電柱
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市街地の電柱(遠隔制御開閉器・三相二回線)山間部の電柱。6600 V高圧配電線の上に33,000 V送電線を架けている。

電柱(でんちゅう)とは、空中に張った電線(つまり架線)を支えるための柱[1]。又は、そのために使われるコンクリート柱などの部材そのものを示す。
概要
電柱の役割

電柱の主たる設置目的、役割、機能は次のようなものである。

送電線・配電線の支持(およびそれらによる電力の供給)

通信線路の支持(現代ではたとえば電話線光ケーブルケーブルテレビ用ケーブル等の支持。)

他にも次のような役割を兼ねている場合がある。

街路灯の設置

交通信号機の設置

交通標識の設置

無線携帯電話PHS中継局基地局の設置

避雷針

路面電車電化された鉄道架線架空電車線の支持

電柱広告の設置

ただし、電線と共に景観に及ぼす影響が大きく、電線類地中化によりパリロンドンなど欧米の都市部では電柱はほぼ見られなくなっており[2]、日本でも首都圏などの中心市街地や、歴史地区美観地区では撤去作業が進んでいる。また、豪雪地帯では大量の着雪が問題となり、高所作業車を使うことが多いものの、1本ごとの人力での除雪や、周囲の道路交通の規制も必要となる。その一方、配線の拡張・増設や撤去、災害時の復旧などが埋設式に比べて簡単で、コストも低い。
種類、分類

電柱には電力会社送電配電を目的に設置する電柱(でんちゅう)もしくは電力柱(でんりょくちゅう)、通信会社通信用ケーブルを支持することを目的に設置する電柱(でんちゅう)もしくは電話柱(でんわちゅう)または電信柱(でんしんちゅう/でんしんばしら)、トロリーバスを含む電気鉄道において架線を張る(吊る)ための架線柱などがある。製で状のものは鉄塔と呼ばれる[3]

電柱は照明柱(街灯)や信号柱などとともにユーティリティポールとしてまとめられることがある[4]。共用のものは共用柱(きょうようちゅう)あるいは共架柱(きょうがちゅう)とも言う。
電柱の構成
電力供給用の電柱の付属設備

電力供給を行う電柱には、以下のような機器が取り付けられる。

電線

柱上変圧器

開閉器

がいし

避雷器

カットアウト(異常電流を遮断する機器で、ブレーカーとも呼ばれる。ヒューズが用いられることが多い)

接続箱

腕金(うでがね)

自在バンド(電柱本体に巻きつけ、支線などを接続する)

架空地線

接地線(アース線)

その他の装柱

電柱設置の力学、端末の技術
力学詳細は「カテナリー曲線」を参照

電柱の強度や設置距離、様態についてはいくつかの数学理論や多くの材料工学による研究が提供されているが、経験学によるところも多く、様々な災害事象において充分な強度を保持しつつ経済性を維持することはなかなか困難な課題である。電力柱の場合、トランスだけでも100kgを優に超え、300kg-600kgになることもある。また電線そのものの自重、強風による風圧や振動により増幅された破壊圧などが電柱にダメージを与える。このほか立地点の地盤の強弱や、架線先の建物が震災などにより倒壊する際に引きずられ倒伏することなどがある。カラスの営巣も、電柱上部の設備に被害を与える可能性がある[5]

材料力学の観点では以下の公式が知られている。電線の単位長さ重量をw(N/m)、電柱間距離をB(m)、最低点の張力をT(N)、中央のたるみをH(m)としたとき、

H = w × B 2 8 × T {\displaystyle H={w\times B^{2} \over 8\times T}}

この際の電線の長さをS(m)とすれば S = B + 8 × H 2 3 × B {\displaystyle S=B+{8\times H^{2} \over 3\times B}}
端末の技術

電線ケーブルの端末(たんまつ。つまり「はし」、終わりのこと)となる電柱やカーブ区間の電柱には電柱が電線ケーブルの張力で倒れないように、支線(力のかかる方向の反対側の地面にアンカーと呼ばれる金具を埋め、そこから斜めあるいはアームを介して垂直にワイヤで引っ張る)又は支柱(力のかかる方向に斜めに柱を入れて支える)が設置されている。また、支線や支柱が設置しにくい場合は支線柱(力のかかる方向の反対側の土地にアンカーの代わりに柱を立てて、その柱の中ほどからワイヤで引っ張る)が設置されている。
欧米における電柱様々な電柱(カナダオタワ
歴史

電信の商業化に最初に成功したのはイギリスのウィリアム・フォザーギル・クック(英語版)であるとされる。クックは1837年5月にチャールズ・ホイートストンと共に警報機としての電信機の特許を取得、このさい電柱からセラミック絶縁体によって電線を吊り下げるシステムも発明し特許を取得している[6]。1837年7月25日にはロンドンユーストン - カムデン・タウン間での実演に成功し[7]、そのシステムは1839年4月9日にパディントン駅からウェスト・ドレイトンまでの間、約21kmにわたってグレート・ウェスタン鉄道の線路を利用して敷設された[8]。もっともこのさいの電柱はタールで処理されたものであり耐久性が7年ほどしかなく、後に防腐剤としてクレオソートあるいは硫酸銅で処理されるようになった[6]

アメリカ合衆国では1844年にメリーランド州ボルチモアワシントンDC間の40マイルに電信回線が敷設された。これはサミュエル・モールスによりなされ、アメリカ合衆国議会が3万ドルをモールスに与えることで実施された。このケーブルは当初はで被覆されたものを7マイル分だけ地中に敷設してみたものの通信不良であり、鉛被覆を除いて電柱架設することで成功した。この際、ワシントンニュースペーパー紙に1844年2月7日、700本の製の柱の買い付け公告が掲載された。これらの一部はクレオソートによる防腐加工が施され、80年後にもまだ供用されていた[9]
欧米での電線地中化・無電柱化

電柱の存在は欧米の都市部では一般的ではない。パリロンドンでは電線の地中化がほぼ100 %となっており、完了している[10][2]。また、ニューヨークでは約70 %が地中化されている[2]

また、コストのかかる無電柱化を無理にせず、通り沿いではなく建物の裏側に電柱を配することで、道路、歩道、頭上空間を狭めることなく、同時に景観を守る方法もある。


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