『霧の旗』(きりのはた)は、松本清張の長編小説。兄の弁護を断った弁護士に対する、女性の理不尽な復讐を描く、リーガル・サスペンス。『婦人公論』に連載され(1959年7月号 - 1960年3月号、連載中の挿絵は山本正)、1961年3月に中央公論社より刊行された。後に電子書籍版も発売されている。
1965年・1977年の2度にわたり映画化、また多数テレビドラマ化されている。
ポータル 文学 この節にあるあらすじは作品内容に比して不十分です。あらすじの書き方を参考にして、物語全体の流れが理解できるように(ネタバレも含めて)、著作権を侵害しないようご自身の言葉で加筆を行なってください
あらすじ
時は昭和30年代半ば。九州の片田舎で金貸しの老女の強盗殺人事件が起き、柳田桐子の兄で教師の正夫が容疑者として逮捕されて裁判にかけられる。正夫が第一発見者で、正夫は被害者から生前金を借りており、しかも殺害現場から借用証書
を窃取する等、状況は正夫にとって圧倒的に不利なのだが、それでも殺人に関しては無罪を主張する。思いあまった桐子は上京し、同郷出身の高名な弁護士の大塚に弁護の依頼を申し出る。だが、高額な弁護費用を工面できないのと、大塚自身の多忙を理由に断られ、失意の内に帰郷する。その後、一審で出た判決は死刑。そして、控訴中に正夫は無実を訴えながら獄中で非業の死を遂げた。桐子はその旨を大塚に葉書でしたためて送る。殺人犯の妹の汚名を着せられた桐子は地元にいられなくなり、上京してホステスになった。一方、葉書を読んだ大塚は後味の悪さを感じ、独自に事件資料を集めて丹念に読み込んでいくうちに、真犯人は桐子の兄以外にいることを突きとめる。その頃、大塚には愛人の河野径子がいたのだが、ふとしたことからこの径子に殺人容疑がかかる。だが、たまたま殺人現場の近くに桐子が居合わせており、逃走する犯人の姿を見ていておまけに犯人のものと思われるライターまで拾っていた。径子の無実を証明できるのは桐子ただ一人。
大塚は桐子にライターを自分に渡し、現場近くで見たことをありのままに証言してくれるよう懇願する。だが、兄のことがある桐子は冷たく拒絶する。そして、桐子はある行動に出るー。 霧の旗 1965年5月28日公開。製作は松竹大船、配給は松竹。桐子の出身地は熊本とされている。DVD化されている。併映『ぜったい多数』[6]。
主な登場人物 小説中、桐子が訪れた大塚弁護士の事務所が所在する設定とされる、東京・丸の内二丁目の一角。小説第1節では、「煉瓦の建物が道の両方に高く並んでいる区域」と描写されているが、現在は、写真左側の三菱一号館(再建)を除き、大半が現代的なビルとなっている。
以下に原作における設定を記述する。
柳田桐子
北九州のK市に住むタイピスト。少女のような稚さの残る顔立ちと強い視線が特徴的な若い女性。
大塚欽三
丸の内二丁目に事務所を構える、日本でも指折りの有名な弁護士。
河野径子
銀座の高級レストラン「みなせ」の女性経営者[注 1]
阿部啓一
総合雑誌の若い編集者。
奥村
大塚弁護士事務所の事務員。
信子
銀座のはずれにあるバー「海草」の女給。
杉浦健次
「みなせ」の給仕頭。
山上武雄
杉浦健次の知人の青年。
エピソード
映画『張込み』の製作以降、著者と面識のあった橋本忍の発言によれば、当時著者は、アラブ人男性のフランス人医師に対する復讐を描くフランス映画『眼には眼を』を観て非常に感心し、こういう(趣向の)ものを書きたいとさかんに言っており、そうした発言ののちに著者が本作を執筆したとされている[2]。
本作は単行本化の際、最終回連載部分に原稿用紙30枚分の加筆がなされた。特に大塚の懇願に対する桐子の態度の描写や、第二の殺人に関する大塚の推理部分、桐子が検事に宛てて送った手紙の部分が大幅に加筆、精緻化された[1]。
詩人・翻訳家の天沢退二郎は、小説の描写において、桐子の意識に入り込んだ描写と、大塚・阿部の意識に立ち入りつつ桐子に関して外面模写のみに終始する描写が振り分けられ、二つの異なる桐子像が小説内で峻別されていることを指摘している[3]。社会学者の作田啓一は、本作において大塚弁護士の側に罪があるとすればそれは「無関心の罪」であり、現代人の多くがひそかに心あたりのある感覚であると分析している[4]。評論家の川本三郎は、本作が発表された時期には、現在の東京一極集中に通じる、地方と東京の大きな格差が生まれていて、桐子の大塚弁護士に対する恨みの背景には、地方出身者の東京に対する恨み(と強い憧れ)があると指摘している[5]。
映画が望まれています。
1965年
監督山田洋次
脚本橋本忍
製作脇田茂
出演者倍賞千恵子
滝沢修
露口茂
音楽林光
撮影高羽哲夫
編集浦岡敬一
配給松竹
公開 1965年5月28日
上映時間111分
製作国 日本
言語日本語
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スタッフ
監督:山田洋次
原作:松本清張 -中央公論社版-
脚本:橋本忍
製作:脇田茂
撮影:高羽哲夫
美術:梅田千代夫
音楽:林光
照明:戸井田康国
編集:浦岡敬一
録音:小尾幸魚
調音:佐藤広文
装置:川添善治
装飾:鈴木八洲雄
現像:東洋現像所
協力:菱一 東芝音楽芸能株式会社
助監督:杉岡次郎
渉外:中村興一
進行:吉岡博史
映倫:13858
※スタッフ本編クレジット表記順
キャスト
柳田桐子:倍賞千恵子
大塚欽三:滝沢修
河野径子:新珠三千代(東宝)
杉田健一:川津祐介 - (注)クレジット表記通り
阿部幸一:近藤洋介
島田検事:内藤武敏
柳田正夫:露口茂
信子:市原悦子
久岡:清村耕次
奥村:桑山正一
浜田寅彦
上田係長:田武謙三
バー「海草」のマダム:阿部寿美子
「みなせ」支配人:穂積隆信
家主:三崎千恵子
船員:井川比佐志
大町文夫
菅原通済
山上:河原崎次郎
大塚芳子:逢初夢子
牧よし子
幸田宗丸
山本幸栄
和地広幸
小田草之介
鬼笑介
青山宏
佐々木恒子
村上記代
川村禾門
岡部健
前田恵介
高杉裕児
土田桂司
※本編クレジット表記順 本映画は当初東宝の企画として、橋本忍による脚本が書かれていた[7]。
谷村:金子信雄 (ノンクレジット)
製作