電車特定区間
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個別の区間に対して通常より割安な運賃を定める「特定区間運賃」(運賃#特定区間運賃を参照)とは異なります。

1958年頃から1973年3月まで「電車特定区間」と呼ばれていた国鉄の「大都市近郊区間」については「大都市近郊区間 (JR)」をご覧ください。

電車特定区間(でんしゃとくていくかん)とは、 JR旅客営業規則第78条第2項に規定する区間である。東京附近及び大阪附近の幹線区間のうち利用者が特に多い線区・区間について、この区間内の駅を相互発着する場合、普通旅客運賃の計算において幹線区間よりも割安な対キロ賃率を適用するものと規定されている。また、定期旅客運賃についても幹線区間よりも割安な値段が設定されている[注 1]入場券料金についても、独自の料金設定がなされている。

加えて、同様の趣旨で電車特定区間とは別に設定されている東京山手線内区間および大阪環状線内区間、並びにそれらの運賃形態についても本項に記す。
概要
電車特定区間

日本国有鉄道(国鉄)が1984年4月の旅客営業規則改訂時に国電区間の名称で制定した。当時「国電」と呼ばれていた通勤形電車が主力として走行する線区が区間に含まれた[注 2]国鉄分割民営化以降は東日本旅客鉄道(JR東日本)・西日本旅客鉄道(JR西日本)に制度が引き継がれ、それに伴って「電車特定区間」という名称になった。電車特定区間相互間における普通旅客運賃および定期旅客運賃について、通常の幹線のそれより割安な運賃が適用される[注 3]
東京山手線内・大阪環状線内

電車特定区間制定と同時に「大阪環状線内」区間が制定され、以前より存在していた「東京山手線内」[注 4]区間と合わせて、それらの区間相互間において、電車特定区間よりさらに割安な運賃形態が適用されることとなった。「東京山手線内」区間は東京附近における電車特定区間(以下、「東京附近」)内に、「大阪環状線内」区間は大阪附近における電車特定区間(以下、「大阪附近」)内にそれぞれ内包されている[注 5]
適用線区・区間

1984年4月の旅客営業規則改訂時に「国電区間」として設定し、国鉄分割民営化以降は「電車特定区間」としてJR東日本・JR西日本が設定範囲を決定しているが、変更に関しては概ね制定当時の路線区域における新線開業ないし廃止によるものにとどまっていた[注 6]

しかし、2024年5月、JR西日本は制定以来初めて「大阪附近」の電車特定区間を大幅に変更することを発表した。国土交通大臣の認可を前提として2025年4月1日から変更することを予定しており、変更後の適用線区はこれまでより拡大する一方、「大阪環状線内」の区分は廃止される[1]

以下の記述は、正式線路名称による[注 7]
東京附近

JR東日本

東海道本線

本線:東京駅 - 大船駅(うち、東京駅 - 品川駅間は「東京山手線内」)

品鶴線羽沢線[注 8]:品川駅 - 新川崎駅 - 鶴見駅 - 羽沢横浜国大駅


南武線:南武支線含む全線全駅

鶴見線:支線を含む全線全駅

武蔵野線:全線全駅

横浜線:全線全駅

根岸線:全線全駅

横須賀線:全線全駅

中央本線:東京駅 - 高尾駅間(うち、東京駅 - 新宿駅間は「東京山手線内」)

青梅線:全線全駅

五日市線:全線全駅

東北本線

本線:東京駅 - 大宮駅(うち、東京駅 - 田端駅間は「東京山手線内」)

尾久支線:日暮里駅 - 尾久駅 - 赤羽駅

埼京線の一部:赤羽駅 - 武蔵浦和駅 - 大宮駅


山手線:全線全駅(「東京山手線内」)

赤羽線[注 9]:全線全駅

常磐線:日暮里駅 - 取手駅

総武本線

本線:東京駅 - 千葉駅

総武緩行線錦糸町駅 - 御茶ノ水駅(うち、 秋葉原駅 - 御茶ノ水駅間は「東京山手線内」)


京葉線

本線:東京駅 - 千葉みなと駅

支線:市川塩浜駅 - 西船橋駅 - 南船橋駅



大阪附近

JR西日本

東海道本線[注 10]京都駅 - 神戸駅

おおさか東線:全線全駅

大阪環状線:全線全駅(「大阪環状線内」)

桜島線[注 11]:全線全駅(「大阪環状線内」)

JR東西線:全線全駅

山陽本線[注 12]:神戸駅 - 西明石駅

関西本線[注 13]奈良駅 - JR難波駅(うち、天王寺駅 - JR難波駅間は「大阪環状線内」)

片町線[注 14]長尾駅 - 京橋駅

阪和線:全線全駅(羽衣線を含む)


大阪附近(2025年4月以降予定)

国土交通大臣の認可を前提として2025年4月1日から変更することを予定。また、「大阪環状線内」の区分は廃止される[1]

JR西日本

東海道本線[注 15]野洲駅 - 神戸駅

湖西線山科駅 - 堅田駅

山陰本線[注 16]:京都駅 - 亀岡駅

奈良線:京都駅 - 城陽駅

おおさか東線:全線全駅

大阪環状線:全線全駅

桜島線[注 17]:全線全駅

JR東西線:全線全駅

福知山線[注 18]尼崎駅 - 新三田駅

山陽本線[注 19]:神戸駅 - 網干駅

関西本線[注 20]奈良駅 - JR難波駅

片町線[注 21]松井山手駅 - 京橋駅

阪和線:全線全駅(羽衣線を含む)

関西空港線:全線全駅


運賃

「東京附近」の大人普通旅客運賃・大人IC運賃と「大阪附近」の大人普通旅客運賃、そして比較のためJR本州三社幹線の大人普通旅客運賃・JR東日本大人IC運賃を記す[注 22]。小児運賃は大人運賃の半額に対して普通旅客運賃は10円未満を切り捨て、JR東日本のIC運賃は1円未満を切り捨てる。「東京附近」と「大阪附近」は鉄道駅バリアフリー料金制度による料金10円[注 23]の加算を含む[2][3][4][5][6]

営業キロは、1km未満を切り上げる。

10km以下の区間の運賃は、各約款に個別に規定された運賃[注 24](および鉄道駅バリアフリー料金制度による加算料金[注 23])を用いる。

11km以上の区間の運賃は、以下の賃率に基づき税抜き運賃を算出し、それに消費税額(および鉄道駅バリアフリー料金制度による料金[注 23])を加え、10円未満について「東京附近」「東京山手線内」区間は切り上げ、それ以外は四捨五入する。

賃率:電車特定区間が15円30銭、東京山手線内・大阪環状線内が13円25銭。なお、11km以上300km以下の本州三社の幹線は16円20銭。


()内は東京山手線内・大阪環状線内の運賃(10km以下は電車特定区間の運賃形態を適用)。

営業キロ東京附近大阪附近幹線
普通運賃IC運賃普通運賃IC運賃[注 25]
初乗り3km150146140150147
4 - 6170167170190189
7 - 10180178190200199
11 - 15230(210)230(208)230(210)240242
16 - 20320(280)318(274)320(270)330330
21 - 25410(360)406(351)410(350)420418
26 - 30490(430)483(428)480(430)510506
31 - 35580(500)571(494)570590594
36 - 40660(580)659(571)660680682
41 - 45740(640)736(637)740770770
46 - 50830824820860858
51 - 60950945950990990
61 - 701,1101,1101,1101,1701,166
71 - 801,2801,2751,2801,3401,342
81 - 901,4601,4511,4501,5201,518
91 - 1001,6201,6161,6201,6901,694
101 - 1201,8801,8801,8801,9801,980
121 - 1402,2102,2102,2102,3102,310

なお、本項では詳細を省略するが、定期旅客運賃に関しても、通常の幹線における定期旅客運賃よりも割安な運賃設定がなされており、また鉄道駅バリアフリー料金制度も導入されている。

さらに、この運賃形態は新幹線東海道新幹線:東京 - 品川、東北新幹線:東京 - 大宮、東海道・山陽新幹線:京都 - 西明石)相互間を含む区間(新神戸駅発着を含む)に乗車する場合にも準用される。具体的には、乗車全区間がそれらの新幹線区間相互間および電車特定区間を合わせた区間に収まる場合、上記の運賃形態が適用される[注 26]

入場券料金については、普通入場券および定期入場券ともに、各初乗り3kmのものに等しい[注 27][9]
沿革

1984年

4月20日:「国電区間」および「大阪環状線内」区間を制定。すでに制定されていた「東京山手線内」[注 4]区間を含め、それらの区間相互間において幹線運賃より割安な運賃設定がなされる。営業キロが10km以内であれば「国電区間」相互間では共通の運賃形態であった。11km以上については「東京山手線内」「大阪環状線内」相互区間内にのみ割安な運賃形態が適用され、「東京山手線内」「大阪環状線内」で完結しない「国電区間」相互間では、営業キロが11km以上の場合は通常の幹線運賃が適用された。

国電区間

東京附近:東海道本線(東京 - 大船)、南武線、鶴見線、武蔵野線、横浜線、根岸線、横須賀線、中央本線(東京 - 高尾)、青梅線、五日市線、東北本線(東京 - 大宮、日暮里 - 尾久 - 赤羽)、山手線、赤羽線、常磐線(日暮里 - 取手)、総武本線(東京 - 千葉、錦糸町 - 御茶ノ水)

大阪附近:東海道本線(京都 - 神戸)、大阪環状線、桜島線、山陽本線(神戸 - 西明石)、関西本線(奈良 - 湊町)、片町線(長尾 - 片町)、阪和線


東京山手線内[注 28]:東海道本線(東京 - 品川)、中央本線(東京 - 新宿)、東北本線(東京 - 田端)、山手線、総武本線(秋葉原 - 御茶ノ水)

大阪環状線内:大阪環状線、桜島線、関西本線(天王寺 - 湊町)、片町線(京橋 - 片町)



1985年

4月20日:「東京附近」に、東海道本線支線の品鶴線(品川 - 新川崎 - 鶴見)を追加。これまでは「国電区間」内相互間かつ10km以内の区間であれば「東京山手線内」「大阪環状線内」区間内完結か否かを問わず同一の運賃が適用されていたが、7kmから10kmまでの場合に完結する場合としない場合で別の運賃が適用されるようになる[注 29]

9月30日:東北本線(埼京線:赤羽 - 武蔵浦和 - 大宮)開業に伴い、「東京附近」に同区間を追加。


1986年

3月3日:京葉線(西船橋 - 千葉港)開業に伴い、「東京附近」に同区間を追加。

9月30日:「東京山手線内」「大阪環状線内」区間内で完結しない11km以上の「国電区間」相互間に幹線運賃よりも割安な運賃制度を適用。これにより、距離を問わず幹線運賃よりも割安な運賃制度が適用されたこととなる。


1987年

4月1日:国鉄分割民営化に伴い、「国電区間」の名称を「電車特定区間」に変更。


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