電気魚
[Wikipedia|▼Menu]
デンキウナギは電気定位のための低電圧の放電と、獲物を捕獲するための高電圧の放電を使い分ける。

電気魚(でんきぎょ)は電場を生成する能力を持つの総称である。ほとんどの電気魚は電場を感じ取る能力も持つ。海水魚淡水魚の双方、硬骨魚類軟骨魚類の双方を含む。

電気魚は発電器官を用いて電場を生成し、獲物の探索、捕食回避、コミュニケーションなどに用いる。放電にはパルス状と正弦波状の2つの型があり、種や機能によって異なる。発電器官は、筋肉または神経の細胞に由来し、強い電場を発生することに特化した発電細胞から構成される。

電気魚は、放電パターンの盗聴を防ぐための複雑な高周波の信号、他の電気魚の放電パターンを模倣したベイツ型擬態、他の個体との放電周波数の干渉を防ぐ混信回避行動(英語版)など多くの特殊な行動を進化させている。
進化詳細は「電気感覚と電気発生(英語版)」を参照

全ての脊椎動物電気によって神経と筋肉を動かす[1]。軟骨魚類などの基盤的な魚類は、電場を検出する感覚器により受動的な電気定位を行う[2]。ナイフフィッシュとモルミルスは、弱い電場を発することによる能動的な電気定位を用いて獲物を探す。また、魚類の中には獲物を麻痺させたり捕食者に反撃したりするのに十分な強度の電気を発する能力を持つものがいる。この中で、海産の硬骨魚であるミシマオコゼのグループのみが電気定位を行わない[3][4]

脊椎動物において電気受容は、共通祖先が有していた祖先形質である[2]。この型の電気受容は、感覚器官であるロレンチーニ器官 (ampullae of Lorenzini) の名を取ってアンプラ型電気受容と呼ばれる。ロレンチーニ器官は機械受容器である側線から進化したもので、軟骨魚類サメエイギンザメ)、ハイギョポリプテルスシーラカンスチョウザメ、水生の有尾目アシナシイモリに存在する。硬骨魚類と四肢動物進化の過程でロレンチーニ器官を失っており、これらのグループにおける電気受容は、ロレンチーニ器官と相同ではない二次的に獲得された別の器官によるものである[2][5]。多くの硬骨魚は発電能力を持たないが、それでも350種程度の電気魚が存在する[6]

発電器官は8回進化しており、各グループは1つのクレードをなす。その内4回では電気ショックを与えるのに十分な発電能力が獲得されている[7][2]。発電器官のほとんどは筋肉組織に由来するが、Apteronotidae(デンキウナギ目)のみは神経組織に由来する発電器官を持つ[8]。ジムナーカスでは尾の筋肉、胴体の筋肉、鰓弓下筋、眼筋が発電器官に組み込まれており、これは遊泳中に電極の位置を安定させるためと考えられる。モルミルス科やデンキウナギ目では尾鰭を退化させているものがおり、これも遊泳中に体が左右に曲がるのを防ぐことで、電気定位に用いる電場を安定させる収斂進化と考えられる。底生魚などの障害物の少ない環境に住む電気魚はあまりこのような特徴を有さず、電気定位能力の収斂進化が発電器官の収斂進化に繋がったことが示唆される[9][10]

能動的な電気定位を行うものを小さい黄色のマーク、電気ショックを生成できるものを大きい赤のマーク系統樹上に示す。発電能力を持たない、単なる受動的な電気受容能力のみを持つ種は表示していない[2][11][10]。.mw-parser-output table.clade{border-spacing:0;margin:0;font-size:100%;line-height:100%;border-collapse:separate;width:auto}.mw-parser-output table.clade table.clade{width:100%}.mw-parser-output table.clade td.clade-label{width:0.7em;padding:0 0.15em;vertical-align:bottom;text-align:center;border-left:1px solid;border-bottom:1px solid;white-space:nowrap}.mw-parser-output table.clade td.clade-fixed-width{overflow:hidden;text-overflow:ellipsis}.mw-parser-output table.clade td.clade-fixed-width:hover{overflow:visible}.mw-parser-output table.clade td.clade-label.first{border-left:none;border-right:none}.mw-parser-output table.clade td.clade-label.reverse{border-left:none;border-right:1px solid}.mw-parser-output table.clade td.clade-slabel{padding:0 0.15em;vertical-align:top;text-align:center;border-left:1px solid;white-space:nowrap}.mw-parser-output table.clade td.clade-slabel:hover{overflow:visible}.mw-parser-output table.clade td.clade-slabel.last{border-left:none;border-right:none}.mw-parser-output table.clade td.clade-slabel.reverse{border-left:none;border-right:1px solid}.mw-parser-output table.clade td.clade-bar{vertical-align:middle;text-align:left;padding:0 0.5em;position:relative}.mw-parser-output table.clade td.clade-bar.reverse{text-align:right;position:relative}.mw-parser-output table.clade td.clade-leaf{border:0;padding:0;text-align:left}.mw-parser-output table.clade td.clade-leafR{border:0;padding:0;text-align:right}.mw-parser-output table.clade td.clade-leaf.reverse{text-align:right}.mw-parser-output table.clade:hover span.linkA{background-color:yellow}.mw-parser-output table.clade:hover span.linkB{background-color:green}

脊椎動物

軟骨魚類

シビレエイ目 (69種)

ガンギエイ目 (<200種)


430 mya
硬骨魚類

アロワナ目

knollenorgan (パルス状放電)

モルミルス科 (<200種)

knollenorgan (正弦波状放電)

ジムナーカス (1種)


110 mya

デンキウナギ目

南米のナイフフィッシュ

(>100種)

デンキウナギ

(3種)


119 mya
アンプラ型受容器
ナマズ目

デンキナマズ

(11種)





電気定位なし

ミシマオコゼ科 Uranoscopidae (50種)






425 mya

ロレンチーニ器官

弱電気魚弱電気魚であるモルミルスは自らが発した電場の小さな変動を電気受容器で感知し、その信号を処理して近くの物体の位置を特定する[12]

弱電気魚の放電電圧は通常1ボルト以下である。これは獲物を麻痺させるには弱すぎるため、皮膚の電気受容器と連携して電気定位を行ったり、他の電気魚と電気的コミュニケーションしたりするために用いられる。主な弱電気魚はアロワナ目(モルミルス科(英語版)とジムナーカス)、デンキウナギ目の2グループに分かれる。両者ともに似た行動と能力を示すものの、これは収斂進化であり電気受容器のタイプも発電器官の場所も異なる[2][11]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:52 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef