電磁波過敏症
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電磁波過敏症(でんじはかびんしょう、: electromagnetic hypersensitivity [EHS] )または電磁場に起因する特発性環境不耐症(でんじばにきいんするとくはつせいかんきょうふたいしょう、: idiopathic environmental intolerance attributed to electromagnetic fields [IEI-EMF] )とは、「ある程度の電磁波(=電磁場)に曝露されると、身体にさまざまな不調が現れる」「電磁場に曝されることによって健康を害する」概念の症状である。

「症状」を提議する側と、数多くの国際機関や研究機関から出されている「症状」を否定する見解とに割れている。電磁波過敏症については、思い込み等のノセボ効果の影響があるとする主張もある[1][2]。2018年度の独立行政法人労働者健康安全機構による報告では、いわゆる電磁過敏症について、世界保健機関(WHO)をはじめ、欧州科学技術研究協力機構やスイス連邦環境局、ノルウェー公衆衛生研究所等においても、否定的な見解を出していることを紹介している[3]
概要
「症状」電磁場を発生させる高圧線

アメリカ合衆国医学者であるウィリアム・レイ (William J Rea) [4]によって「Electrical Hypersensitivity(電気過敏症)」と命名された。

電磁波および電磁場の健康への影響については、解明されてない部分があるとする見解があり[5][6][7][8]。現在でも様々な疫学的研究が行われている[9][10]
WHOの見解

世界保健機関(WHO)は2005年の研究報告「ファクトシートNo.296」[11]において、様々な症状の存在するとした上で、医学的診断基準は未だなく、二重盲検により実施された研究から、それぞれの症状が電磁界曝露と相関がないとし、臨床的には電磁波の低減を行うのではなく、心理的要因や人間工学的要因について対応すべきとした。

WHOは「電磁波過敏症」と称されるものについて、とりまとめた研究報告「ファクトシートNo.296」[11]において、電磁波との関連についての科学的根拠はないとし、各国政府に対し、その件について明確な声明を出すことを求めている。
国際がん研究機関「電磁波#影響」も参照

国際がん研究機関 (IARC) は「IARC発がん性リスク一覧」で「低周波磁場 (Magnetic fields (extremely low-frequency)」をグループ2Bに分類している。ただし、国際がん研究機関は「電磁波過敏症」について直接言及している訳ではない。また、「低周波電場 (Electric fields (extremely low-frequency)」をグループ3に分類している。

「低周波磁場」「低周波電場」と、いわゆる電磁波過敏症の文脈において語られる電磁波は異なる。Extremely low-frequency"(超低周波)とあり、商用交流電源周波数の電力線を念頭に置いている。

また、発がん性リスク一覧は当該物質や要因に対し予防原則として厳格に評価[1]して「リスクグループに応じたリスクが有るか無いか」で判断した一覧表であり、当該物質や要因との接触強度(質・量)と有意的発がん性との関係その他の医原的な研究要素を何ら提供しない。また暴露に対する発がん性だけで判断しており、要因のもたらす効用や、生体毒性については、何ら判断していない。

IARC発がん性リスク一覧(抜粋)リスクグループ意味要因の例備考
グループ1ヒトに対して発癌性である(ヒトでの十分な証拠)石綿、キスによって感染するウイルス (EVB)経口避妊薬の常用、太陽光曝露、アルコール飲料・タバコ・ビンロウ、加工肉、煤煙、非精製鉱油[12]塩蔵魚、木工粉塵、家具工場、受動性喫煙、日焼けマシーン
グループ2Aヒトに対して恐らく (probably) 発癌性である(ヒトでの限られた証拠、実験動物での十分な証拠)アクリルアミド、赤肉、シリコンカーバイド、紫外線、クレオソート油、ディーゼルエンジン排気ガス、熱い飲料(65℃以上)、美理容業、日焼けランプ、交代制勤務
グループ2Bヒトに対して発癌性であるかも (possibly) 知れない(ヒトでの限られた証拠、実験動物での十分より少ない証拠)コーヒー酸[13]カーボンブラック(トナー)、サイカシンパラジクロロベンゼンナフタレン(防虫剤)、鉛、低周波磁場、ホルモン補充療法、オキサゼパム、フェノバルビタール(睡眠薬)、二酸化チタン(顔料)、カラギーナン(添加物)、ガソリンエンジン排気ガス、漬物、大工・ドライクリーニング・印刷・服飾製造業
グループ3ヒトに対する発癌性については分類できない(ヒトでの不適切な証拠、実験動物での限られた証拠)ABS樹脂パラアミノ安息香酸(日焼け止め)、天然のカラギーナン、水道水、石炭粉塵、低周波電場静電場静磁場[14]、蛍光灯、フッ化物添加水道水、塩酸、過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム、イソプロパノール(消毒薬)、マラチオン(農薬)、水銀、オルトフェニルフェノール(ポストハーベスト)、PEPMMAPPPSPTFEPVC、プラゼパム、PCNB(農薬)、岩綿、サッカリン、SO2ビタミンK、ゼオライト、アスファルト・コールタール、コーヒー、原油、軽油、重油、ジェット燃料、マテ茶、精製鉱油[12]、溶媒、インキ、茶、ヘアカラー、ガラス・皮革・ペンキ製造・製材・製紙業


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