電機子チョッパ制御
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国鉄201系電車

電機子チョッパ制御(でんきしチョッパせいぎょ)とは、鉄道車両において、直流電動機制御を行う方式の一つで、直流電圧を高速度でスイッチングして切り刻む(チョップする)「チョッパ回路」を主回路主電動機電機子回路)に接続して電圧制御を行うもので、主回路チョッパ制御といわれることもある。単にチョッパ制御、もしくはサイリスタチョッパ制御というと、通常この方式をいう場合が多い。チョッパ回路、採用車両についてはチョッパ制御の項を参照のこと。なお、電機子電流界磁電流を独立して制御する方式を、「高周波分巻チョッパ制御」(4象限チョッパ制御)と区別する場合もある。本項ではそれについても解説する。
目次

1 特徴

2 歴史

3 高周波分巻チョッパ制御

3.1 特徴と制御

3.2 実用化と改良

3.2.1 02系のチョッパ装置

3.2.2 03系・05系のチョッパ装置



4 脚注

5 高周波分巻チョッパについての参考文献

6 関連項目

特徴

東京地下鉄6000系(第25編成)の走行音
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本方式には以下のような特徴がある。
回生ブレーキの実現
中速域から低速域まで安定した回生ブレーキが使用可能であり、エネルギー消費量を減少できるほか、発電ブレーキ抵抗器を搭載しないですむため、車両の軽量化が可能となる。回路が昇圧チョッパを構成するため高速側では使用が限定され、電流を絞って回生電圧を下げるか、直列に抵抗器を挿入して電圧降下を利用する手法が取られる[1]
粘着性能の向上
抵抗制御系の制御方法とは違い段階のない無段階制御が可能であるため、粘着性能を向上させることが可能である。よって、同一加速性能であれば、動力車比率(MT比)を低下させることが可能である。
保守作業の容易化
半導体素子を使った制御方式であるので、抵抗制御に用いられる在来型制御器のような機械的な摺動部や接点が無い。よって保守作業の手間を容易にすることが可能である。
力行時のエネルギー損失の低減
抵抗制御の場合特に起動時に電力損失を発生させるが、本方式では電力損失を低減することが可能である(従って、起動頻度が少なくなる優等列車運用では相対的にその利点が小さくなる)。
装置が高価
これは本方式における最大の欠点である。本方式が多用された1970年代前半から1980年代後半の段階では、鉄道車両のような大きな電力を制御するための半導体機器が未発達な状態であり、価格も高価であった。
走行音
加速・減速時には一定の周波数で「プー」という特徴的な音が鳴る。これは高速で電源を入切するためである。例えば、A4、「ラ」の音が鳴っている車両では、約440Hzで電源直流電圧を細かく入切していることとなる。
歴史

1963年にドイツのジーメンス社により世界初のチョッパ制御を搭載した蓄電池機関車が、1965年に架線式のチョッパ制御機関車がそれぞれ完成した。

1969年に日本に先がげてイタリアのミラノ地下鉄で力行のみのチョッパ制御車が完成。1972年には日本の営団6000系に遅れる事3年、フランス・パリ地下鉄で海外初の回生ブレーキ付きチョッパ制御車が運行を開始した[2]

この制御装置は、扱う出力の大きさに対して発熱が少ないことから、地下トンネル内での車両抵抗器から出る排熱による温度上昇に頭を悩ませていた日本では、帝都高速度交通営団(営団地下鉄、現在の東京地下鉄)が1960年代から積極的に試験を行っていた。1965年(昭和40年)9月に荻窪線分岐線(現・丸ノ内線方南町支線)において三菱電機製の機器を2000形2121の床上に搭載して直流600Vにおいて試験が実施され、これが日本で初の実車試験とされている。その後は1966年(昭和41年)4月から5月にかけて日比谷線において3000系3035を使用して三菱電機ならびに日立製作所製の機器を使用して直流1,500V下において試験が実施された。この頃には阪神電気鉄道(阪神)、日本国有鉄道(国鉄)、都営地下鉄でも試験が実施されている。 日本で初めて営業運転用に用いた阪神電気鉄道の7001・7101形電車。回生ブレーキは搭載されていない。

この制御装置を日本で初めて営業運転用に用いたのは阪神の7001・7101形(1970年)であった。しかし回生ブレーキを搭載しておらず、力行専用のチョッパ装置であった。これは阪神が主回路の無接点化による省メンテナンス性を目的としてこの装置を採用したためである。 チョッパ制御方式の回生ブレーキを世界初搭載した営団6000系電車。

一方、本方式の回生ブレーキは、1967年(昭和42年)4月に東洋電機製造が、同社製サイリスタと高速度遮断器を用い、東京都交通局浅草線5000形に85kW直巻電動機4台制御の回生・分巻界磁式チョッパ制御装置を仮設し現車試験を実施し、国内初のチョッパによる回生制御試験に成功した。

世界で最初に回生ブレーキを実用化したのは、営団の6000系電車第1次試作車で、1968年(昭和43年)のことである。導入の主目的は、相次ぐ増発や地下水量の低下などで上昇していたトンネル内の温度に鑑み、抵抗器の発熱を抑制するためであった。

日本初の営業運転された電機子チョッパ車という栄誉こそ阪神7001・7101形に譲ったものの、営団6000系は第1次試作車での充分な試験を経て1971年3月の営団千代田線2期線開業に合わせて量産車の営業運転が開始された。

この後営団は本方式を標準とし、界磁抵抗を廃したAVF(自動可変界磁制御・Automatic Variable Field Control)式チョッパ制御(7000系電車で実用化)、さらに4象限チョッパ(高周波分巻チョッパ)へと改良を加え発展させながら長期間にわたって採用し続けた。 営団8000系電車のAVF式チョッパ制御装置 東武20000系電車のAFE式チョッパ制御装置

その後、オイルショックの洗礼を受けた緊縮経済下において、むしろ高効率の電力回生による省電力化性能が強く希求されるようになり、営団を筆頭とした日本全国の公営地下鉄に続き、当時の国鉄も省エネ電車としての201系電車、併せて前述の6000系同様のトンネル内放熱抑制を狙った常磐緩行線・営団千代田線直通用の203系電車を製造したが、後の205系電車では安価な界磁添加励磁制御に方向転換した。また、一部の大手私鉄でも国鉄と同じく高性能化と省エネの両立を狙って試作車を製造した[3]

しかし高速域からの減速時に発生電圧過大で回生失効が起きやすいことと高価な大容量・高耐圧のスイッチング素子を必要とし車両製作費が高騰したことから、特に高加減速性能を重視し得られる省エネ効果が大きかった阪神電気鉄道の「ジェットカー5131形・5331形電車、および千代田線同様に直通地下鉄線区における放熱抑止と高効率を狙った東武鉄道9000系電車20000系電車複巻電動機を使用したAFE(自動界磁励磁制御、Automatic Field Excite Control)式主回路チョッパ制御[4])のほかは本格導入に至らず、安価に回生ブレーキが使用できる(力行のみ抵抗制御の)界磁チョッパ制御を採用する場合が多かった。


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