『雲霧仁左衛門』(くもきりにざえもん)は、1995年11月29日から1996年3月にかけてフジテレビ系列で放送された連続テレビ時代劇。池波正太郎の同名小説が原作。山崎努主演。
全15回であるが、オウム事件の影響などで、フジテレビ系列で放映されたのは第12話までであり[1]、第13話以降は地上波未放送で時代劇専門チャンネルにて1999年3月に初放映された。2005年には第1話から第15話まで完全収録したDVDが発売された。また、登場する盗賊の語などは原作者のオリジナルであり、代表作の『鬼平犯科帳』に見ることができる(具体的には鬼平犯科帳#用語を参照)。全体的に工藤栄一色の濃い作品となっている[2]。 享保年間。江戸を始めに、東海道、中山道、果ては上方まで「犯さず、殺さず、貧しき者からは奪わず」の盗賊の掟を守り、強欲な悪徳商人ばかりを襲う謎の大盗賊・仁左衛門がいた。彼と彼の一味は全く気取られることなく、仕事が終われば雲か霧のように消えてしまうことから、雲霧一党と呼ばれた。 一方、手掛かり一つすら見つけられないことに業を煮やした幕府は、火付盗賊改方長官に旗本・安部式部を任命する。安部式部率いる火付盗賊改の面々は密偵や時に謀略を駆使しながら、雲霧仁左衛門に迫っていく。 雲霧仁左衛門の一党は安部式部の探索から巧妙に逃れつつ、数々の盗みを完遂していく。
ストーリー
登場人物
雲霧の一味
雲霧仁左衛門(山崎努)
雲霧一党の頭であり、全国に120名ほどの配下を持つ盗賊。慎重さと大胆さを兼ね備えた人物で、配下から全幅の信頼を寄せられ、数々の盗みを成功させていたが、仕組みが大きくなりすぎたとも感じており、一党への引き金を貯めて近いうちに一党を解体しようと考えていた。深い教養・知識を持ち、既に老境ながら身軽で剣術の腕も立つ。 本名「辻伊織」と言い、その出自は32万3千石・藤堂藩の武士。実兄・辻蔵之助が公金横領の濡れ衣を着せられた際に、出奔する。その後、世を恨んで盗賊の頭となり、藤堂藩、特に国家老・八木重右衛門への復讐を狙っていた。最終話、藤堂藩・藩主が老中職に就くことに関連して、公金を持って江戸へ向かう途中の八木の行列を熊五郎と共に襲う。そして公金一万両を奪い、さらに八木の髷を切り落とす。賄賂を贈る老中の名が連なった手紙も盗んだために、八木は責任を問われ自刃し、復讐を果たす。その後、公金と手紙はそっくり藤堂藩に返す。配下全員と完全に縁を切り、いずこへともなく姿を消す。
木鼠の吉五郎(石橋蓮司)
雲霧一党の二番手、仁左衛門の右腕で配下からは「小頭(こがしら)」と呼ばれる男。仁左衛門に代わって陣頭指揮を執り、実質的に命令を下すことが多く、自ら潜入をすることもある。冷静沈着で頭が切れ、腕っ節も強く、仁左衛門からの信頼は厚い。越後屋襲撃の直前で、火盗改めに張り込まれていることを知り、船で越後屋に向かっていた仁左衛門に戻るよう告げた後、自身は火盗改めの捕り方を引き付け時間を稼ぐ。最後は眼潰しを受け完全に包囲されたところで名を名乗って自刃する。
七化けのお千代(池上季実子)
妙齢の女性で、その渾名の通り、公家の若後家から老婆まで何にでも変装する。大火事で孤児となっていたまだ幼い頃に仁左衛門に拾われ、父娘のような関係にあると同時に、仁左衛門を男性としても強く慕っている。仁左衛門は足を洗ってまっとうな人生を送ることを願っているが、一生付いていくと言ってきかない。六之助などからは「あねさん」と呼ばれている。雲霧が捕まったと聞くとおみつを連れ江戸に向かう。仁左衛門の兄である蔵之助の身代わりに気付いてもこれを助けようとしたが寸前で仁左衛門に止められた。仁左衛門に「すべてが終わったら一緒に暮らすという約束は果たせない」と告げられるがあきらめることは出来ず、一党の解散後は、自ら建てた蔵之助・吉五郎・六之助の墓を守り、寺の門前で花屋を営みながら仁左衛門の帰りを待つ。
因果小僧六之助(佐藤和久
つなぎ役などをこなす青年。いささか短絡的、激情的な面が目立ち、しばしば雲霧一味を窮地に陥れるが、仁左衛門からはその真摯さを買われている。7つの時に仁左衛門に拾われ、彼を親のように慕っている。後半では自分は顔が割れて一味に迷惑をかけているという理由で、顔の左半分を焼いてしまう。終盤、身代わりとなった辻蔵之助が仁左衛門本人かどうかを火付盗賊改方が怪しんでいると知ると、命を張って護送中の列に乗り込み、仁左衛門本人だと信じ込ませようとする。蔵之助処刑と同日に斬首される。
州走りの熊五郎(本田博太郎)
つなぎ役から潜入まで何でもこなす男。腕も立ち、幾度となく火付盗賊改方の手から仁左衛門を救う。また、岡田甚之助への懐柔を担当し、彼との直接的な連絡役だった。必ず「へーい」と間延びした返事をする。越後屋の件では仁左衛門と行動していたため、辛くも火盗の手より逃げ延びる。その後、仁左衛門の藤堂藩への復讐計画のために国家老の行列を監視し、仁左衛門と共にこれを襲撃して公金一万両を強奪する。
寝牛の治平(奥村公延)
老人。盗人宿の管理から仁左衛門への繋ぎまで幅広く活動する。松屋での計画では千代の付き人として潜入し、引き込み役を仰せつかる。
玉虫のおもん(佐藤恵利)
治平の娘。主に仁左衛門の盗人宿で、食事や洗濯といった家事をしている。
黒塚のお松(大橋芳枝)
中年の女性。主に仁左衛門の盗人宿で、食事や洗濯といった家事をしている。
白糸のおみつ(小田切優美