難聴
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難聴
概要
診療科耳鼻咽喉科学
分類および外部参照情報
ICD-10H90-H91
ICD-9-CM389
MeSHD034381
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世界の疾病負荷(WHO, 2019年)[1]順位疾病DALYs (万)DALYs(%)DALYs
(10万人当たり)
1新生児疾患20,182.18.02,618
2虚血性心疾患18,084.77.12,346
3脳卒中13,942.95.51,809
4下気道感染症10,565.24.21,371
5下痢性疾患7,931.13.11,029
6交通事故7,911.63.11,026
7COPD7,398.12.9960
8糖尿病7,041.12.8913
9結核6,602.42.6857
10先天異常5,179.72.0672
11背中と首の痛み4,653.21.8604
12うつ病性障害4,635.91.8601
13肝硬変4,279.81.7555
14気管、気管支、肺がん4,137.81.6537
15腎臓病4,057.11.6526
16HIV / AIDS4,014.71.6521
17その他の難聴3,947.71.6512
18墜死3,821.61.5496
19マラリア3,339.81.3433
20裸眼の屈折異常3,198.11.3415

難聴(なんちょう、英語: hard of hearing[注釈 1])とは、聴覚が低下した状態のこと[注釈 2]医学分野で多く使用される表現であり、診断名や聞こえの障害の性質(例:伝音難聴・感音難聴)、程度の数量的表現(例:軽度難聴・高度難聴)として用いられる[2]耳科学的には、聴力[注釈 3]が、正常聴覚閾値(正常最小可聴値) (0dB HL) [注釈 4]よりも劣っている事とされる。そのレベルは30dB HLとされている。難聴は代表的な疾患の症状である[5]外耳内耳中耳から聴覚伝導路のどの部分が障害されても難聴になる[5]。難聴を検査する方法が聴力検査である。



0dB HL(標準聴力閾値)

難聴の程度を決めるにはオージオメータ(audiometer、聴力計)によって純音聴力検査をしなければならない。

オージオメータとは、被検者に電気的に発生した検査音を減衰器を通して与え、被検者自身の認知、応答により、聴覚機能を検査する装置であり、JIS T 1201(オージオメータ)に規定されている。検査音を与える方法も指定された気導受話器(イヤホン)で被検耳の外耳に適切に圧着されなければならない。最初に 0dB を決めたのは、1951年に米国で徴兵検査の折に18歳の若者で行なわれた。この値がしばらくの間 0dBとして採用されていたが、その後英国でも検討されたが10dBほど小さい値になり混乱していたので、0dB の再検討が世界的に行なわれるようになった。日本オージオロジー学会でも 0dB 委員会が作られ検討された。最終的に ISO 規格に世界が合わせる事になった。当時は暫定的にそれぞれの周波数で10dBを加える事で対応した。JIS T 1201-1982 には財団法人機械電子検査協会が保有しているイヤホンをISO NBS 9?Aカプラ (6cc) で規定されている基準最小可聴値をもたらすカプラ内音圧レベルが4種類の国産受話器に対して示されている。ここで注意する点は何れも工業規格であり、オージオメータの製造、販売の規格である。従って、一人一人違ったヒトの外耳に気導受話器を使用して聴力検査をすると言う現実とは無関係である。例えば、圧着の程度が少ないと僅かな隙間から低音域の低下が発生するし、防音室の程度により閾値に 10 - 15dB の測定誤差を生ずる。これは全ての聴覚検査で生ずる現実である。
難聴とコミュニケーション

難聴をコミュニケーション障害の立場より考える事も重要な問題である。小寺によれば、純音聴力検査で求める平均聴力レベルを基準にした平均聴力、500Hz、1kHz、2kHzの各閾値の平均聴力値(3分法)で正常聴力は25dB以内であるとしている。平均聴力レベルが26dBから39dBは軽度難聴で、40dBから69dBは中等度難聴で、70dB以上であれば高度難聴と分類すると記している。この場合は良聴耳のレベルである。このように軽度難聴のレベルは文献により一定値ではないのが現状である。ここでも会話の了解度と組み合わせて記載されている。

平均聴力レベルとコミュニケーション障害の関係。

26dB - 39dB: 小さい声での会話のみ聞き取りにくい。

40dB - 54dB: 普通の会話に不自由。正面から大きい声で会話する。

55dB - 69dB: 大きい声での会話が理解できないことがある。

70dB 以上。 非常に大きい声のみ理解できるが、理解できないことがある。

(日医雑誌 第123巻・第6号/P-788.2000-3-16)
聴覚障害レベル

難聴者の最小可聴閾値(聴力レベル)の上昇が4分法(500 Hz×1 + 1 kHz×2 + 2 kHz×1)/4 の数値により障害の重さが区分される。

聴覚障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)[6]級別状態指数
2両耳の聴力レベルがそれぞれ100デシベル以上のもの(両耳全ろう)11
3両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの(耳介に接しなければ大声語を理解し得ないもの)7
41. 両耳の聴力レベルが80デシベル以上のもの(耳介に接しなければ話声語を理解し得ないもの)
2. 両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が50パーセント以下のもの4
61. 両耳の聴力レベルが70デシベル以上のもの(40センチメートル以上の距離で発声された会話語を理解し得ないもの)
2. 1側耳の聴力レベルが90デシベル以上、他側耳の聴力レベルが50デシベル以上のもの1

難聴の分類

難聴の分類には、病変部位、原因・要因、難聴の程度、聴力型、発症時期、言語習得などにより、さまざまな基準がある[7]。分類基準の多様性は、障害像、予後、必要とされる対応(医学的・福祉的・教育的)の多様さを示唆する[7]。また、両方の耳に同時に症状が現れる両側性難聴(りょうそくせいなんちょう)とどちらか一方の耳にのみ症状が現れる一側性難聴(いちそくせいなんちょう)に分けられる。なお一側性難聴、つまり逆側の耳が健聴の場合、日本の現行制度では障害とみなされない。
病変部位による分類

病変部位により、伝音(性)難聴・感音(性)難聴に大きく2分される。混合性難聴(こんごうせいなんちょう)はこれらを共に持っているものであり、独立させる場合もある。
伝音性難聴

伝音(性)難聴(でんおんせいなんちょう)(conductive hearing loss)は、音の伝わり方の異常である[8]。聴こえの仕組みは、ヒトの耳に外界から空気の振動である可聴音(20 Hz - 20,000 Hz と言われている)が外耳中耳を通して内耳へ伝えられる。伝音難聴では、外耳・中耳・蝸牛窓・前庭窓のいずれか、又はそのすべてがおかされることで、伝送特性が変化する[9]
感音性難聴

感音(性)難聴(かんおんせいなんちょう)(sensorineural hearingloss [注釈 5])は、内耳での音の電気変換?電気信号の伝達の異常である[8]。通常、外耳や頭蓋骨から入力された音のエネルギーは、内耳でリンパ液や有毛細胞を振動させる。この振動が刺激となり有毛細胞から神経伝達物質が放出され、付着している聴神経の終末部を興奮させて活動電位という電気的インパルスが発生する。感音難聴は、内耳又は内耳から聴覚中枢に至る部位に器質性の病変で生じる[11]

内耳性難聴 (ないじせいなんちょう、inner ear hearingloss)

障害の部位が蝸牛に限局している場合の感音性難聴。


後迷路性難聴(こうめいろせいなんちょう、retrocochlear hearingloss)

障害の部位が蝸牛神経から皮質聴覚野を含む区間の聴覚伝導路に限局している場合の感音性難聴。


難聴の程度による分類

軽度難聴、中等度難聴、高度難聴、重度難聴、最重度難聴に分類される。
発症時期による分類

先天性難聴、中途難聴・失聴、老人性難聴に分類される。
言語獲得による分類

言語習得前難聴、言語習得期難聴、言語習得後難聴に分類される。
化学物質が原因の難聴

ブロモバレリル尿素を含有する鎮痛剤[12][13][14]、コールドパーマ第2液[15]などの臭素化合物を含む物質の摂取による中毒症状。
機能性難聴

全く器質的な障害が見られないのにもかかわらず、難聴が生じていると訴える例が見られる。この、聴覚に関わる部分に全く器質的な障害が見られない難聴を、機能性難聴(心因性難聴)と呼ぶ。意図的に難聴を装った結果難聴になった詐聴(さちょう)も含まれる。また、ヒステリー性難聴も含まれ、「ヒステリー」と付けられたことからも女性に多い難聴である。


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