電気料金
[Wikipedia|▼Menu]

電気料金(でんきりょうきん)は、電気エネルギーの料金(価格)のことである。
概説

「電気料金」とは、電力(電気エネルギー)に対してつけられている価格であり、国ごとに制度が異なっており、通常、様々な価格帯から構成されている。

同一地域で複数の電力会社が競合するしくみを採用している国では、価格競争が起き、電気料金が低くなる傾向がある。

極東アジアの状況に関して言うと、日本の電気料金は、韓国の2?3倍に当たり、かなり高い。その結果、日本国内の工場が海外に移転してしまう(産業空洞化)、という結果を生んでいる。電気料金が高いと結果として製品価格まで高くなってしまい製品の競争力が下がる。(特に電気を大量に使う生産では)電気料金が安い場所で生産したほうが製造コストの観点から有利であるため、電気料金が高い日本国内を避けて安い場所へ移転させようとすることになるのである。

国営や公営の電力会社の場合、他の公共料金と合算請求する国もあり、韓国電力公社では韓国放送公社の受信料を電気代と合わせて徴収している。
EUおよびユーロ圏の電気料金
概要

ヨーロッパにおける電気料金は、EU連合のユーロスタットが集計・分析し、月ごとに公表している[1][2]。データは、2012年5月に公表された「統計白書アーカイブVol.4―農業、環境、エネルギー、輸送」のように定期的に集計・分析されている[3]

2011年欧州連合(27カ国)平均電気料金は、ユーロスタットの発表によると以下のとおりである。

家庭顧客は17.8 ct/kWh(税金・賦課金・課徴金込)

産業顧客は11.0 ct/kWh(税金・賦課金・課徴金込)

この価格はコストが発生するすべての料金、つまり電力供給価格(発電・送配電)と、課徴金、賦課金、税を含んでいる。つまり顧客に帰属し、免除・返金されない料金であり[3]、個人顧客にとっては、付加価値税を含むすべての課徴金、賦課金、税をさし、企業顧客にとっては付加価値税のみを含む。というのも、これらの支出は、通常はVorsteuerabzug|控除の対象となり返金されることがあるからである。さらにEU諸国では、支払う課徴金・賦課金はドイツとは異なる[3]

ユーロスタットユーロ圏(17カ国)の平均電気料金も算出している。ユーロ圏の価格水準は、EU平均と比べて若干高めである。2011年のユーロ圏の平均電気料金は以下のとおりである。

家庭顧客は19.3 ct/kWh
(税金・賦課金・課徴金込)[1]

産業顧客は、11.8 ct/kWh
(転嫁できない税金・賦課金・課徴金は除く)[2]

2011年ユーロ圏17カ国の電気料金(ct/kWh)
家庭顧客の平均電気料金(税金・賦課金・課徴金込)
出典ユーロスタット[1]産業顧客の平均電気料金(転嫁できない税金・賦課金・課徴金は除く)
出典: ユーロスタット[2]
■付加価値税, ■課徴金, ■再エネ賦課金, ■発電・送配電コスト、事業報酬■課徴金, ■発電・送配電コスト、事業報酬

集計方法と概念

ユーロスタットによると、家庭顧客である私的な消費者は、年間500?5,000kWh/aの電力使用量として記録されている。料金体系の変動幅と年間消費量の違いを組みこむために、調査は5つの世帯区分を行なっている。EUの平均値は、私的領域(2009年基準)における国ごとの電力消費量を手がかりに、統計的な重み関数(英語版)によって算出されている[3]。企業顧客である企業は、年間50万?200万kWh/aの電力使用量で記録されている。調査はEU委員会(2007/394/EG)の決議との関連で調整されている[4]。様々な料金体系と消費量の変動幅は、この領域では7つのグループに区分されている。EU平均の予想値は、家庭顧客と同様に、産業部門でも、国ごとの消費の重み関数によって集計されている。
詳細

家庭顧客の場合、2011年のユーロ圏ではドイツ(25,3 ct/kWh)とキプロス(24,1 ct/kWh)、ベルギー(24,1 ct/kWh)と極めて高いのに対して、ギリシア(12,4 ct/kWh)、エストニア(10,4 ct/kWh)が極めて低く、その価格差はおよそ2倍である。賦課金・課徴金・税金の割合は、ユーロ圏の平均は32%であり、ドイツは約45%、マルタは約5%である[1]

産業顧客の場合、2011年のユーロ圏では、キプロス(24,1 ct/kWh)とイタリア(19,1 ct/kWh)が極めて高いのに対して、フィンランド(9,7 ct/kWh)とエストニア(9,1 ct/kWh)は極めて低く、その価格差はおよそ2倍である。ドイツでは産業顧客の電気料金は、ユーロ圏加盟国のなかでは平均水準に留まっている。賦課金・課徴金・税金の割合(転嫁できない税を除く)は、平均20%であり、ドイツは30%、イタリアは28%、アイルランドは2.6%、マルタは0%である[2]
ドイツにおける電気料金2012年ドイツにおける電気料金の価格構成(BDEW(ドイツ語版), 2012年5月時点)
■発電コスト, ■電線使用料, ■第19条賦課金, ■付加価値税, ■営業ライセンス課徴金, ■電気税, ■再エネ賦課金
電気料金の平均価格

ドイツの家庭用電気料金の平均は、25.7 ct/kWh(2012年5月時点)である。このうち、54.4%が電気供給費用(34.4%が発電、20%が送配電)、21.6%が課徴金(Abgaben)と賦課金(Umlagen)であり、24%が税金である[5]

ドイツの産業用電気料金は、家庭よりも低く設定されている。ドイツ連邦エネルギー・水道事業連盟(ドイツ語版)(Bundesverband der Energie- und Wasserwirtschaft; BDEW)によると、100kW?4,000kWの電力を使用する顧客の電気料金は、2011年時点では、平均13.58 ct/kWhである[5]。電力購買量は大きくても、中電圧レベルに接続する場合には、電線費用は安くなり、付加価値税は控除(詳細は売上税法(ドイツ語版)を参照)されて相殺されることもある。

ヨーロッパの電気料金については、ユーロスタットが、加盟国からの申告と調査に基づいて算出している。それによると、ドイツの家庭用電気料金は、2011年には、平均25.4 ct/kWh(税込)であり、この数は、ドイツ連邦統計庁(ドイツ語版)とBDEW(ドイツ語版)のものとも一致している。またドイツの産業用電気料金は、2011年には、付加価値税および課徴金の負担なしで平均11.3 ct/kWhであると確認している(詳細は#集計方法と概念を参照)。産業用顧客である企業は、年間に50万?200万kWh/aの電力を使用しているとされている[3]
電気料金の内訳
発電費用

電気事業としての電気料金は、欧州エネルギー取引所(ドイツ語版)やライプツィヒの電力取引所(ドイツ語版)のような電力卸売市場で広範囲にわたって決まっている。発電費用には、発電コストやEU排出権取引のコストだけでなく、発電事業者の利益も含まれている。発電価格は、家庭用では平均8.9 ct/kWhである[5]

電気の卸売市場での価格は、(電力市場ではメリットオーダー(ドイツ語版)と呼ばれる)取引メカニズムによって生じる。限界費用の安いもの(原発や褐炭火力発電所)から始まって、限界費用の高いもの(石炭やガス発電)が需要を満たすまで加えられていき、落札された最終的な価格が電気料金となる(Market Clearing Price)。つまり電気料金は、電力需要を満たしたときに最も高かった発電所によって決まる。安い発電所は、実費と市場価格の差異(生産者余剰)で儲けを出すだけでなく、高い発電所を閉めだすことで消費者にも利益になる(消費者余剰)。

欧州エネルギー取引所では、確かにドイツで短期間に取引された電力の1/4が売却されるだけである。しかしながら、そこでの価格は市場外取引での価格を設定する際の参考としても用いられている。スポット市場(Spotmarkt)では、翌日の需要は、コマごとにまとめて(Blockprodukte)、ベース負荷時・ピーク負荷時・1時間ごとの契約によって負荷管理を行いながら取引されている。デリバティブ市場(Terminmarkt)では、(最長数年間の)長期間の供給契約が行われている。
送配電費用

電力の送配電は、送電系統運用者(ドイツ語版)と地域ごとの配電事業者(ドイツ語版)が行なっており、それに必要な報酬は、国の市場規定(ドイツ語版)で定められている。その法的根拠は電力送配電報酬条例(ドイツ語版)である。この法律は、2005年以前の電気事業団体協定(ドイツ語版)に取って代わったものである。その後、2007年11月7日にはインセンティブ調整条例(ドイツ語版)が施行された。

ドイツ連邦ネットワーク庁(Bundesnetzagentur)によると、家庭顧客の電線利用料は、2010年には合計6 ct/kWhとなり、電気料金の25%を占めた。この価格は、2006年以来、20%以上も低下してきている[6]。高い電圧を使用している法人顧客に対しては、電線利用料の割合はもっと安くなっている。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:74 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef