電子オルガン
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ロジャース社の電子オルガン

電子オルガン(でんしオルガン、: Electronic organ)は、電子楽器の一種である。鍵盤を操作し、電子回路から発生する信号でスピーカーを鳴らして演奏する。
経緯

その開発のアイデアの原点は、パイプオルガン、シアターオルガン(英語版)に由来している。電子オルガンは、コンボタイプ、チャーチモデル、ホームオルガンなど演奏される音楽や用途によって分類されている。電子楽器として一段型のシンセサイザーやポータブルキーボードデジタルピアノへの需要が高まる現在でも、多段鍵盤を持ちペダル鍵盤を有する電子オルガンは、需要があり楽器としての一定の評価を得ている。熱心な愛好家も少なからず存在している。

オルガンは元々教会の礼拝用パイプ・オルガンとして発展したが、大型のものは数千本のパイプを投入するため、製作のコストが膨大であり搬送が困難である。この代替楽器として、いわゆる「足踏み式オルガン[注釈 1]」、「電動式ハーモニウム」が登場した。足踏み式オルガンは人間の足でポンプを動かして発音用のリードに空気を送る構造になっているが、電動機械の発展に伴い、空気をモーターで送る「電動式オルガン[注釈 1]」が開発された。その後、より大音量で多彩な音色発音自体を電気的あるいは電子的に行う楽器の開発がなされ、「電子オルガン」が登場した。

電子オルガンは当初、パイプオルガンやシアターオルガンの形式を引用する形で登場したが、現在では機能や演奏技法、あるいは用途などの点で、独自の進歩を遂げた。ただしその一方で、パイプオルガンの用途を継承する機種も市場規模は小さいものの現在も存続している。

なお「『電子オルガン』と『電気オルガン』は構造自体が異なる」という見解も、ヤマハがチャーチオルガンを作っていた昭和期に、かつてはあった。しかし現在では音源方式が多様化しており、昔ながらの「単純な二分法」は、新しい音源に適した新しい分類方法と必ずしも整合しない。
歴史.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{display:flex;flex-direction:column}.mw-parser-output .tmulti .trow{display:flex;flex-direction:row;clear:left;flex-wrap:wrap;width:100%;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{margin:1px;float:left}.mw-parser-output .tmulti .theader{clear:both;font-weight:bold;text-align:center;align-self:center;background-color:transparent;width:100%}.mw-parser-output .tmulti .thumbcaption{background-color:transparent}.mw-parser-output .tmulti .text-align-left{text-align:left}.mw-parser-output .tmulti .text-align-right{text-align:right}.mw-parser-output .tmulti .text-align-center{text-align:center}@media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{width:100%!important;box-sizing:border-box;max-width:none!important;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow{justify-content:center}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{float:none!important;max-width:100%!important;box-sizing:border-box;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow>.thumbcaption{text-align:center}}光学式オルガンの光ディスク 光学式オルガン
(リヒトゥ・トーン・オーゲル)
日本国外メーカー
光学式オルガン

1924年、旧ソ連の画家ウラジミール・ロッシーネ (Vladimir Rossine) は自ら開発した「Optophonic Piano」を個展やイベントで実演した。これはパターンを書いたガラス円盤に光を当てて発振音を得る方式の最初の楽器であり[1][注釈 2]、以降、この 「パターン印刷/走査」方式 を踏襲した電子楽器の開発が進んでいった。

1935年ドイツの楽器メーカーM. ヴェルテ&ゼーネ(ドイツ語版)のエトヴィン・ヴェルテ (Edwin Welte) は、「リヒトゥ・トーン・オーゲル(ドイツ語版)」というサンプリング方式の光学式オルガンを開発した。この製品は、前年登場し好調な売れ行きを示したアメリカ製ハモンドオルガンに対し、ドイツ製ライバル機としてドイツ国内の期待を集めたが、結局、現在一台も残っていない[2][注釈 3]

1936年アメリカの A.レスティ (A. Lesti) と F.サミス (F. Sammis) は「シンギング・キーボード」(Singing Keyboard) を開発した。この楽器は35 mmフィルムに音を記録、電子回路の速度制御で音程を奏でる事ができ、現在のサンプラーの祖先にあたる。

これ以降も同方式の開発は続いたが、この方式で成功した製品は知られていない[注釈 4]。同時期には、他の方式も並行して開発が進められ、その中の幾つかは商業的成功を収めた。トーンホイール
トーンホイール・オルガン

1934年、アメリカのローレンス・ハモンドはハモンドオルガンを開発した。この楽器は「トーンホイール」と呼ばれる、一種の鉄製歯車(歯が波形に相等)を回転させる方式を採用した[3][注釈 5][4][注釈 6]
真空管 電子オルガン真空管Hammond Novachordボールドウィン電子オルガン

1937年、ハモンドは真空管でオーケストラバンドサウンドを再現できる電子鍵盤楽器「ノバコード」(Novachord) を開発、1939年発売した[5][6][注釈 7]。 同機は電子発振器と分周回路、フィルターを採用し、計169本の真空管で構成されており、後の電子オルガンやシンセサイザーの先駆けとなった。

1938年、アレン(英語版)も同様な方式を使った「電子オルガン」を開発。

同年、ハモンドは自動演奏装置を搭載した自動オルガン (Aeolian Hammnd BA) を開発。

1946年、アメリカの老舗ピアノメーカー、ボールドウィンが電子オルガンを発売(真空管数37本)[7][注釈 8]

これは1941年Winston E. Knock[7]が開発後、戦争で発売延期となっていた製品。元をたどると1936年頃ドイツでOscar Vierlingと共に開発・試作したネオン管発振式周波数分周オルガンKock Vierling organ[8]の系譜を継ぐ製品で、使用真空管数が極めて少ない点が大きな特徴となっている。


1947年、アメリカの老舗オルガンメーカー、ウーリッツァー(英語版)が静電ピックアップ式リードオルガンを生産開始。

これはBenjamin F. Miessnerの特許に基づき1934年Frederick Albert Hoschkeが開発・製造したOrgatronを、彼の死後1936年以降エヴェレット・ピアノ・カンパニーが製造していたものを、1946年ウーリッツァーが特許取得し生産した製品[9][10][8]。なおウーリッツァーは1950年代末にトランジスタ式電子オルガンに移行し、本方式製品の販売は1960年代初頭に終了した。


1951年頃、同じく老舗オルガンメーカー、エスティ (Estey) が電子オルガンを発売。

これは1951年ハラルト・ボーデが開発したBode Organを原型とする製品。ボーデはこの開発の成功を期にアメリカに移住し、同社チーフエンジニア(後に副社長)に就任、1961年AES(英語版)論文でトランジスタ式モジュラー・シンセサイザーを提案して[11]、新しいシンセサイザー時代を切り拓いた[12]

これ以降、様々なメーカーが電子オルガンを開発・発売していった[13]
ハイブリッド・パイプオルガン

教会用パイプオルガンに電子技術を後付けする「ハイブリッド・パイプオルガン」[注釈 9]は1930年代に登場した。

1934年フランスのアビィ・プジェ (Abbe Pujet) がバイプ・オルガンに電子技術を加えた「ラジオ・シンセティック・オルガン」(electroacoustic Orgue Radiosynthetique)[14]を制作しNotre-Dame du Liban de Paris[15]に設置[注釈 10]


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