電気抵抗
[Wikipedia|▼Menu]
.mw-parser-output .hatnote{margin:0.5em 0;padding:3px 2em;background-color:transparent;border-bottom:1px solid #a2a9b1;font-size:90%}

この項目では、電流の流れにくさについて説明しています。電気抵抗を得るための電子部品については「抵抗器」をご覧ください。

物理学
ウィキポータル 物理学
執筆依頼加筆依頼
物理学
ウィキプロジェクト 物理学
カテゴリ 物理学

電気抵抗
electrical resistance
量記号R
次元M L 2 T −3 I −2
種類スカラ
SI単位Ω
テンプレートを表示

電気抵抗(でんきていこう、レジスタンス、: electrical resistance)は、電流の流れにくさのことであり、単に抵抗ともいう。電気抵抗の国際単位系 (SI) における単位はオーム(記号:Ω)である。また、その逆数コンダクタンス: electrical conductance)と呼ばれ、電流の流れやすさを表す。コンダクタンスのSIにおける単位はジーメンス(記号: S)である。
概要

超伝導体以外の全ての物質は、電流を流した時に熱が発生し、電気エネルギーの一部が失われる。これは、非常に電気を流しやすい金属であっても例外ではない。導線の電気抵抗は、太いほど小さくなり、長いほど大きくなる。材質の違いも電気抵抗の大きさに影響を与える[1]。一般に、金属は温度が高くなるほどに電気抵抗率が高くなり、半導体は温度が高くなるほどに電気抵抗率が低くなり、電解質イオン濃度が大きく・イオン移動度が大きくなるほど抵抗値が低くなる(電気伝導を参照)。

物体の電気抵抗 R は、それに印加される電圧 V とそこを流れる電流 I の比で表される。 R = V I {\displaystyle R={V \over I}}

多くの物質にとって、与えられた温度での電気抵抗 R は定数である。その物質を流れる電流や電位差(電圧)で抵抗値が変化することはない。そのような材料をオーム性材料 (: Ohmic material) と呼ぶ。オーム性材料でできた物体の一定の抵抗値の定義をオームの法則: Ohm's law)と呼ぶ。

(オームの法則に従わない)非線形の伝導体では、電流や電圧の変化にともなってその比が変化する。そのときのI?V曲線を "chordal resistance" あるいは "static resistance と呼ぶこともある[2][3]
電気抵抗の原因
金属の場合

金属における電気抵抗は、主に伝導電子とフォノンの相互作用によって生じる。金属の温度上昇によって電気抵抗も上昇するのは、温度上昇によってフォノンが増加するためである[4]。ほかに結晶の格子欠陥も電気抵抗の原因の1つだが、純粋な金属ではその影響は無視できる程度である。
絶縁体や半導体の場合

絶縁体や半導体においては、フェルミエネルギーバンドギャップ(禁制帯)に存在する(バンド理論参照)ため、価電子帯と伝導帯が近接していない。そのため、価電子にエネルギーを供給し、伝導帯までポテンシャルを引き上げるためには、金属と比較して大きなエネルギーが必要であり、一連の相互作用において、より多くのエネルギーが熱に変換される。

不純物を加えた半導体では、ドーパント(不純物)の原子を増やすことで、伝導帯に自由電子を供給したり、価電子帯に正孔を生じさせることで電荷担体密度が増大していくため、電気抵抗が小さくなっていく。不純物を大量に含ませた半導体は、電気的に金属に近づいていく。高温になると、熱によって励起された電荷担体が支配的になり、ドーパントの量はあまり関係なくなって、温度上昇に伴って指数関数的に電気抵抗が低下していく。
イオン性液体/電解質の場合

電解液では、電流を担うのは電子や正孔ではなく、イオンである。イオン性液体の電気抵抗率は濃度によって大きく変化する。蒸留水はほぼ不導体だが、塩水は電気伝導性が高い。細胞膜において電流を担うのはイオン化した塩である。細胞膜には特定のイオンを選択的に通す小さな穴(イオンチャネル)があり、それによって細胞膜の電気抵抗が決まる。
導電率と抵抗率

比例定数σ、その場所の電界をE、電流密度を j とすると、 j = σ E {\displaystyle {\boldsymbol {\mathit {j}}}=\sigma {\boldsymbol {\mathit {E}}}}

となる。σは物理定数でこれを導電率(どうでんりつ)[注 1]または電気伝導率(でんきでんどうりつ)[注 2]という。これの逆数.mw-parser-output .frac{white-space:nowrap}.mw-parser-output .frac .num,.mw-parser-output .frac .den{font-size:80%;line-height:0;vertical-align:super}.mw-parser-output .frac .den{vertical-align:sub}.mw-parser-output .sr-only{border:0;clip:rect(0,0,0,0);height:1px;margin:-1px;overflow:hidden;padding:0;position:absolute;width:1px}1⁄σを電気抵抗率(でんきていこうりつ)[注 3]あるいは単に抵抗率(ていこうりつ)[注 4]または比抵抗(ひていこう)[注 5]といい変数の文字として「ρ」を用いることもある。
電気伝導体と抵抗器75Ωの抵抗器

電気抵抗を低く抑え電気エネルギーのロスを最小限にした金属ワイヤーなどの物体を電気伝導体と呼ぶ。電気抵抗が特定の値になるよう設計された電気エネルギーを消費する電子部品を抵抗器と呼ぶ。電気伝導体は金属など伝導性の高い材質を使っており、特に銅とアルミニウムがよく使われる。抵抗器は様々な材料を使って作られており、消費するエネルギーの量(耐えられる電圧や電流の定格)、抵抗値の精度、価格などによって異なる。
直流抵抗

抵抗値は物体の長さが長くなると増大し、断面積が大きくなると低下する。断面積が一様な物体の電気抵抗 R とコンダクタンス G は次のように表される。 R = ρ ℓ A {\displaystyle R=\rho {\frac {\ell }{A}}\,} G = σ A ℓ {\displaystyle G={\frac {\sigma \,A}{\ell }}}

ここで、 ℓ {\displaystyle \ell } はその物体の長さ(単位はメートル)、A は断面積(単位は平方メートル)、ρは材質によって決まる電気抵抗率(単位はオーム・メートル (Ω m))である。電気抵抗率はその材料の電流の流れ難さを示す値である。直流の場合、コンダクタンスは電気抵抗の逆数となる。 G = 1 R {\displaystyle G={\frac {1}{R}}}

実際には導体の断面に対して電流密度は一様とは言えないが、導線の電気抵抗については上の式がよい近似となっている。
交流抵抗「インピーダンス」も参照

導線を交流電流が流れる場合、表皮効果によって実効的断面積が小さくなる。また導体が隣接しているところに交流電流が流れると、近接効果によって直流の場合や導体が単独の場合よりも電気抵抗が高くなる。商用電源では巨大な電流が巨大な導体を流れていることから、これらの効果は大きい[5]

回路に交流電流が流れる場合、それを妨げるのは電気抵抗だけでなく、電流の変化によって生じる電磁場も電流が流れるのを妨げようとする。これをリアクタンスと呼ぶ。リアクタンスと電気抵抗の影響を1つにまとめたのがインピーダンスである。
抵抗値の測定詳細は「絶縁抵抗計」を参照

電気抵抗を測定する装置を絶縁抵抗計と呼ぶ。単純なものでは測定のためのリード線の電気抵抗が無視できなくなるため、低い電気抵抗を正確に測定できない。そのため、より正確に測定するには四端子測定法を用いる。
様々な物質の電気抵抗率詳細は「電気抵抗率の比較」を参照

物質電気抵抗率 (Ω・m)
金属10?8
半導体可変
電解液可変
絶縁体1016


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:45 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef