電気主任技術者
[Wikipedia|▼Menu]
.mw-parser-output .hatnote{margin:0.5em 0;padding:3px 2em;background-color:transparent;border-bottom:1px solid #a2a9b1;font-size:90%}

この項目では、事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する監督について説明しています。日本の建設業において現場の技術水準を確保すべく配置される主任技術者については「主任技術者」を、電気通信設備の工事、維持及び運用に関する事項を監督するために電気通信事業者によって選任されるための資格については「電気通信主任技術者」をご覧ください。

電気主任技術者
英名 Chief Electrical Engineer[1]
Chief Electricity Engineer[2]
略称電験○種、電○
(○にはいずれかの区分が入る)
実施国 日本
資格種類国家資格
分野電気・通信
試験形式筆記・CBT
認定団体経済産業省
認定開始年月日1896年(明治29年)
等級・称号一種 - 三種
根拠法令電気事業法
公式サイトhttps://www.shiken.or.jp/
特記事項実施は電気技術者試験センターが担当
ウィキプロジェクト 資格
ウィキポータル 資格
テンプレートを表示

電気主任技術者(でんきしゅにんぎじゅつしゃ)とは、事業用電気工作物工事維持及び運用に関する保安監督をさせるため、設置者が電気事業法上置かねばならない電気保安のための責任者である。電気主任技術者の指名に際しては、事業場の規模により、第一種、第二種及び第三種電気主任技術者免状の保有者のうちから選出しなければならない。国家試験が「電気主任技術者試験」と称することから電験(でんけん)、あるいは区分呼称をつけて電験○種と略されることがある。
概要

電気事業法43条1項では、「事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物の工事[注 1]、維持及び運用に関する保安の監督をさせるため、経済産業省令で定めるところにより、『主任技術者免状の交付を受けている者』のうちから、『主任技術者』を選任しなければならない。」と定めている。このような保安体制の設置(主任者の選任)義務を課す法律は電気分野以外にも多くあり、そういった体制を維持するために試験等により資格者(予備軍)を確保する仕組みがよく見られる。このような資格は実際に選任されなければ法律的には意味がないにもかかわらず、資格取得自体が技術者としての個人の能力を示すものとして社会的価値を持ち、電気主任技術者免状の場合にはいわゆる《電気検定》としての意義を持っている。

自家用電気工作物については、設置者が経済産業大臣の許可を受ければ電気工事士等の資格保有者などを主任技術者として選任することができる(許可選任という、電気事業法43条2項)ほか、7000V以下で受電する需要設備等については保安管理業務の委託契約を外部の電気管理技術者又は電気保安法人と締結し、経済産業大臣又は産業保安監督部長の承認を受けることによって主任技術者を直接に選任しないこともできる(外部委託承認という、電気事業法施行規則52条2項)。

許可選任の例

第一種電気工事士(試験のみ合格の場合を含む)、工業高校電気科認定校に限る)の卒業者等は500kW未満の受電設備に限定。

第二種電気工事士等の場合は100kW未満の受電設備に限定。


電気主任技術者制度
沿革

1896年(明治29年)

電気事業取締規則(明治29年5月9日逓信令第5号)により初めて主任技術者の制度が取り入れられた。当時の主任技術者は現在のような試験により選出されるものではなく、学識経験のある人物が選出されていた。


1911年(明治44年)

電気事業主任技術者資格検定規則(明治44年9月5日逓信省令第27号)が制定され、明治44年10月1日の旧電気事業法(明治44年法律第55号)の施行により、初めて資格検定による電気事業主任技術者の制度が始まった。この規則では制度そのものはその大部分が現在の試験制度と似たようなものとなっていたが、試験科目等は現在とかなり異なっていた。しかしこの制度により学歴のない技術者にも主任技術者になる機会が生まれた。


1965年(昭和40年)

新電気事業法(昭和39年法律第170号)が昭和40年7月1日に施行され、現行の電気主任技術者制度が始まった。当時は法54条に資格の根拠条文が置かれていた。同法附則により、旧法の電気事業主任技術者は、新法の電気主任技術者とみなされた。


1995年(平成7年)

電気事業法の大改正が平成7年12月1日に施行され、資格の根拠条文が法44条となった。


制度の役割

電気主任技術者(を置く、という)制度には、電気の安定供給や保安の確保という目的で、明治時代その制度発足に当たり、電気技術者の地位の安定化という狙いがあった。当初、学識・学歴経験者(認定取得)のみとしていた資格取得要件は、現在、国家試験という形式で誰にでも開かれている。国家試験は誰でも受験でき、学歴や実務経験を必要としない。

電気事業法による電気工作物の保安規制は、昭和39年の法制定以来、累次の改正が行われてきた。平成7年には、技術進歩による安全実態の向上等を踏まえ、自己責任原則を重視した安全規制の合理化等を基本方針とした規制の見直しを行い、さらに平成11年には、官民の役割分担を見直した合理的な電力安全規制システムの構築を目指した改正が行われた。その考え方は、「設置者等が自らの責任に基づく保安確保への取組を主体的に行うこと」、「国の役割はルールの策定とその遵守状況の監視、事後規制の機動的・効果的な発動に重点をおいたものとすること」等とされ、このような自己責任・自主保安を原則とする枠組みの中核として、電気主任技術者の果たすべき役割が、より重要になっているところである[3]。近年ではメガソーラー電気自動車の充電スタンド等、資格者が必要な設備が微増傾向にあり需要は多い[4][5]が、受験者数は横ばいであるため、人口減少による自然減と工業高校からインフラ系に進む者の減少により資格者が減少しており[3]、2045年には需要が多い第三種が4000人ほど不足するという予測がある[6]。第一種と第二種は試験の難易度から資格者が少なく、人材確保が難しいという[7]。このため2022年から第三種の試験を年2回とした他、電気保安業界でもこれまで採用されにくかった実務経験が無い有資格者の採用などに動いている[6]。2023年時点では人手不足が深刻化しており、関東電気保安協会では対策として管理職になっている技術者を現場に派遣しているが、新規の依頼を断っている状態である[3]

電気設備を設けている事業主は、工事・保守や運用などの保安の監督者として、電気主任技術者選任が法令で義務づけられている。前述のように外部委託も可能であるが、個人事業者である電気管理技術者となるには電気主任技術者免状が必須であり、電気保安法人に雇用される実務者には資格が求められているなど、結局は必要となる資格である。また外部委託ができる施設にも制約がある。
電気主任技術者の役割と業務
役割

電気主任技術者は保安規程に基づき事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する監督を行う。

ただし水力発電設備(ダム等)についてはダム水路主任技術者の、火力発電設備及び原子力発電の設備(ボイラ、タービン、原子炉等)並びに燃料電池設備の改質器で最高使用圧力が98kPa以上のものについてはボイラー・タービン主任技術者の監督範囲となり、電気主任技術者の監督範囲からは外れる。

電気事業法・第二款の「自主的な保安」により事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安を確保するため、経済産業省令で定めるところにより、保安を一体的に確保することが必要な事業用電気工作物の組織ごとに保安規程を定めるとなっており、経済産業大臣に届け出なければならない。又、法42条4項により事業用電気工作物を設置する者及びその従業者は、保安規程を守らなければならないとされている。
業務

保安規程には主任技術者の義務が明確に記載され、選任された主任技術者は経済産業省に届出た保安規程の内容に添い、業務を遂行する事となる。

主な業務は以下のようなものがある。

法令に基づいて、所管官庁に提出する書類の内容が、電気工作物に係る保安に関係ある場合に参画すること。

所管官庁が法令に基づいて行う検査・審査についての立会い。

電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督の業務を総括するものとする。

主任技術者は法令及びこの規程を遵守し、電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督の業務を誠実に行う。

法定自主検査(使用前自主検査、溶接自主検査、定期自主検査)において、検査の指導・監督を行う。

電気工作物の工事、維持又は運用に従事する者に対し、電気工作物の保安に関し必要な知識及び技能の教育を行う。

電気工作物の工事、維持又は運用に従事する者に対し、災害その他電気事故が発生した時の措置について年一回以上実地指導訓練を行う。

電気工作物の設置、改造等の工事計画を立案するにあたっては、意見を求められた場合に答えること。

電気工作物に関する工事の実施に対する監督業務。

電気工作物に関する工事が完成した場合について、主任技術者においてこれを検査し、保安上支障ない事を確認する。

工事の実施に当たっては、その保安を確保するため別に定める作業心得によって行われなければならない。

法令に基づく法定自主検査に関しての監督業務。

法令に基づく使用前自主検査に関しての監督業務。

電気工作物の保安を確保するための巡視、点検及び測定は別表に定める巡視点検測定。

電気工作物の保守業務の指導監督を行う。

非常災害発生時において電気工作物に関する保安を確保するための指導監督を行う。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:50 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef