雷検知器
[Wikipedia|▼Menu]

雷検知器(かみなりけんちき、: Lightning detector)は、を検知する器具や装置のことである。

雷は一般的に雷雲として気象レーダー気象衛星などにより観測されることから、これらも広義には雷検知器である。また、避雷器磁鋼片やロゴスキーコイルなどを用いた雷電流計測装置なども含まれるが、ここでは雷の稲妻を検知する、あるいは稲妻の発生を予測もしくは予知する装置を中心に述べる。
概要日本で実用化されたポポフ型コヒーラ式雷検知器。機器制御、業務用。気象庁により性能検証され、地震観測システムに採用されている。日米特許[1]。ただし、UL規定改正により、日本でも有資格者向けとされ、一般向け販売は停止された。

雷検知器の原型は1894年ロシアアレクサンドル・ポポフ (Александр Степанович Попов) により発明された。

雷はありふれた気象現象のひとつであるが、ひとたび落雷が人や物に生じれば、深刻な事態に至ることが多い。落雷は雷雲下もしくはその周辺に不規則かつ突発的に生じる。また雷雲の位置や状態は刻々と変化していく。大きな広がりを持つ雷雲であれば、落雷の発生する可能性のある地域はそれだけ広くなり、また小さな広がりをもつ雷雲であっても、よく発達し、早い移動速度を持つものであれば、わずかな時間でその移動に伴うように広い地域に多くの落雷が発生する。このようなことから、ヒトの視聴覚のみにより、リアルタイムで自ら、もしくは自らの至近に生じる落雷の可能性を知ることは難しいことがあり、雷検知器は気象観測の他に、これを補う目的のためなどに用いられる。

今日の検知器には大別して、稲妻の発生を検出するものと、稲妻の発生を予測もしくは予知するものがある。雷の性質を利用したいくつかの検出方式があり、その形態も単機能の携帯型のものから、他の気象観測装置などと組み合わせた高機能型までさまざまである。

なお雷検知器を落雷からの直接の人身防護目的に使用する場合、雷の挙動から、雷検知器単体では不十分であることから、他の広域気象観測システム等と組み合わせ、その欠点を補完する。これは一般用の市販品についても同じであるから、その使用にあたっては、その製品の取扱説明書をよく読み、広域気象情報等と併せて用いる必要がある。
検出方式と特徴

現在、実用化されている検出方式には大別して4つある。
稲妻からの光や音を検出するもの(光音検出型)

大気中で生じる放電である稲妻からは雷光)と雷鳴)が放出される。これを検出することにより、雷の発生を知ることができる。ただし、雷光、雷鳴の到達範囲から、遠方で発生する雷の検出は難しく、雷検知器の設置点近辺で発生する雷の検知に用いられる。
稲妻からの電磁波を検出するもの(電磁波検出型)ユーマンのオリジナル理論による電磁波検出型携帯用小型稲妻検知器の例。稲妻が発生する度に数秒間LEDが点灯、同時にブザーが鳴る。稲妻探知範囲は最大で半径約60キロメートル。原理的にユーマン型稲妻検知器は持ち運びながら使うとその場所の受信環境によって稲妻探知範囲が変わり、結果、稲妻までの距離計測が正しくできないことから、その機能を省略して「携帯型」としたアナログ式電磁波検出型携帯用稲妻検知器である。計算回路(コンピュータ)を搭載したデジタル式電磁波検出型小型稲妻検知器の例。左のものは稲妻の発生時、その地点までの大まかな距離をLEDにより表示する。右のものは大まかな稲妻の接近・離間時間をLCDに表示する。なお左のものは竜巻検知器として開発され、現在でもその機能を有している。どちらもユーマン型稲妻検知器であり、できるだけ正しく稲妻までの距離を測定するためには、受信環境の良い場所に静置して使用する必要がある。特に右のものは精密なため、受信環境の良い場所に静置して使用しないと警報そのものが全く出ないこともある[2]。米国製。

放電である稲妻からは電磁波が放出される。これを検出することにより、雷の発生を知ることができる。

古くからあるものであるが、稲妻から放出される電磁波は「ノイズ」であり、無数に存在する電磁波の中から雷の電磁波を特定することが難しく、永らく実験的なものとして使われていた。

1970年代米国アリゾナ大学(当時)のマーティン・A・ユーマン(en)は、軍の要請、すなわち航空保安用の雷検知器開発のため、稲妻の放出する電磁波を詳細に調べた。その結果、稲妻から放出される電磁波に特徴があることを発見し、「ユーマン理論」(ユーマンの定理と呼ばれることもある。)として発表した。これにより、落雷時に放出される電磁波のみを検出することが可能となり、高精度な雷電磁方向探知システム(LLS = Lightning Location System)が開発され、実用化された。計算回路(コンピュータ)を搭載したデジタル式電磁波検出型小型落雷検知器の例。落雷発生時、落雷地点までの大まかな距離と、落雷地点の接近・離間傾向をLEDにより表示する。持ち運びながら使うと各表示は不正確になる。雲放電などは正しく検知しない「落雷検知器」である[3][4]。米国製。

その後、落雷の発生位置のみならず、その規模なども知ることができるようになり、謎の多かった雷の詳細解明に大きく寄与、気象学分野の研究に限らず、具体的な避雷対策(落雷対策)などに飛躍的な進歩をもたらした。

今日ユーマン理論は、雷探知網(LDN = Lightning Detection Network)からプライベートユース用の携帯型小型雷検知器にまで応用され、それぞれ機能も種類も豊富である。遠方で発生する稲妻の検出が可能であり、稲妻の発生位置などから、雷雲の接近・離間なども計算により予測することができる。ただしどのような場所に置かれても完全に稲妻とそれ以外の電磁波を弁別することができるものではないため、精度を確保するためには、センサ部の設置場所を選ぶ必要がある[5]。これは同じ原理による、レジャーなどで人身防護用として用いる小型の携帯型雷検知器についても当てはまり、加えてこれらは携帯型あるいは可搬型(必要な場所に運び、静置して使う。)とするために簡素化してあることから、「頭上で発生する雷を捉えられない可能性がある」[6]あるいは「稲妻を検知、警報を出したときには既に自身に落雷が発生している可能性がある。」[7]といった限界もあるので、その使用にあたっては十分な注意が必要である。

電磁波検出型の雷検知器は地上のみならず、今日、宇宙からの雷観測にも用いられるようになってきている。2009年2月16日、大阪大学東大阪宇宙開発協同組合の小型衛星「まいど1号」に搭載した雷観測装置による成功を発表、さらに2011年から数年間、国際宇宙ステーション日本実験棟で、地球規模での雷放電及び高高度放電発光現象の光学及び電波観測を行う計画を発表している[8]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:43 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef