「電気」のその他の用法については「電気 (曖昧さ回避)」をご覧ください。
「伝記」とは異なります。
電気(でんき、英: electricity)は、電荷の移動や相互作用で起こる様々な物理現象の総称。雷、静電気といった日常的な現象の他、電磁場や電磁誘導といった電気工学に応用される現象も含む。雷は最も劇的な電気現象の一つである。
エネルギー源として電気を利用できる範囲は広い。交通機関の動力源、空気調和、照明など、多様な用途がある。商用電源は現代社会のインフラであり、今後も当分の間はその位置に留まると見られている[1]。また、電気工学は電子工学へ発展し、電気通信、コンピュータなどが開発され、広く普及している。 電気に関する現象は古くから研究されてきたが、科学としての進歩が見られるのは17世紀および18世紀になってからである。しかし、電気を実用化できたのはさらに後のことで、産業や日常生活で使われるようになったのは19世紀後半だった。その後急速な電気テクノロジーの発展により、産業や社会が大きく変化することになった。 電気を表す英単語 electricity はギリシア語の ηλεκτρον ([elektron], 琥珀)に由来する。古代ギリシア人が琥珀をこする事により静電気が発生する事を発見した故事によるもので、そこから古典ラテン語で electrum、新ラテン語で ?lectricus(琥珀のような)という言葉が生まれ、そこから electricity が派生した。 一方で漢語の「電気」の「電」は雷の別名であり、いわば「電気」というのは「雷の素」といった意味になる。ベンジャミン・フランクリンによる研究はしばしば「雷の正体が電気である事を発見した」と紹介されるが、この文章は字義的な矛盾を含む事になる。もちろん「電気」という漢語がフランクリンの時代以後に作られたからである。 電気について知識がなかったころにも、電気を発生させる魚類の電気ショックに気づいていた人々がいた。紀元前2750年ごろの古代エジプトの文献にそういった魚を「ナイル川の雷神」とする記述があり、全ての魚の守護神だと記している。そういった魚類についての記述は、千年以上後の古代ギリシア、古代ローマ、イスラムの学者らの文献にもある[2]。大プリニウスやスクリボニウス・ラルグスといった古代の著作家は、デンキナマズやシビレエイによる感電の例をいくつか記しており、それらの電気ショックが導体を伝わることを知っていた[3]。痛風や頭痛などの患者をそういった電気を発する魚に触れさせるという治療が行われたこともある[4]。雷や他の自然界の電気が全て同じものだという発見は中世イスラムという可能性もあり、15世紀のアラビア語辞書で雷を意味する raad という言葉がシビレエイも表すとされていた[5]。バグダッド電池 古代の地中海周辺地域では、琥珀の棒を猫の毛皮でこすると羽根のような軽い物を引き付けるという性質が知られていた。紀元前600年ごろミレトスのタレスは一連の静電気についての記述を残しているが、彼は琥珀をこすって生じる力は磁力だと信じており、磁鉄鉱のような鉱物がこすらなくても発揮する力と同じものだと考えた[6][7]。タレスがそれを磁力だと考えたことは間違っていたが、後に電気と磁気には密接な関連があることが判明している。古代ギリシア人は、琥珀のボタンが髪の毛のような小さい物を引きつけることや、十分に長い間琥珀をこすれば火花をとばせることも知っていた。イラクで1936年に発見された、紀元前250年頃のものとされる、バグダッド電池なるものはガルバニ電池に似ている。バグダッド電池はパルティア人が電気めっきを知っていた証拠とする説もあるが、これを単に金属棒に巻物を巻いて収め地中に埋めた壺(つまり電池ではない)とする説もある[8]。 イタリアの物理学者カルダーノは、『De Subtilitate』(1550年)のなかで[9]、電気による力と磁力とをおそらくは初めて区別した。1600年にイギリスの科学者ウィリアム・ギルバートは、『De Magnete』のなかでカルダーノの業績について詳細に述べ[6]、ギリシア語単語「琥珀」elektron からラテン語単語 electricus を作り出した[10][11]。electricity という英単語の最初の使用は、トーマス・ブラウンの1646年の著作『Pseudodoxia Epidemica ギルバートに続いて、1660年にゲーリケは静電発電機を発明した。ロバート・ボイルは1675年に、電気による牽引と反発は真空中で作用し得ると述べた。スティーヴン・グレイは1729年に、物質を導体と絶縁体とに分類した。デュ・フェは、のちに positive(陽)、negative(陰)と称ばれることになる、電気の2つの型を最初に同定した。大量の電気エネルギーの蓄電器の一種であるライデン瓶は、1745年ライデン大学で、ミュッセンブルークによって発明された。ワトソン (William Watson
歴史詳細は「電磁気学の歴史」および「電気工学の歴史」を参照
概要
語源
古代古代の電気研究者タレス
近世ライデン瓶、Boerhaave博物館、ライデン ⇒[3]
18世紀中ごろ、ベンジャミン・フランクリンは私財を投じて電気の研究を行い、1752年6月、雷を伴う嵐のなか凧を揚げるという実験を行った[13]。この実験で雷が電気であることを示し、それに基づいて避雷針を発明した[14]。フランクリンは陽電気および陰電気の発明の確立者と見なされることが多い。
近代マイケル・ファラデー
1773年、ヘンリー・キャヴェンディッシュは荷電粒子間に働く力が電荷の積に比例し、距離の2乗に反比例することを実験で確認。1785年にシャルル・ド・クーロンがクーロンの法則として定式化した。
1791年、ルイージ・ガルヴァーニは動物電気(生体電気
)の発見を発表。神経細胞から筋肉に信号を伝える媒体が電気であることを示した(ガルヴァーニ電気)[15]。