電動機
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ブラシ付きDC電気モーターの動作を示すアニメーション。

電動機(でんどうき、: Electric motor)とは、電気エネルギーを力学的エネルギーに変換する電力機器原動機の総称。モーター、電気モーターとも呼ばれる[注 1]

一般に、磁場磁界)と電流の相互作用(ローレンツ力)による力を利用して回転運動を出力するものが多いが、直線運動を得るリニアモーターや磁場を用いず超音波振動を利用する超音波モータなども実用化されている。静電気力を利用した静電モーターも古くから知られている。

なお、本来、「モータ(ー)」("moter")という言葉は「動力」を意味し、特に電動機に限定した用語ではない。それゆえ、何らかの動力の役割を果たす装置は、モーターと形容されることもよくある(ロケットモーターなど)。

以下では、電磁力により回転力を生み出す一般的な電動機を中心に説明し、それ以外のリニアモーター超音波モータは末尾で簡単に説明する。

今日では、電気モーターは電気消費量の半分以上を占めている。
電動機の構成.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{display:flex;flex-direction:column}.mw-parser-output .tmulti .trow{display:flex;flex-direction:row;clear:left;flex-wrap:wrap;width:100%;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{margin:1px;float:left}.mw-parser-output .tmulti .theader{clear:both;font-weight:bold;text-align:center;align-self:center;background-color:transparent;width:100%}.mw-parser-output .tmulti .thumbcaption{background-color:transparent}.mw-parser-output .tmulti .text-align-left{text-align:left}.mw-parser-output .tmulti .text-align-right{text-align:right}.mw-parser-output .tmulti .text-align-center{text-align:center}@media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{width:100%!important;box-sizing:border-box;max-width:none!important;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow{justify-content:center}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{float:none!important;max-width:100%!important;box-sizing:border-box;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow>.thumbcaption{text-align:center}}電動機工業用交流電動機の例。このようなモーターはポンプベルトコンベアに用いられる。モーターの内部

回転する電動機は、軸を持ち回転する回転子(ロータ: Rotor)と、回転子と相互作用して回転モーメントを発生させる固定子(ステータ: Stator)、回転子の回転を外部に伝える回転、回転軸を支える軸受、損失により発生したを冷却する冷却装置などから構成される。

回転子と固定子の磁界を発生させる部分を界磁という。ローターを囲むように配置した電磁石や磁界を導く強磁性体の鉄心に電線を巻いたものや永久磁石が用いられる。

整流子電動機 (Brush Motor)や同期電動機で、界磁と相互作用させトルクを得るための磁界を発生させるものを電機子という。電線に電流が流れると、界磁の磁界によりローレンツ力がはたらきローターを回転させる。

負荷機器と接続するカップリング・回転数を下げて目的のトルクを得るための減速機などが付属装置として接続される。

整流子電動機は、整流子ブラシによって電機子に流れる電流をきりかえ回転方向を保つことで連続的使用を可能にしている。
回転子

固定子の磁界と回転子内の電流によって力が加わり軸が回転する。ローターに永久磁石を入れ、ステーターに導線を持たせるものもある。ステーターとローターの間には、回転するための隙間(ギャップ)が必要である。ギャップ幅はモーターの電気的特性に大きく影響し、モーターの力率が低くなる主原因となっている。ギャップが大きいと磁化電流が増加し、力率が低下するため、ギャップは狭い方が良いが小さいすぎると、騒音や損失、機械的な問題が発生する場合がある。
固定子

モーターの電磁回路のうちローターを囲む固定部分。強磁性体の鉄心に線を巻いた電磁石や永久磁石であるフィールドマグネットで構成される。磁界が電機子を通過して巻線に力を発生させる。ステーターコアは、互いに絶縁された多数の薄い金属板を積層させたラミネーションと呼ばれる構成されている。積層させているのは、ソリッドコアを使用した場合に生じるエネルギー損失を低減するためである。洗濯機やエアコンなどに使われている「樹脂積層型モーター」は、ステーターを樹脂で完全に包んでおり、樹脂の減衰特性を利用して騒音や振動を低減している。
コイル

積層された軟鉄製の磁性体コアに、電流を流したときに磁極を形成するように巻いた線のことである。

直列磁極型では、回転子と固定子の強磁性体コアに磁極と呼ばれる突起が向き合っており、磁極面の下には電線が巻かれていて、電線に電流が流れると磁界の北極または南極になるようになっている。一方、非平行磁極型(分布磁界型)では、強磁性体のコアには磁極がなく、滑らかな円筒形で、巻線が円周上にスロット状に均等に配置されている。巻き線に流れる交流電流によってコアに磁極が形成され、連続的に回転する。隈取磁極型誘導電動機は磁極の一部に巻き線があり、その磁極の磁場の位相を遅らせる。

モーター内部には棒状や板状の金属(通常は銅やアルミニウム)など、厚みのある金属で構成された導体を入れ、電磁誘導によって駆動させる。
整流子

回転子に電流を供給する回転式電気スイッチのこと。電機子の上に、複数の金属接点で構成された円筒を設置している。カーボンなどの柔らかい2つ以上の導電性「ブラシ」と呼ばれる電気接点が整流子に押し付けられ、回転しながら整流子の連続したセグメントと摺動接触し、回転子に電流を供給する。回転子の巻線は整流子のセグメントに接続されている。コミュテータは半回転(180°)ごとにローターの巻線に流れる電流の方向を周期的に反転させ、ステーターの磁界がローターに与えるトルクが常に同じ方向になるようにしている。この電流の反転がないと、ローターの各巻線にかかるトルクの方向が半回転ごとに反転してしまい、ローターが停止してしまう。整流子は効率が悪く、整流子付きモーターはほとんどがブラシレス直流モーター、永久磁石モーター、誘導モーターに取って代わられている。
動作原理

電動機にはいろいろな種類があるが、電動機は固定子と回転子があって、どちらかが回転変化する磁界を発生して、その磁界の変化によって、駆動力を得るものである。
回転子による分類

整流子電動機以外の、固定子にコイルがあって、コイルに変化する電流を供給することによって、変動する磁界を発生させる電動機について述べると、回転子の種類に分類できる。
永久磁石界磁 (Permanent Magnet Type) : 永久磁石の極を円周方向に配置すれば、固定子の極の移動に伴って、駆動力が発生する。

電磁石界磁 : 回転子に磁界を持たせることは電磁石でも可能であるので、回転子・固定子とも電磁石とする構成である。

透磁率の差 (Variable Reluctance Type) : 磁性体に突起を設けるなどして、磁力線の通り易いところ通りにくいところを設ければ、駆動力が発生する。

アラゴーの円板 : 金属導体をおけば、磁場の変化により、渦電流が発生し、渦電流のつくる磁界との相互作用で、駆動力が発生する。

巻線誘導電動機 : 導体のコイルをおけば、磁場の変化により、コイルに流れる電流が発生し、それによる磁界との相互作用で、駆動力が発生する。

ある方向に連続的に駆動力を発生するために駆動側のコイルを複数設けて、磁気の位相を順番にずらして駆動力を発生させる配置にする。その方法もまた、いろいろな配置のものが実用化されている。

また回転子固定子の内外位置関係でも、インナーローター式・アウターローター式・フラットローター式に分類でき、これをリニアモーターに当て嵌めれば、車上一次式地上(軌道)一次式になる。
界磁や電機子の電流の種類

次に電機子や1次側巻線によって変動する磁界を発生するための電流の種類については次のようなものがある。
三相交流 : 商用の三相交流(120度ずつ位相のずれた正弦波)を3つまたはその倍数の数のコイルに供給することによって、回転する磁界を発生することができる。

単相交流 : コンデンサを使って、位相をずらした、もう1相をつくることが多い。

可変電圧可変周波数制御インバータによる三相交流 : 商用の三相交流は周波数が一定なので、起動や速度を変えるためなどのために用いられる。

直流パルス : 位相のちがうパルス電圧を、別々のコイルに供給する。いわゆるステッピングモーターがこれにあたる。

無整流子電動機 (Brushless DC Motor) は、センサにより回転子位置を検出し、それによって直流電流の極性を切り替えるものである。

直流電動機、交流電動機の区分別は電動機の構造の区分でなく、使用法の区分と考えることができ、どちらでも回る電動機もありうる。
電動機の分類

整流子電動機

永久磁石界磁形整流子電動機

電磁石界磁形整流子電動機

直巻整流子電動機

分巻整流子電動機

複巻整流子電動機


交流整流子電動機


誘導電動機

三相誘導電動機

かご形三相誘導電動機

巻線形三相誘導電動機


単相誘導電動機


同期電動機

永久磁石同期電動機

無整流子電動機


ヒステリシス同期電動機

電磁石同期電動機

リラクタンスモータ


ステッピングモーター

その他の分類

交流電動機 - 交流を入力とする電動機

誘導電動機

三相誘導電動機

かご形三相誘導電動機

巻線形三相誘導電動機


単相誘導電動機


同期電動機

永久磁石同期電動機

ヒステリシス同期電動機

電磁石同期電動機


交流整流子電動機


直流電動機 - 直流を入力とする電動機

直流整流子電動機

永久磁石界磁形整流子電動機

電磁石界磁形整流子電動機

直巻整流子電動機

分巻整流子電動機

複巻整流子電動機



無整流子電動機

ステッピングモーター :パルス電力


高効率電動機 - 高効率電動機の規格に適合したものである。普通型電動機より損失が少ない。

超伝導電動機 - 界磁の励磁に超伝導を使用する電動機

電動機の仕様

出力

回転数

極数

電源の種類

周波数

電圧

電流


絶縁体の耐熱クラス

絶縁階級

電気機械器具の外郭による保護等級

電動機の損失

電動機の損失は、入力電力と出力仕事の差として定義される。

全損失

固定損

鉄損 : ヒステリシス損・渦電流損

機械損 : 軸受・冷却装置の摩擦損・風損


負荷損 : 負荷の変動に比例して発生する損失

抵抗損 (銅損) : 電気抵抗のある電気伝導体に流れる電流によるジュール損

一次抵抗損 : 固定子巻線によるもの

二次抵抗損 : 回転子巻線によるもの


漂遊負荷損 : 抵抗損以外の負荷損



特殊な電動機

電動機の多くは電気によって磁界の変化を作り出し、その磁界の変化によって回転力を生み出すものが一般的であるが、以下のようにこれ以外の原理・構造を持つ特殊な電動機がある。
リニアモーター

リニアモーターとは、回転式の電動モーターの固定子に相当する一直線に長く伸びた部分の上に、回転子に相当する部分を置いて、磁界の変化によって直線運動を得るものである。リニア誘導モータ(LIM)、リニア同期モータ(LSM)、リニア直流モータ(LDM)、リニアステッピングモータ、リニア圧電モータ、リニア静電モータ等がある。
振動モーター
超音波振動モーター
超音波モーターは振動体の変形による細かな位置変化を摩擦によって回転運動や直線運動に変える。ローレンツ力を使用する従来のモータと比較して効率が低い。圧電素子による圧電現象を利用しているものは、圧電モータと呼ばれることもある。カメラのフォーカス合わせのほか、ハイレゾリューションオーディオ向けイヤホンの超音波帯域を再生するスピーカードライバーなどに利用されている。
振動モーター
振動モーターは携帯電話などでの着信を振動で知らせる目的で開発されたものがある。小型のものでは、回転子の重心が偏って作られ回転子自身が振動を作り出す重りとなっているものがある。
歴史ファラデーの電磁実験(1821年ごろ)[1]イェドリクの "lightning-magnetic self-rotor"(1827年、Museum of Applied Arts, ブダペスト)
モーター誕生の前に

1740年代、スコットランドの修道士アンドリュー・ゴードンとアメリカの実験家ベンジャミン・フランクリンが製作した単純な静電デバイスが最初の電気モーターであった。現代の電磁モーターの前には、静電気の力で作動するモーター(静電モーター)の実験が行われていた。

1771年、ヘンリー・キャベンディッシュがその理論的原理を発見するも発表されず、1785年、クーロンが独自に発見し発表したため、クーロンの法則と呼ばれる。


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