電磁式カタパルト(でんじしきカタパルト、Electromagnetic Aircraft Launch System、EMALS、イーマルス)とは、アメリカ海軍とイギリス海軍が共同開発した、リニアモーターによって航空母艦から固定翼機を発射するシステムである。電磁カタパルト、電磁力航空機発射システムとも呼ばれる。
従来用いられてきた蒸気カタパルトを更新するものとして開発が進められている。目次 アメリカ海軍の最新鋭空母であるジェラルド・R・フォード級航空母艦に採用された。計画当初ではニミッツ級航空母艦(原子力空母)の最後の第10番艦「ジョージ・H・W・ブッシュ」(USS George H. W. Bush、CVN-77)も電磁式カタパルトを採用する予定であったが、開発が間に合わなかったため、従来のスチーム式カタパルトが搭載された。2017年1月の時点でEMALSの試験は99.5%を完了している[1]。 2017年5月28日、ドナルド・トランプ大統領がタイム誌のインタビューで、1億ドルを超える経費を問題視した[2][3][4][5]。 トランプ大統領のこの批判は、2018年国防白書で重く受けられ、実用化の高い要望と併せて、致命的失敗率が 海軍の要求値に対して9倍以上であるとされた[6]。 また、2013年の故障間隔は、最も寛大な値としては240であった[7]。 2014年1月のレポートによると、「信頼性向上の結果、最新の報告では失敗率の平均致命的故障間隔 Mean Cycles Between Critical Failureは、要求値より5倍高くなっている」とされる。2014年8月、海軍はレイクハースト試験場での3,017回目の試験実施を発表したが、この欠陥の更新については触れられなかった。海軍は、2014年12月までの改修完了を期待している。[8] 試験環境下で、電磁式カタパルトでは、増槽を装備した戦闘機を射出出来ない事が判った。「海軍はこれらの問題に対する改修を行っているが、有人機でのテストは2017年に延期される」とされた[9]。 2017年7月に、空母「ジェラルド・R・フォード」で洋上試験が無事に終了した[10] 2019年5月28日、訪日中のドナルド・トランプ大統領が「以降の空母に採用しない」旨を表明した[11]。 イギリス海軍はクイーン・エリザベス級航空母艦での採用を検討しており[12]、Converteam UK
1 概要
2 利点と欠点
2.1 利点
2.2 欠点
3 各国の状況
3.1 アメリカ
3.2 イギリス
3.3 中国
3.4 ロシア
4 出典
5 参考文献
6 関連項目
7 外部リンク
概要(英語版)によって考案された。アメリカ合衆国特許第1,088,511号
利点と欠点
利点
航空機に与える加速度を、機種・兵装毎に適切にコントロール出来るので無理な荷重を機体にかけない。
効率性が高く長寿命。
蒸気式で必要な蒸気発生装置(ボイラー)・蒸気配管がいらないため、機器配置の制約がより少ない。
欠点
原子力や統合電気推進など消費電力を賄える発電能力を持つ電源が必要。電源が故障した場合、使用できない。
開発費・製造費が高騰しており現状では高コストである。
各国の状況 アメリカのEMALS開発のインフォグラフィック 2010年12月18日に米海軍がレイクハーストの海軍航空システムコマンドにおいて正常に射出されたF/A-18
アメリカ
イギリス
Converteam UKの海軍ディレクターMark Dannatt氏は7月22日にジェーンに対し、現代のリニアモーター、エネルギー貯蔵および制御システムの動作を証明するために、2007年に小規模のEMCATシステムが完成したと語っていた。それ以来、システムの広範なテストが成功裏に完了したばかりでなく、イギリス国防省の要請により、Converteam UKがクイーン・エリザベス級に適したフルサイズの飛行機までシステムを拡張できるようにする作業がさらに進められ、2009年7月20日に締結した高出力電気システムの設計・開発、デモンストレーションに関する650,000ポンドの契約に基づいた作業は2010年7月26日の時点でほぼ完了していた[13]。
その後同年の10月にイギリス政府は、クイーン・エリザベス級に未決定のカタパルトを搭載してF-35Cを購入すると発表し[14]、2011年12月21日にEMALSおよびAARの開発のためのエンジニアリングサポートを受けるためゼネラル・アトミクスと契約を結び、11月26日にDSCAにより公式要請が発表された。この要請の性質と特異性からイギリスが独自の電磁カタパルトを放棄することを決定したことが強く示唆された[15]。しかし2012年5月に搭載予定機だったF-35Cの開発が大幅に遅れ、またコストが当初の見積もりより倍に増加したことから搭載機を当初のF-35Bに戻したことにより[16]、カタパルトの搭載自体が見送られることとなった。 中国は1990年代初めには蒸気カタパルトと電磁カタパルトシステムの開発作業を行っていることをいくつかの外国メディアが指摘している[17]。また、2014年1月には中国が電磁式カタパルトの試験機テスト設備を建造していると発表されている[18]。 2015年9月上旬には黄村基地に電磁カタパルトと蒸気カタパルトと推測されるものの設置が開始された[19][20]。また同年11月に開催された中国国際工業博覧会では中国工程院による電磁式カタパルトの模型が公開された[21]。2016年6月20日に捕捉された画像によると、黄村基地の試験設備で大きな進展が見られたことが示されている。同年10月17日から撮影された写真には、2つのカタパルトの背後にJ-15(おそらくJ-15A)があったかつ後に中国のフォーラムにおいてカタパルト射出対応のJ-15が確認されたことなどから射出試験が行われたことが示唆されている[19][20]。また同月には無人機(「雲影」の可能性が高いと推測される)が電磁カタパルトの上に鎮座しているのも確認されている[22]。
中国