電位依存性カルシウムチャネル
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Two-pore channel
識別子
略号TPC
Pfam
PF08473
OPM superfamily8
OPM protein6c96
Membranome ⇒214

利用可能な蛋白質構造:
Pfamstructures
PDBRCSB PDB; ⇒PDBe; PDBj
PDBsum ⇒structure summary

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電位依存性カルシウムチャネル(でんいいぞんせいカルシウムチャネル、: voltage-gated calcium channel(VGCC)、voltage-dependent calcium channel(VDCC))はカルシウムイオン(Ca2+)透過性を有するカルシウムチャネルの一種で、電位依存性イオンチャネルのグループで、興奮性細胞(筋肉グリア細胞神経細胞など)の膜に存在する[1][2]。VGCCはわずかにナトリウムイオン(Na+)も透過させるためCa2+-Na+チャネルとも呼ばれるが、生理的条件下ではカルシウムの透過性はナトリウムよりも約1000倍高い[3]。生理的な静止膜電位下では、通常VGCCは閉じている。膜電位の脱分極によって活性化される(開く)ため、「電位依存性」という名称がついている。通常、細胞外のCa2+の濃度は細胞内よりも数千倍高いため、VGCCの活性化によってCa2+が細胞へ流入し、細胞種によってカルシウム感受性カリウムチャネルの活性化、筋収縮[4]、神経の興奮、遺伝子発現のアップレギュレーション、ホルモン神経伝達物質の放出などが引き起こされる。VGCCは正常なもしくは過形成をきたした副腎の球状層(zona glomerulosa)とアルドステロン産生腺腫に局在しており、後者においてはT型VGCCのレベルは患者の血漿アルドステロンレベルと相関している[5]。VGCCの過剰の活性化は興奮毒性の主要な要素であり、細胞内のカルシウムレベルの過度な上昇によって細胞構造を分解する酵素群が活性化される。
構造

VGCCは、α1、α2δ、β1-4、γという数種の異なるサブユニットの複合体として形成される。 α1サブユニットはイオン透過チャネルを形成し、そこに結合するサブユニットは開口の調節などいくつかの機能を有する。
チャネルのサブユニット

高電位活性化型カルシウムチャネル(HVGCC)にはいくつかの種類が存在する。これらは構造的に相同で、類似しているものの同一ではない。生理学的な役割や特定の毒素による阻害を研究することで、それらを区別することが可能である。HVGCCには、ω-コノトキシンGVIAによって遮断される神経型のN型、での未解明の過程に関与し、SNX-482(英語版)を除く他の遮断薬や毒素に抵抗性のあるR型、それと近縁関係にありω-アガトキシン(英語版)によって遮断されるP/Q型、骨格筋平滑筋心筋での興奮収縮共役と内分泌細胞でのホルモン分泌を担い、ジヒドロピリジン(英語版)に感受性のL型が存在する。

タイプ1,4-ジヒドロピリジン(DHP)ω-コノトキシン(ω-CTX)ω-アガトキシン(ω-AGA)
L型遮断抵抗性抵抗性
N型抵抗性遮断抵抗性
P/Q型抵抗性抵抗性遮断
R型抵抗性抵抗性抵抗性

表の出典はDunlap, Luebke and Turner (1995)[6]
α1サブユニット

α1サブユニット(約190 kDa)はHVGCCのチャネル機能に必要な主要サブユニットであり、6本の膜貫通αヘリックス(S1?S6)を含む特徴的な4つの相同ドメイン(I?IV)から構成される。α1サブユニットはCa2+選択性のポアを形成し、電位検知装置と薬剤/毒素の結合部位を含んでいる。ヒトでは総計で10種類のα1サブユニットが同定されている。サブユニットの配置は電位依存性カリウムチャネルのホモ四量体と類似している。ドメイン構造(とC末端のEFハンドやIQドメインといったいくつかの主要な制御部位)は電位依存性ナトリウムチャネルと共通しており、進化的に関係していると考えられている[7]。4つのドメインの膜貫通ヘリックスはチャネルのポアを形成するように配置され、S5とS6ヘリックスはポアの内側の表面に並ぶ一方、S1?4ヘリックスは開口と電位検知(特にS4)に関与していると考えられている[8]。VGCCは迅速に不活性化されるが、その過程は電位依存性とカルシウム依存性の2つの要素から構成されると考えられている[9]。これらの過程はin vitroでは外部の記録液の電荷のキャリアとしてBa2+とCa2+のいずれかを用いることで区別することができる。カルシウム依存性の過程はチャネルの少なくとも1か所にCa2+結合性シグナル伝達タンパク質カルモジュリンが結合することによって起こり、カルモジュリンが結合できないL型チャネルではみられない。すべてのチャネルが同じ調節機能を示すわけではなく、それらの過程の詳細の大部分はいまだ不明である。


タイプ電位α1サブユニット(遺伝子名)結合サブユニット多く存在する部位
L型カルシウムチャネル(英語版) ("Long-Lasting"、別名: DHP受容体)高電位活性化型Cav1.1 (CACNA1S)
Cav1.2(英語版) (CACNA1C) Cav1.3(英語版)(CACNA1D)
Cav1.4(英語版)(CACNA1F)α2δ、β、γ骨格筋、平滑筋、骨芽細胞)、心室筋細胞(心細胞において活動電位の延長を担う。DHP受容体とも呼ばれる)、皮質ニューロンの樹状突起樹状突起スパイン
P型カルシウムチャネル(英語版) ("Purkinje") /Q型カルシウムチャネル(英語版)高電位活性化型Cav2.1(英語版)(CACNA1A)α2δ、β、 おそらくγ小脳プルキンエ細胞と顆粒細胞(英語版)
N型カルシウムチャネル(英語版)("Neural"/"Non-L")高電位活性化型Cav2.2 (CACNA1B)α2δ、β1、β3、β4、おそらくγ脳全体と末梢神経系
R型カルシウムチャネル(英語版)("Residual")中間電位活性化型Cav2.3 (CACNA1E)α2δ、β、おそらくγ小脳の顆粒細胞、他の神経細胞
T型カルシウムチャネル(英語版)("Transient")低電位活性化型Cav3.1(英語版)(CACNA1G)
Cav3.2(英語版)(CACNA1H)
Cav3.3(英語版) (CACNA1I)神経細胞、ペースメーカー機能を持つ細胞、骨(骨芽細胞)

α2δサブユニット

α2とδサブユニットは同じ遺伝子からの産物で、互いにジスルフィド結合によって連結されており、合わせた分子量は約170000である。α2サブユニットはグリコシル化された細胞外サブユニットで、大部分がα1サブユニットと相互作用する。δサブユニットは短い細胞内部分を持つ1本の膜貫通領域を持ち、細胞膜へタンパク質を固定する役割を持つ。α2とδをコードする遺伝子は4つ存在する。

CACNA2D1(英語版) (CACNA2D1)

CACNA2D2(英語版) (CACNA2D2)

(CACNA2D3)

(CACNA2D4)

α2δサブユニットの共発現はα1サブユニットの発現レベルを上昇させ、電流強度の増大、より速い活性化・不活性化速度、不活性化の電位依存性の過分極側へのシフトが引き起こされる。これらの影響の一部はβサブユニット不在下でも観察されるが、他の場合にはβサブユニットの共発現が必要である。

α2δ-1、α2δ-2サブユニットはガバペンチノイド(英語版)の結合部位である。このクラスの薬剤には2つの抗痙攣薬ガバペンチン(Neurontin)とプレガバリン(Lyrica)が含まれ、慢性神経障害性疼痛の治療にも用いられている。中枢抑制剤、抗不安薬のフェニブト(英語版)は、他の標的に加えてα2δサブユニットにも結合部位が存在する[10]
βサブユニット

細胞内のβサブユニット(55 kDa)は、グアニル酸キナーゼ(GK)ドメインとSH3ドメインを含む細胞内MAGUK(英語版)様タンパク質である。βサブユニットのGKドメインはα1サブユニットのI-II間の細胞内ループへ結合し、HVGCCの活性を調節する。βサブユニットには4つの遺伝子が知られている。

CACNB1(英語版) (CACNB1)

CACNB2(英語版) (CACNB2)

CACNB3(英語版) (CACNB3)

CACNB4(英語版) (CACNB4)

細胞質のβサブユニットは、α1サブユニットのコンフォメーションの安定化、そしてα1サブユニットの小胞体保持シグナルを覆って細胞膜へ運搬する役割を持つと考えられている。小胞体保持シグナルはα1サブユニットのI-IIループに含まれているため、βサブユニットが結合すると覆い隠される[11]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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