青の騎士ベルゼルガ物語
[Wikipedia|▼Menu]
.mw-parser-output .hatnote{margin:0.5em 0;padding:3px 2em;background-color:transparent;border-bottom:1px solid #a2a9b1;font-size:90%}

この項目では、SF小説の青の騎士ベルゼルガ物語について説明しています。ゲームについては「装甲騎兵ボトムズ外伝 青の騎士ベルゼルガ物語」をご覧ください。

『青の騎士ベルゼルガ物語』(あおのきしベルゼルガものがたり、または ブルーナイト ベルゼルガ ストーリィ)は、はままさのり作のSF小説。『装甲騎兵ボトムズ』の外伝的作品で、「青騎士」「青ベル」の略称で呼ばれる。全4巻にて完結。
解説

主人公ケイン・マクドガルがかつての戦友にして自分を導いてくれた恩人でもある人物の仇を追う「黒き炎編」と、『ボトムズ』の舞台であるアストラギウス銀河全体をも巻き込む陰謀にケインが立ち向かう「メルキア騎士団計画編」からなる。「黒き炎編」はケインの一人称で、「メルキア騎士団計画編」は三人称で書かれていることで知られる。

巻を重ねるごとに設定やメカデザインが『ボトムズ』の作品世界から大きく逸脱していったが、当初はテレビアニメ『装甲騎兵ボトムズ』の世界観に基づいて書かれている。
経緯

『青の騎士ベルゼルガ物語』は、まずタカラ発行のホビー誌『デュアルマガジン』の第10号(1984年9月発行)から第12号(1985年3月発行)に掲載された。放映終了後も人気の衰えない『ボトムズ』のオリジナルストーリーを、という企画に端を発している。

その際に『ボトムズ』独特の要素であるバトリングをストーリーの主軸にすること、主人公の乗るアーマードトルーパー(以下AT)をベルゼルガにすることが決められた。

シリーズ完結巻である『絶叫の騎士』(新装版)のあとがきによれば、この連載においては当時フリーの編集者だったはままさのり本人が編集・イラスト発注・執筆といったすべての作業を行っていた。しかし掲載誌が連載3回目で休刊となることが決まり、第3回でストーリーは急展開の末に完結を強いられることとなったが、ここで「このまま終わらせるのは惜しい」との声が企画サイドから上がり、本作は『デュアルマガジン』での連載を下敷きにした書き下ろし作品がソノラマ文庫から上梓されることが決まったという。当初は「黒き炎編」の全2巻で終了する予定だったが、好評を受けて続編である「メルキア騎士団計画編」が書かれ全4巻での完結となった。
物語

アストラギウス銀河を二分した百年戦争が終結し、元ATパイロットであるケイン・マクドガルは惑星メルキアに帰還した。戦うことしか知らないケインは、あるもめ事がきっかけで再会したクエント人傭兵シャ・バックに導かれバトリングの世界に足を踏み入れる。

バトリングの腕も上がり負け知らずとなっていたある日、ケインとシャ・バックは謎の黒いAT「シャドウ・フレア(黒き炎)」の挑戦を受け敗北。その戦いの中シャ・バックは無残に殺害されてしまう。ケインは復讐を誓い、シャ・バックの形見であるAT、ベルゼルガを駆って街から街へ放浪しバトリングで賞金と情報を得ながらシャドウ・フレアを追う。いつしかケインは青く染まった騎士のような意匠を持つベルゼルガになぞらえられた「青の騎士」の異名で呼ばれるようになっていく。

ベルゼルガを駆って戦いを続ける日々の中で宿敵シャドウ・フレアの居場所を突き止めるケイン。しかしシャドウ・フレアはアストラギウス銀河の支配者の座を狙う存在であり、ケインも巨大な陰謀に巻き込まれこれと戦うことになっていく。
登場人物
ケイン・マクドガル
元ギルガメス第36メルキア方面軍機甲兵団ATパイロット。最終階級は
二等兵[1]。「青の騎士」のリングネームを持つバトリング選手。親友シャ・バックの形見であるベルゼルガを駆り、彼を殺したシャドウ・フレアを追って街から街を渡り歩く。その戦いの中で旧劣等種(ベルゼルガ)として覚醒してゆく。ベルゼルガに乗るまでのリングネーム「屍(デッド・ボディ)ケイン」は、シャ・バックと出会ったかつての所属部隊「屍隊(しかばねたい)」に由来する。バトリングで破壊したATは200とも300とも噂されるが、これらはどれも風聞に過ぎない。戦いの中シャドウ・フレアが発する異様な力で肉体に異常が生じ、さらにはラスト・バタリオンの開発した血友弾により出血が止まらなくなる致命的ダメージを背負いながら戦うこととなる。しかしそれらの障害を計り知れないほどの気力とロニー・シャトレの献身的な協力で、そして自らの中に目覚めた旧劣等種の本能=破壊衝動をあえて活かすことで克服。シャドウ・フレアとの戦いで失われたパイルバンカーの代わりをムディ・ロッコルより手に入れ、愛機ベルゼルガをシャドウ・フレアと対等に渡り合えるほどに強化することにも成功する。シャドウ・フレアとの最終決戦の後、ミーマ・センクァターから「貴様には戦場しかない」という言葉と共にミッド級FX-ATゼルベリオスと別人のデータが記された認識票を渡されるが、その時点ではもう戦場に身を置こうと考えてはいなかった。しかし戦いの中で離れ離れになったロニーを探すため、認識票にあったクローマ・ツェンダーの名でメルキアを彷徨していたケインは謎の新型ATウォリアー・ワン (W-1) と遭遇する。W-1と軍に執拗なまでの追撃を受ける中、ついにロニーを見つけたケインだったがその直後に軍に捕らえられW-1の秘密や己との因縁、そして「メルキア騎士団計画」の脅威を知らされる。そしてロニーの死でメルキア騎士団計画の狂気を悟ったケインは再び戦うことを決意する。以後ケインは取り戻したゼルベリオスを駆って、メルキア騎士団計画の首謀者であるロリンザーの行方を探りながらメルキア軍の拠点を襲撃して次々と壊滅に追い込み、同時に軍に捕らえられた同族=旧劣等種をも助け出していく。旧劣等種の本能ゆえか絶望的な状況でも生きること、敵を倒すことへの執念を失わなかった。ロリンザーの忠臣ゾクサーネンの操るゼルベリオスとの戦闘では加勢のW-1と、その支配下に置かれた自機に右爪先を挟まれ、そこへ迫るゾクサーネン機のアームパンチから逃れるために自ら右足を銃撃で破壊。さらにゾクサーネン機に踏みつぶされ右膝から下を失うこととなる。そしてレグジオネータとの最初の遭遇で左目と左手首をも失い、ゼルベリオスをも破壊されてしまい、さらにはW-1の大部隊との戦闘中、言語中枢にまで異常をきたしてしまう。しかし、それでもなお屈することなく、レグジオネータとの最終決戦に向かう。名字の「マクドガル」は『レンズマン』のヒロイン「クリス・マクドガル」から採られたもの。OVA『野望のルーツ』のラストシーンには、ケインに類似した格好の人物(軍事パレードを見つめる群衆から乗り出している)が登場している。
ロニー・シャトレ
バララント生まれの少女。ケインが収容所から脱走する際、強奪した密輸船に人買いの「商品」として乗せられていた。密輸船から脱出した後はアグの街で「ファニー・デビル(陽気な悪魔)」のリングネームを持つバトリング選手として活躍し、コバーンの事務所でケインと再会。ケインと行動を共にする中で、次第にケインに好意を持つようになる。心を通わせることによってケインにとって大切な存在になるが、後に軍に捕らえられ旧劣等種としての遺伝子を持つことが判明したために理不尽にも殺害されてしまう。
ミーマ・センクァター
流れ者のマッチメーカーを自称しているが、その正体は
ギルガメス軍の情報将校(初登場時の階級は中佐、ギ・グロリーの戦闘において特進し『K'』以降は少将)。次期主力AT「FX(フェックス)」の開発責任者でもありバトリングを利用して新型機のテストをしていた。ケインに興味を抱き彼の復讐行に必要以上に協力していく。FXをはじめとする次世代AT開発の中でW-1やレグジオネータの存在とそれにまつわる真実を知ったミーマは、FXに続く新型ATの開発という口実でレグジオネータとW-1に対抗するためFX技術を導入した新型ATの開発を進める。その後艦隊を率いてバララントへの出征を命ぜられたミーマは開発中だった新型ATを全て持ってメルキアを離れ、以後忠実な部下と共に軍を離反。開発途中だったテスタロッサの仕上げを進めさせつつバララントの支配星域へと向かい、同時にメルキアへ降りた部下にはケインの捜索を命じている。
黒き炎編
クリス・カーツ
シャドウ・フレア」のリングネームを持つバトリング選手。しかしその正体は融機人(ゆうきじん)と呼ばれる、自らを改造した異能者達によって結成された異能結社「ラスト・バタリオン」の総帥である。融機人によるアストラギウス銀河の支配を目論んでおり、バトリングに関わっているのも実戦データの収集が目的である。長い黒髪と、額の中央にある黒子が外見的な特徴。あらゆるコンピュータへの干渉を行って支配下に置き、さらにはそのコンピュータが制御する機械に影響を与えて動作を抑制する能力を持つ。この能力は支配対象とした機械を操る、マシンとの適合力が高い人間──すなわち異能者やそれに類する者の肉体にも影響が及ぶため、旧劣等種としての本能が目覚める以前のケインは愛機ベルゼルガを通して肉体を変調させられ[2]、一時はパイルバンカーを操る左腕が自分の意志で動かせないばかりか生体として機能しない、壊死同然の状態にまで陥った。元々は戦闘技術習得のため、本当の記憶は封印された上でメルキアへ送り込まれた融機人グループの下級構成員に過ぎなかった[3]。メルキア軍人だった時期、古くからアストラギウス銀河を支配してきたワイズマンへの攻撃部隊として設立された「屍隊」の隊員として、シャ・バックと共にワイズマンの宇宙船強襲作戦に参加する。しかし作戦は事前にワイズマンに察知されていて、情報操作によって自らを送り出した融機人グループの母船を攻撃するよう仕向けられてしまう[4]。ここでの同胞を虐殺した壮絶な体験は、クリスの封印されていた融機人としての記憶を呼び起こさせると同時に、屍隊の隊員に施されていたワイズマンに対する憎悪の意識も大きく増幅させ、更には内在していた異能者の資質を開花させた。これらの要因が彼に強烈なカリスマ性を持つに至らせ、アストラギウス支配の野望へと走らせることとなる。額の黒子も、この時の心的外傷ともいえる精神的な苦痛が肉体に与えた影響から生じたもの。その後メルキアへ舞い戻ったクリスは軍首脳を皆殺しにしてメルキアを傀儡政府という状況に陥らせ、更には新鋭宇宙戦艦ギ・グロリーを奪取して、屍隊の攻撃により母船を失い脱出船で宇宙を漂っていた融機人グループへと帰還する。帰還後、改造手術を受けて融機人となった事で異能者としての能力を飛躍的に増大させたクリスは、その比類なき力とカリスマ性で瞬く間に組織の中枢へと上り詰めた。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:126 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef