非和声音
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非和声音(ひわせいおん、: nonchord tone, nonharmonic tone、: Fremde Tone)または和声外音(わせいがいおん)とは、和音の構成音が隣接音度に移された音であり[1]、和音の構成音以外のすべての音である[2]

非和声音は、メロディを華やかに飾るための主要な音として古来より用いられてきた[3]。16世紀に確立したパレストリーナ様式 Palestrinas style の対位法音楽に、経過的不協和音、掛留不協和音、補助音的不協和音として非和声音が用いられているのがみられる[4]。「伝統的な分類」における非和声音の名称は、対位法に由来する。

たとえばいまハ音上の長3和音(C Major triad)が響いているとする。この和音の構成音は、ハ音、ホ音、ト音(ド、ミ、ソ)である。この和音が響いているときに、ハ音、ホ音、ト音以外の音が響いていれば、それが非和声音である(これに対して和音の構成音を和声音と言う)。

左:ハ音上の長3和音。Chord Tones:和音の構成音(和声音)。
中央:和声音のみ。すべての音はこの長3和音の構成音である。
右:NCT=非和声音。NCTはこの長3和音の構成音ではない。.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}.mw-parser-output .listen .side-box-text{line-height:1.1em}.mw-parser-output .listen-plain{border:none;background:transparent}.mw-parser-output .listen-embedded{width:100%;margin:0;border-width:1px 0 0 0;background:transparent}.mw-parser-output .listen-header{padding:2px}.mw-parser-output .listen-embedded .listen-header{padding:2px 0}.mw-parser-output .listen-file-header{padding:4px 0}.mw-parser-output .listen .description{padding-top:2px}.mw-parser-output .listen .mw-tmh-player{max-width:100%}@media(max-width:719px){.mw-parser-output .listen{clear:both}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .listen:not(.listen-noimage){width:320px}.mw-parser-output .listen-left{overflow:visible;float:left}.mw-parser-output .listen-center{float:none;margin-left:auto;margin-right:auto}} 和声音と非和声音 この音声や映像がうまく視聴できない場合は、Help:音声・動画の再生をご覧ください。

非和声音は多くの場合、和声音に進行する。これを非和声音の解決と言う。

非和声音はいくつかの種類に分類される。
表記について

古典的なクラシック音楽の学習によく用いられる4声体で説明しているものもあるが、これらの非和声音がクラシック音楽でのみ用いられるということではない。クラシックジャズポピュラー音楽など、和声に基づくさまざまな音楽でこれらの非和声音は用いられる。
非和声音の分類

非和声音の分類法は複数ある。本節ではそのいくつかを示す。伝統的な分類については2種示したが、名前は同じでも、それぞれ異なる非和声音を指していることがあるので、混乱しないよう、注意が必要である。
伝統的な分類1(東京芸術大学の教科書による)

東京芸術大学音楽学部で古典的な西洋音楽の和声の学習用に編纂された教科書「和声 理論と実習[5]による分類を示す。以降、本稿では「和声 理論と実習」をこの教科書の俗称である「芸大和声」と記す。

説明の簡便のため、非和声音をNCT (Non-Chord Tone) と表記する。NCTには*印を付す。NCT(*印)に先行する和声音をCT1、後続する(解決する)和声音をCT2と表記する(Chord Tone)。

譜例は四声体で示したが、実際の音楽では、非和声音はどのような編成のどの声部にも現れうる。
転位音について

転位とは和音の構成音が本来の位置から上または下に移されることで、そのようにして移された音を転位音と呼ぶ。これがすなわち非和声音である。芸大和声は、転位と転位音という概念で非和声音を説明する[1]

しかし、転位の理解を助けるために補助的に伝統的な名称での分類も示し、従来の非和声音の分類と「おおむね一致する」としている[1]
刺繍音

刺繍音(ししゅうおん)は、先行和声音CT1から2度進行して非和声音NCTに進み、次に、反対方向に2度進行して後続和声音CT2に解決する。CT1とCT2は同じ高さでなければならない。CT1とCT2は、同じ高さであれば、同一の和音の構成音であっても、異なる和音の構成音であってもよい。NCTは、弱勢に置かれる。このような非和声音NCTを刺繍音と言う。[1]

刺繍音は、補助音[1]や隣接音とも呼ばれる。

刺繍音 刺繍音 この音声や映像がうまく視聴できない場合は、Help:音声・動画の再生をご覧ください。

経過音

経過音(けいかおん)は、先行和声音CT1から非和声音NCTに2度進行し、さらに同じ方向に2度進行して後続和声音CT2に解決する。CT1とCT2は、同一の和音の構成音であっても、異なる和音の構成音であってもよい。非和声音NCTは、弱勢に置かれる。このような非和声音NCTを経過音という。[1]

経過音 経過音 この音声や映像がうまく視聴できない場合は、Help:音声・動画の再生をご覧ください。

倚音

倚音(いおん)は、ある和音が始まると同時に現れる非和声音NCTで、次の和音に進行しないうちに和声音CT2に2度進行して解決する。「ある和音」に先行する和音は、別の和音でもよいし、別の転回位置にある同じ和音でもよい。倚音は強勢に置かれる。[1]

倚音は転過音または変過音とも呼ばれる[1]

※ 倚音はいきなり非和声音NCTから始まるため、先行する和声音CT1は存在しない。

倚音 倚音 この音声や映像がうまく視聴できない場合は、Help:音声・動画の再生をご覧ください。

刺繍的倚音

倚音のうち、倚音NCTに先行する和声音CT1がCT2と同じ高さであった場合、そのような倚音を刺繍的倚音(ししゅうてきいおん)と呼ぶ[1]

刺繍的倚音 刺繍的倚音 この音声や映像がうまく視聴できない場合は、Help:音声・動画の再生をご覧ください。

経過的倚音

倚音のうち、先行する和声音CT1 → 倚音NCT → 和声音CT2という旋律が、同じ方向に2度ずつ進行していた場合、そのような倚音を経過的倚音(けいかてきいおん)と呼ぶ[1]

経過的倚音 経過的倚音 この音声や映像がうまく視聴できない場合は、Help:音声・動画の再生をご覧ください。

後部倚音

刺繍音および経過音に似ているが、非和声音NCT先行する音が、刺繍音のCT1の条件にも経過音のCT1の条件にも当てはまらない場合、この非和声音NCTを後部倚音(こうぶいおん)と呼ぶ。これには、非和声音NCTに先行音が存在しない(休符)場合も含まれる。[1]後部倚音は弱勢に置かれる。

後部倚音 後部倚音 この音声や映像がうまく視聴できない場合は、Help:音声・動画の再生をご覧ください。

掛留音

倚音NCTが先行和音の和声音CT1と結合している時、この非和声音NCTを掛留音(けいりゅうおん)と言う。必然的にCT1とNCTは同じ高さである。掛留音NCTは、次の和音に進行しないうちに和声音CT2に2度進行して解決する。[1]

「結合」とは切れ目のない1つの音として演奏されるという意味であり、楽譜にどう書かれているかではない。譜例では2分音符と4分音符をタイで結合しているが、代わりに付点2分音符を用いても同じである。

なお、掛留音は倚音に含まない。
下方掛留音

下方掛留音(かほうけいりゅうおん)とは、掛留音のうち上行して解決するものをいう[1]。解決先の和声音CT2から見て掛留音NCTは下方にある。

掛留音。両者とも掛留音だが、2番目の掛留音を特に下方掛留音と言うことがある。 掛留音と下方掛留音 この音声や映像がうまく視聴できない場合は、Help:音声・動画の再生をご覧ください。


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