また、上の公理に現れる数字は 1 だけであり、自然数 1 からすべての自然数が作り出されることを意味している。一方、この公理の "1" を "0" に置き換えれば、自然数 0, 1, 2, 3, … を作り出せる。

ただし、ペアノの原典においては上とは少し違った形式で公理系が述べられており、ペアノ自身は自然数そのものを定義しようとしたわけではなかった。

集合論において標準的となっている自然数の構成は以下の通りである。


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