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スティーヴン・キング著作の中編小説については「霧 (小説)」をご覧ください。
早朝の霧(2020年 スイス

霧(きり)とは、地表近くの空気中に細かいが浮遊するもので、気象観測では水平視程 1 キロメートル(km)未満の場合をいう。ふつう、空気がみがかって見える[1][2]
定義

水蒸気を含んだ大気が冷やされるなどして飽和状態に達し凝結、含まれていた水蒸気が小さな水滴となって空中に浮かんでおり、それが地表に接している状態[1][3][4]
雲との違い

発生原理も構成する水滴もとは変わらない。観測上、地面に接しているものを「霧」、地面に接していないものを「雲」と定義している[4]。特ににかかる霧(雲)のような場合、霧が差す山肌に立つ観測者からは霧と認識されるが、麓の観測者からは雲と認識されるような、場所により呼称が変わることが生じうる[3][4]。なお、登山の場面などで霧や低い雲のことをガスと呼ぶことがある[5][6][7][8][9][10]
靄(もや)との違い

霧よりも薄く灰色がかっている。水滴や微粒子の浮遊により生じ、霧の延長線上にある現象で、視程が1 キロメートル以上のものをと呼んで区別する。気象観測では視程が1 キロメートル以上のものを靄と呼んで区別する[1][2]
分類
発生要因による分類

その発生要因によって、主に以下のように分類される。
放射霧
放射冷却によって地表付近に発生した霧(2021年 フィンランド)晴れた日の夜間には、地表面から放射され地面が冷える(放射冷却)。そうして冷えた地面が、地面に接している水蒸気を多く含んだ空気を冷やすことで発生するもの。夜から早朝にかけて発生し、日射の強まりとともに蒸発して消えていく。が上がった後に生じやすい。風が強いと空気がかき混ぜられるため、生じにくい。地形の影響で冷気が溜まりやすい盆地や谷沿いに発生しやすく、それぞれ盆地霧、谷霧という[3][11][12][13][14]
移流霧
暖かく湿った空気が移動(移流)して水温の低い海上や陸地に乗り、下から冷やされることにより発生するもの。暖流と寒流境目付近に生じやすい[3][11]。地表近くに混合層が発達していると、混合層全体が冷えて厚い霧を生じることがある[14]。夏ごろ三陸沖から北海道の東海岸などに発生する海霧がその代表的な例で、寒流(親潮)上への暖気の移流が原因であり、しばしば霧は内陸にまで移動し、厚さが600 メートルに達することもある[3][11][15][16]
蒸気霧
海上に発生した気嵐(2023年 北海道)暖かく湿った空気が冷たい空気と混ざって発生する。冬に息が白くなるのと原理は同じ。暖かい水面上に冷たい空気が入り、水面から蒸発がおき、その水蒸気が冷たい空気に冷やされて発生するもの。の上にみられ、川霧などと呼ばれる。水温と気温の差が大きい時に生じやすい。風呂やコップに入れた暖かい飲み物の湯気も原理は同じ。極地で秋から冬によく生じ、海氷の周りの海面や、表面が氷結する前の川や湖にみられる[3][11]。冬の日本海上でもこの成因をもつ湯気のような霧(気嵐(けあらし))が生じる[11][17]
前線霧
前線、主に空気が暖かい温暖前線付近で降雨に伴い発生する。雨が降り湿度が上がったところに温度の比較的高い雨が落ちてくると、雨粒から蒸発したさらに湿度が上がり、霧が生じる。雨粒が気温より温度が高いときに生じやすいと考えられる[3][11][14][18]
上昇霧
盆地に発生した霧(2010年 篠山盆地)山の斜面に沿って、湿った空気が上昇し冷やされて発生する。遠くから見ると山に掛かった雲に見えるが、雲に覆われた山の地表では霧となる。粒子は雲粒に近い大きさにもなり、層雲に似た性質をもつ。滑昇霧ともいう[4][3][11][14][19]

複数の要因、例えば放射霧と移流霧の要因を持つ霧なども発生することがある。盆地霧にも放射霧と移流霧の性質を併せ持つものがみられる[3][11]

層雲が発達して次第に厚みを増し、雲底が地面に接して霧となることがある[14]。反対に、地表の加熱や風の強まりによって、霧が地表から離れて層雲に変化していくことがある[20]
水平視程と濃度による分類

水平視程が1
キロメートル未満であるが、天空がかすかに見えるようなものを低い霧という[21][22]

水平視程が1キロメートル以上であるが、人間の視線の高さより低い地面付近にのみあるものを地霧という[22][23]。こちらは気象観測上は霧の定義(水平視程1キロメートル未満)から外れる。

類似の大気現象

気温0 ℃以下のとき生じることがある、過冷却の水滴でできた霧を
着氷性の霧という。物体に付着して凍結・堆積することがあり、主に樹木に樹氷粗氷を形成する。航空機への着氷の原因となることから航空気象では気温0 ℃以下における霧をすべて着氷性の霧 (FZFG)として報告する。なお、気温-10 ℃以下になると氷晶が含まれるようになり、細氷のように大気光学現象を生じうる[24][25][26][27]

気温約-30 ℃以下の低温で、微小な氷の結晶が浮遊し視程が低下する現象を氷霧という。主に晴れた風の弱い時に生じる[22][28]

主に湿度75 %未満の時、乾いた微粒子が浮遊し視程が低下する現象を煙霧という[29][30]

霧の性質

霧が発生している状態では大気中に浮遊する水滴が散乱するために、大気は白く霞んで見え、視程(見通すことのできる水平距離)が狭くなる。霧に十分に光が当たっているときは霧粒をはっきりと確認することができる[1]。視程の低下度は、霧の水滴の密度や粒径に相関がある[2]。霧にが混じると、灰色や黄色みがかって見えることがある[1][2]

通常、霧の中の相対湿度は100 %に近く、湿っぽく冷たい感触の環境である[1]。靄(もや)の場合は相対湿度は通常70 %以上になっているが100 %にはならない[1]。なお、消えていくときの霧の中の湿度は小さくなる[3]。粒子の大きな霧の中にいると肌や衣服が濡れやすく、小さいものは濡れにくい傾向がある[11]

霧虹は太陽光や月の光が霧に投影する。白虹ともいう。白色の帯で、たいていは外側に細く赤みがかった領域、内側に青みがかった領域がある。色彩を生じる光の回折が少ないためこのような色味を呈する[31]

光冠は霧にも生じる[32]
気象観測
天気記号

ラジオ気象通報などの日本式天気図における霧の天気記号は「」。観測時に視程1 km未満の霧が出ており、雨や雪が降ったり雷が鳴っていないとき、天気を霧と記録する[33][34]

また、陸上において視程が100 メートル以下、海上において視程が500 メートル以下のときは「濃霧」ともいう[注 1][35]

国際気象通報式[注 2]では、観測時に霧が存在しているか消えたか、空を透視できる(低い霧)かどうか、前1時間内の濃度変化(うすくなった/変化がない/濃くなった)、散在するか連続するか、観測所付近になくとも遠方に見えるかどうか、細氷霧雪・雪を伴うかどうかの組み合わせで区分される天気から選択して報告する。基本の記号は霧が、低い霧が、地霧が[36][37]

航空気象の通報式[注 3]では、「視程障害」の欄の FG が霧を表し、併せて「特性」覧の MI (地)、BC (散在)、PR (部分)、FZ (着氷性)を用いる[38]。例えば、MIFG が地霧、FG が(地霧・散在などではない)霧。
注意報・海上警報

濃霧注意報は、濃霧によって交通機関への障害が出ることが予測されるときに地元気象台から発表される[39]。大体の地方では、視程が陸上で100メートル、海上で500メートルを下回る場合に出されるが、より厳しい基準の地域もある。例えば、釧路地方気象台をはじめとする北海道では、陸上での視程が200メートルで濃霧注意報が発表される。海上では、海上の視程が約500メートル(瀬戸内海では1キロメートル)以下の状態に既になっているか、24時間以内にその状態になると予想される場合の警戒喚起として「海上濃霧警報」が発表される。
気象庁の観測

年間霧日数の上位記録
(統計期間1981 - 2010年、気象官署・測候所)順位霧日数観測地点
1位101.4 日
北海道釧路市
2位52.0 日北海道帯広市
3位43.7 日千葉県銚子市
参考121.4 日栃木県日光市(奥日光)(1997-2010年)
参考98.4 日熊本県人吉市(2000-2010年)
参考97.4 日岡山県津山市(2002-2010年)
参考75.1 日山形県新庄市(1998-2010年)
参考69.5 日北海道広尾町(1999-2010年)
参考43.7 日大分県日田市(2001-2010年)
参考40.7 日埼玉県秩父市(1998-2010年)
参考2.7 日東京都千代田区

霧の影響

霧が発生すると視界が遮られる、陸上、海上、航空いずれにおいても交通障害の原因となる。状況によっては高速道路など道路の閉鎖、鉄道の運行中止、空港の滑走路閉鎖などの事故予防の対応が取られる[40]。また、産業活動にも影響を与える[41]
霧害

主に、本現象による、農業で生じる被害をいう。日射の長期間遮断による温度低下と光合成の阻害により、作物等の生産量が減少する。日本では、岩手県三陸地方やませや北海道太平洋岸の海霧が代表例。対策として、根釧原野では防霧林(多くは防霧保安林)を設定して、林帯で霧粒の捕捉を行っている[42]
スポーツへの影響

野球では霧で試合が
コールドゲームになることがある(2005年の日本シリーズ(ロッテ - 阪神)第1戦、2020年7月21日の楽天 - オリックス戦など)[43]

サッカーでは、2020年11月に行われた日本とメキシコの国際親善試合で後半途中から霧により著しく視界不良になったため赤い蛍光色のカラーボールに交換された[44]

霧の作用の利用


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