雲龍庵
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雲龍庵(うんりゅうあん、英語:Unryuan)は石川県輪島市にある、北村辰夫(きたむら たつお、1952年 - )が創設した漆工工房である北村工房の漆工ブランド。「超絶技巧」とも称される一点物の美術工芸品としての漆工芸品を制作・販売している。
作品

工房は日本の伝統的な漆工芸品である手箱硯箱文台印籠貝桶などの他にも、現代的で斬新な意匠のものや、海外顧客の宗教的背景を受けて作られたイースター・エッグ十字架をモチーフにしたものも制作している。その作品は、美しさ、精緻さ、現代ではロストテクノロジーとなっていた江戸時代から明治時代にかけての作品の再現性の高さから「超絶技巧」と評されることが多い。1つの作品に5人から10人の職人が関わり、長い物では5年の制作期間を要する。主な作品の価格は1000万円台であり最低価格のものでも100万円台からである。顧客は口コミで作品の評判を知った富裕層で、特に日本国外の富裕層の顧客が多く、全て1対1の相対取引である。外国人の顧客はプライベートジェットで来日する事も多く、中には商談の後に購入を検討するとして一旦は帰国したが購入機会を逃すまいと数日後に再来日して発注していく者もいるという。雲龍庵は作品が多くの人の眼に触れることを「目垢が付く」として嫌い、作品を雑誌やウェブサイトで積極的に公開しないが、稀に博物館百貨店の画廊で展覧会が開催されたり、美術誌やテレビ番組で紹介されている[1][2][3][4]
北村辰夫

漁師の息子であった北村は1973年に輪島塗の世界に入り、1981年から古典技法の研究を開始し、1985年に北村工房を設立、1986年から印籠制作を始める。初の海外旅行で訪問したロンドンでのオークションで江戸時代の印籠と出会いその美しさと精緻さに衝撃を受け、職人と共にロストテクノロジーとなっていた作品の再現を試み3年の制作期間の後に完成させる。この印籠をヴィクトリア&アルバート博物館キュレーターに見せたところ驚愕され、これを機に日本国外の美術館のキュレーターや富裕層の工房見学が相次ぐようになり、世界各地で展覧会が開催されるようになるなど名声を高めた。代表例としては、1992年にヴィクトリア&アルバート博物館に作品が買い上げられたほか、1993年から1995年にかけてロンドン、パリシカゴウィーンで個展「UNRYUAN・THE NEW GENERATION」が開催された他、1996年に京都野村美術館で「伝統の中からの創造 雲龍庵作品展」が、2002年にヴィクトリア&アルバート博物館で「UNRYUAN・MASTER OF TRADITIONAL JAPANESE LACQUER」が開催されるなど、多くの美術展で作品が披露された[1][2][3]

北村は2006年にNPO「漆工研究会(SKK)」を設立し代表理事に就任し、2014から2015年にかけて毛利家ゆかりの「菊蒔絵貝桶一式」復元制作事業の統括責任者(棟梁)として約50人の職人の指揮を務めた。この貝桶復元制作事業はオーストラリアのスポンサーの支援で行われたものであり、完成作は同国の美術館に寄贈された。この時の制作の様子はNHK教育テレビジョン日曜美術館ETV特集で放送された[5][6][1]

また2015年からは北村が認定した品質の個人の職人の工芸作品を「希龍舎」というブランド名で売り出している。希龍舎の名は明治初期の美術工芸品輸出会社「起立工商会社」に由来する[7]

雲龍庵名義の作品は金沢21世紀美術館にも収蔵されているが[8]、これとは別に、北村工房は高級腕時計の製造・販売業者・独立時計師に漆で加飾を施した文字盤を提供している。2010年から天賞堂とJ-FACEシリーズを[9]、2011年にはウォルサム懐中時計「MINAMO(水面)」「Night and Day(日月)」を[10]、2013年からは独立時計師のカリ・ヴティライネンと[11]「Sarasamon(更紗紋)」[10]「Kaen(火炎)」[12]「Hisui(翡翠)」[13]「Oukamon(桜花紋)」[12]「Aki-No-Kure(秋暮)」[14]「Yozakura(夜桜)」「Hatou(波濤)」「Green Garden」[12]「Setsu-Getsu-Ka(雪月花)」[15]「Ji-Ku(時空)」[16]を、2022年にはクレドールと「SHU(朱)」を[17]共作した。
出演

情報LIVE ただイマ! 世界のセレブを狙え!伝統工芸の新たな挑戦』 NHK総合テレビジョン 2012年5月11日

ETV特集 よみがえる超絶技巧輪島塗・貝桶プロジェクトの2年』 NHK教育テレビジョン 2015年8月22日

日曜美術館 漆芸の極みをもとめて?輪島塗超絶技巧への旅?』 NHK教育テレビジョン 2015年9月6日


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