雰囲気(ふんいき、英語: atmosphere、ambience[1]、ドイツ語: Atmosphare
[注 1]、Stimmung[注 2])は、ある特定の場所や人物を取り巻いている気分的なものを指す語・概念である。曖昧で言語化しにくい概念であるが、身体・感情や感覚・場所や会話・情報や記号との(相互の)関連が指摘されている。類義語としてはムード(mood)が挙げられる。もとは大気を意味する語であり、冒頭の意味における雰囲気の概念がこの語のもとに集約され定着したのは20世紀初頭ごろである。なお化学における雰囲気(atmosphere)は、ある特定の気体やそれで満たされた状態を指す[4][5]。以前から現象学や美学・人文地理学・心理学などにおいて雰囲気概念についての考察はなされてきたが、20世紀末ごろから美学や都市論においてより盛んに研究がなされるようになっている(雰囲気論的転回)。コミュニケーションにも雰囲気は関わり、教育学などにおいて研究がなされている。またナラティブやテクストに含まれる雰囲気についての研究や批評もある。音楽による雰囲気生成の試みもなされており、経営学や工学においても関連する研究がなされている。 雰囲気の語は前近代においては、オランダ語のLuchtの訳語として、『気海観瀾
語誌と定義Gandy (2017, pp. 355f.) は、atmosphere(大気・雰囲気)のダブル・ミーニングの例として、トーマス・スコット・ボールドウィンによる熱気球旅行についての記述を挙げる。
近代以前
英語のatmosphereは、ラテン語のAtmosphaera(?τμ??〈蒸気〉+ σφα?ρα〈球体〉)に由来し、初出は1638年のジョン・ウィルキンズ(英語版)[注 5]による月の居住可能性についての論文[注 6]であると考えられている[10]。また18世紀初頭以降のおもにドイツ語やフランス語においては、人体や物体から発せられそれらを包む物質やさらには磁場なども指していた。この〈雰囲気〉には体液(humors)や情念(passion)も含まれており、人間から発せられる〈雰囲気〉はその人間の様々な属性や状況(性格・社会階層・感情など)を示唆し、物質として嗅ぎ取られることで魅力や反感を促すことのできるものであった[11]。その後19世紀初頭ごろには、このような医学的な意味合いで使われることはまれになり[12]、またそのころ英語においては、大気の意味に加え場所や状況を支配するムードや映画、あるいは小説によって喚起される感情のごとき文化的表現といった意味で用いられるようになったが[13]、Gandy (2017, p. 355ff.) によると後者の意味は前者の意味(大気)をダブル・ミーニングとして保持している。
19世紀以前から、場所についての雰囲気的な感覚は詩・日記・旅行記などにおいて描写されてきたが、それらが雰囲気という語に集約され定着したのは20世紀である。雰囲気は、風景・場所・境界・距離といった概念とは異なりそれを指す語が用いられるようになって初めて認識されるような概念であり、雰囲気の語が多用されることにより雰囲気に対する関心が高まった考えられる[14]。
現代.mw-parser-output .thumbinner{display:flex;flex-direction:column}.mw-parser-output .trow{display:flex;flex-direction:row;clear:left;flex-wrap:wrap;width:100%;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .tsingle{margin:1px;float:left}.mw-parser-output .theader{clear:both;font-weight:bold;text-align:center;align-self:center;background-color:transparent;width:100%}.mw-parser-output .thumbcaption{background-color:transparent}.mw-parser-output .text-align-left{text-align:left}.mw-parser-output .text-align-right{text-align:right}.mw-parser-output .text-align-center{text-align:center}@media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .thumbinner{width:100%!important;box-sizing:border-box;max-width:none!important;align-items:center}.mw-parser-output .trow{justify-content:center}.mw-parser-output .tsingle{float:none!important;max-width:100%!important;box-sizing:border-box;align-items:center}.mw-parser-output .trow>.thumbcaption{text-align:center}}「無人駅のムード」「アマゾンのジャングルのムード」といった表現は不自然である[15]。
雰囲気は、実体を持たない曖昧な概念であるため、言語的に表現することは難しいとされる[16][17][18]。