雇用調整助成金
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雇用調整助成金(こようちょうせいじょせいきん)とは、日本において雇用保険法等を根拠に、労働者失業防止のために事業主に対して給付する助成金の一である。雇用保険のなかの「雇用保険二事業」と呼ばれる事業のうちの雇用安定事業(雇用保険法第62条)として行なわれる。

日本は世界的に見ても特に解雇が難しい国であり、景気が悪くなったからといって従業員を簡単に解雇できない。しかし不況期に無理に雇用を維持すれば、企業全体の業績にも響くため、企業は事業活動の縮小期には残業規制や配置転換等により雇用調整を行う。こうした措置のうち、働く意思と能力のある従業員の休業、スキルアップのための教育訓練、または他の事業所への出向に関しては、雇用調整助成金の支給を申請することで、雇用維持を行うための経済的支援を国から受けることができる。
目次

1 助成金の対象となる雇用調整

2 受給要件

3 期間

4 支給限度日数

5 受給額

6 受給手続き

7 制度の沿革

8 脚注

9 関連項目

10 外部リンク

助成金の対象となる雇用調整
休業

労働者がその事業所において、所定労働日に働く意思と能力があるにもかかわらず、労働することができない状態をいう。したがって、ストライキ中や有給休暇中のように労働の意思そのものがない場合や、疾病等による休暇中のように労働能力を喪失している場合等の休職・休業は、助成金の支給対象とならない。

具体的には、以下のすべてを満たす必要がある。

労使間の協定によるものであること。

事業主が自ら指定した対象期間内に行われるものであること。

判定基礎期間における対象労働者に係る休業又は教育訓練の実施日の延日数が、対象労働者に係る所定労働延日数の20分の1(中小企業以外の場合は15分の1)以上となるものであること。

休業手当の支払いが労働基準法第26条の規定に違反していないもの

所定労働日の所定労働時間内において実施されるものであること

所定労働日の全1日にわたるもの、または所定労働時間内に当該事業所における対象労働者全員について一斉に1時間以上行われるもの(短時間休業)であること。

教育訓練

助成金の支給対象となる教育訓練は、職業に関する知識、技能または技術を習得させ、または向上させることを目的とする教育、訓練、講習等であって、所定労働日の所定労働時間内に実施され、かつ、当該教育、訓練、講習等を受講する労働者が当該所定労働日の全一日にわたり業務に就かないものをいう。また、「職業に関する」とは、現在就いている職業に直接関係するものに限らず、現在就いている職業に関連する周辺の技能、知識に関するものも含まれる他、事業活動の縮小等に伴い配置転換をする場合などに必要な訓練も含まれる。

具体的には、以下のすべてを満たす必要がある。

労使間の協定によるものであること。

事業主が自ら指定した対象期間内に行われるものであること。

判定基礎期間における対象労働者に係る休業又は教育訓練の実施日の延日数が、対象労働者に係る所定労働延日数の20分の1(中小企業以外の場合は15分の1)以上となるものであること。

職業に関連する知識、技術を習得させ、または向上させることを目的とする教育、訓練、講習等であって(下記参照)、かつ、受講者を当該受講日に業務(本助成金の対象となる教育訓練を除く)に就かせないものであること。

所定労働日の所定労働時間内において実施されるものであること(半日訓練の場合、当日の残りの時間帯に業務に就かせることはできないが、休業することは可能)。

事業所内訓練の場合は、事業主が自ら実施するものであって、生産ラインまたは就労の場における通常の生産活動と区別して、受講する対象労働者の所定労働時間の全日または半日(3時間以上で所定労働時間未満)にわたり行われるものであること。事業所外訓練の場合は、教育訓練の実施主体が助成金を受けようとする事業主以外であって、受講者の所定労働時間の全1日または半日にわたり行われるものであること。

なお、教育訓練の内容が以下のいずれかに該当する場合には受給できない。1.~5.については、平成25年12月1日以後判断基準に追加された。
職業に関する知識、技能または技術の習得または向上を目的としないもの(例:意識改革研修、モラル向上研修、寺社での座禅 等)

職業または職務の種類を問わず、職業人として共通して必要となるもの(例:接遇・マナー講習、パワハラ・セクハラ研修、メンタルヘルス研修 等)

趣味・教養を身につけることを目的とするもの(例:日常会話程度の語学の習得のみを目的とする講習、話し方教室 等)

実施目的が訓練に直接関連しない内容のもの(例:講演会、研究発表会、学会 等)

通常の事業活動として遂行されることが適切なもの(例:自社の商品知識研修、QCサークル 等)

当該企業において通常の教育カリキュラムに位置づけられているもの(例:入社時研修、新任管理職研修、中堅職員研修、OJT 等)

法令で義務づけられているもの

事業所内で実施する訓練の場合で通常の生産ラインで行われるものなど、通常の生産活動と区別がつかないものまたは教育訓練過程で生産されたものを販売するもの

当該教育訓練の科目、職種等の内容についての知識または技能を有する指導員または講師により行われないもの

指導員または講師が不在のまま自習等を行うもの

転職や再就職の準備を目的としたもの

過去に行った教育訓練を、同一の労働者に実施するもの

海外で実施するもの

外国人技能実習生に対して実施するもの

出向

労働者が事業所の従業員たる地位を保有しつつ、他の事業主の事業所において勤務すること又は将来出向元事業所に復帰することその他の人事上のつながりを持ちながら、一旦出向元事業所を退職して、出向先事業所において勤務することをいう。ただし、資本的、経済的・組織的関連性等からみて独立性を認められない事業主間の出向は、配置転換と変わらないことから、助成金の支給対象とならない。

出向は、出向労働者にとって働く環境が大きく変わることとなるため、以下の点に配慮し、出向労働者が出向先で安心してその能力を発揮できるよう条件整備を行うことが不可欠である。

出向先事業所における労働条件等を明確にすること

出向元事業所と出向先事業所との間で賃金分担を明確にすること(出向元事業所または出向先事業所が賃金を100%負担する場合は助成金の支給対象とならない)

助成金の対象となる「出向」は以下のすべてを満たす必要がある。

雇用調整を目的として行われるものであって、人事交流・経営戦略・業務提携・実習のため等に行われるものではなく、かつ、出向労働者を交換しあうものでないこと。

労使間の協定によるものであること。

出向労働者の同意を得たものであること。

出向元事業主と出向先事業主との間で締結された契約によるものであること。


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