非ステロイド性抗炎症薬
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Non-steroidal anti-inflammatory drug[1][2]
Drug class
イブプロフェン後発薬(200mg)
クラス識別子
発音[??ns?d] EN-sed
略称Cyclooxygenase inhibitor,[3]
Cyclooxygenase enzyme inhibitor,[3]
Non-steroidal anti-inflammatory agents/analgesics (NSAIAs),
Non-steroidal anti-inflammatory medicines (NSAIMs)[要出典]
効用疼痛,[1] 発熱,[1] 炎症,[1]
ATC codeM01A
作用機序酵素阻害剤
生物学的ターゲットCOX-1 および COX-2
In Wikidata

非ステロイド性抗炎症薬(ひステロイドせいこうえんしょうやく、英語: Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drug[注 1][2][1]は、抗炎症作用鎮痛作用解熱作用を有する薬剤の総称頭文字を連ねて短縮表記されることも多く、NSAID(英語発音: [?en.es.e?.a?.?di?] エヌ・エス・エイ・アイ・ディー[4][注 2][5])や(複数種類あるのでsつきで)NSAIDs(エヌセッズ、エヌセイズ[6])と表記し、かっこ内の発音をされる。疼痛発熱炎症の治療に用いられる。代表的なNSAIDにはアセチルサリチル酸(販売名 アスピリン、バファリンなど)、イブプロフェン(販売名 ブルフェン)、ロキソプロフェン(販売名 ロキソニン)、ジクロフェナク(販売名 ボルタレン)がある。また外用薬もある。

NSAIDsというのは先行するステロイド系抗炎症薬の副作用が問題視された後に登場したステロイドではない抗炎症薬。ところがこのNSAIDでも、NSAID潰瘍のような、死亡につながる可能性のある副作用は2000年前後にアメリカ合衆国で毎年3,200人、あるいは過剰推計ともされるが1万6,500人が死亡しているという2つの推計がある[7]。COX-2への選択制を高め胃腸作用を減らしたNSAIDのうち、ロフェコキシブ[注 3]は心臓の副作用が増加したことで発売元は自主回収することとなった[8]

さまざまなNSAIDsは作用には大差がなく、異なるのは用量、服用方法である。NSAIDsの胃粘膜保護に関する試みで最も成功したのは、アセチル化とpHの調整、また、胃粘膜保護作用を持つ薬剤との併用である。胃酸分泌抑制効果のあるH2ブロッカー(例:ラフチジン(販売名 プロテカジン)、ラニチジン(販売名 ザンタック)や、ミソプロストール(販売名 サイトテック)が、アメリカ合衆国では最も成功した薬剤である。例えば、ジクロフェナクとミソプロストールを合剤にしたオルソテックなどもあり、非常に効果的だが、高価である。日本では、バファリンなどの合剤がある。

一般医を受診する患者の25%は変形性関節症で、その半数から全ての例がNSAIDsを処方される。65歳以上の人口の80%にX線上有意な変形性関節症が存在するとされており、そのうち60%が疼痛などの症状を訴える。2001年には、アメリカ合衆国では7,000万錠のNSAIDsが処方され、300億錠が薬局で販売された。
名称の由来

単語「非ステロイド」とは、糖質コルチコイド(グルココルチコイド)でないことを意味する。グルココルチコイドは抗炎症薬の主要なグループを構成するが、1950年代にはグルココルチコイドに由来する医原病と思われる症例が多数報告されるようになった(詳細についてはステロイド系抗炎症薬の副作用)。このため、1960年代に開発された新しい抗炎症薬の一群がグルココルチコイド系ではないことを知らせることが重要とされ、 NSAID という概念が一般化されるに至った経緯がある。[9]
作用機序

非ステロイド性抗炎症薬には選択性のものと非選択性のものがある。

最も一般的な非ステロイド性抗炎症薬の多くは、すべてのシクロオキシゲナーゼ(COX-1・COX-2)活性を可逆的に競合阻害する。アラキドン酸が結合するシクロオキシゲナーゼの疎水性チャネルを封鎖することでアラキドン酸が酵素活性部位に結合することを防いでいる。例外は、アスピリンで、これはシクロオキシゲナーゼ(COX-1・COX-2両方とも)をアセチル化することで阻害する。これは不可逆的な反応であり、核を持たず蛋白合成ができない血小板にとっては不可逆的な作用をもつ。この特性からアスピリンは冠動脈疾患脳梗塞の既往のある者に対して投与される抗血小板薬として用いられる。アスピリンの抗血小板作用は退薬後、血小板の寿命である約10日間持続する。シクロオキシゲナーゼ1(COX-1)は恒常的に発現しており、胃壁の防御作用に関与している。胃壁が自ら分泌する、胃液に含まれる胃酸塩酸)により溶かされないよう防ぐのに必要である。COX-1が阻害されると、胃潰瘍消化管出血の原因となる。

一方COX-2は炎症時に誘導されるプロスタグランジン合成酵素であり、NSAIDsの抗炎症作用はCOX-2阻害に基づくと近年考えられ、COX-2を選択的に阻害する新しいNSAIDsが創製されている。特に酸性NSAIDsは強いシクロオキシゲナーゼ活性阻害を有しており、COXによりアラキドン酸からプロスタグランジンが合成されるのを阻害する(最近では、COX-1、COX-2共に抑制された場合のみ消化管障害が発現し、いずれかが阻害されずに残っている場合には消化管障害は起きにくいことがCOX-1あるいはCOX-2、もしくはCOX-1とCOX-2を遺伝的に欠損させたマウスの実験から明らかとなっている)。

プロスタグランジンには、炎症、発熱作用があるため結果的にNSAIDsは抗炎症作用、鎮痛作用、解熱作用を持つ。パラセタモール(アセトアミノフェン)もシクロオキシゲナーゼ活性阻害作用を持つため、NSAIDsに分類されることがあるが、明らかな抗炎症作用は持たず、真の意味でのNSAIDsではない。近年まではっきり解明されていなかったがこの抗炎症作用の欠落は、アセトアミノフェンのシクロオキシゲナーゼ阻害作用が中枢神経系に主に作用するからと考えられている。この中枢神経に存在するシクロオキシゲナーゼは、COX-3と呼ばれる。
歴史

1829年初頭に、鎮痛効果があるとして民間療法で用いられていたヤナギの樹皮から初めてサリチル酸が分離された。非ステロイド性抗炎症薬は、少量で鎮痛効果、大量投与で抗炎症効果がある薬物として重要なものとなった。以前は処方箋が必要であったが、現在では、イブプロフェンなどは薬局で販売されるようになっている。古くはリウマチなどの重篤な疾患にのみ処方されていたが、スポーツや事故による怪我の鎮痛、腰痛や手術後の鎮痛にも処方されるようになって久しい。や、冠動脈疾患など他の適応についての研究も続けられている。
禁忌

分娩直前(妊娠末期)では、胎児動脈管の閉鎖を引き起こすため、絶対に服用してはならない。また、手や指で部位を塗布した場合、犬や猫などの愛玩動物が、何らかの経緯で中毒を起こし、健康を害したり死亡させる事例が確認されている。
副作用

大量に消費されているため、副作用も多く出現する。最も多いのは胃腸炎で、軽い胃部不快感から、治療に長期間を要する、重篤な出血を伴う潰瘍までが起こりうる。胃潰瘍は通常、非ステロイド性抗炎症薬を中止するとすぐに治癒し始める[10]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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