この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
日本の法令
通称・略称男女雇用機会均等法
法令番号昭和47年法律第113号
種類労働法
効力現行法
成立1972年6月16日
公布1972年7月1日
施行1972年7月1日
所管厚生労働省
主な内容男女の雇用機会の均等など
関連法令労働基準法、労働関係調整法、女子差別撤廃条約など
制定時題名勤労婦人福祉法
条文リンク雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(こようのぶんやにおけるだんじょのきんとうなきかいおよびたいぐうのかくほとうにかんするほうりつ、昭和47年法律第113号)は、男女の雇用の均等および待遇の確保等を目標とする日本の法律。1972年(昭和47年)に施行された「勤労婦人福祉法」が1986年(昭和61年)に題名を含めて改正され[1]、その後の何度かの改正を経て現在の題名となった。所管官庁は厚生労働省である。通称は男女雇用機会均等法(だんじょこようきかいきんとうほう)。 この法律は、法の下の平等を保障する日本国憲法の理念にのっとり雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図るとともに、女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等の措置を推進することを目的とする(第1条)。この法律においては、労働者が性別により差別されることなく、また、女性労働者にあっては母性を尊重されつつ、充実した職業生活を営むことができるようにすることをその基本的理念とする(第2条)。そのために、事業主並びに国及び地方公共団体は、この基本的理念に従って、労働者の職業生活の充実が図られるように努めなければならない(第2条)。 国及び地方公共団体は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等について国民の関心と理解を深めるとともに、特に、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を妨げている諸要因の解消を図るため、必要な啓発活動を行うものとする(第3条)。厚生労働省では毎年6月を「男女雇用機会均等月間」と定め、職場において男女がともに能力を発揮できる社会の実現を目指して、男女雇用機会均等法等への社会一般の認識を深める機会としている[2]。 厚生労働大臣は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する施策の基本となるべき方針(男女雇用機会均等対策基本方針)を定めるものとされ(第4条1項)、現在、運営期間を2017年度からおおむね5年間とする「第3次男女雇用機会均等対策基本方針」が制定されている(平成29年厚生労働省告示第72号)。男女雇用機会均等対策基本方針は、男性労働者及び女性労働者のそれぞれの労働条件、意識及び就業の実態等を考慮して定められなければならず、厚生労働大臣は、男女雇用機会均等対策基本方針を定めるに当たっては、あらかじめ、労働政策審議会の意見を聴くほか、都道府県知事の意見を求めるものとする(第4条3項、4項)。 男女の雇用機会の均等については、本法が制定される以前から裁判所による政策形成によって「どのようなケースが男女の雇用機会均等に反するか」といった体系ができあがっていて[注 1]、本法は、施行当時はこの裁判所が作り上げた体系を越える内容は盛り込まれなかった。例えば、裁判所は定年、解雇に対しては積極的に新たな判断基準を示していった一方で、採用などの男女間の差に対しては、特にアプローチをしていなかったが、本法も定年や解雇については男女間の差別を禁止する一方で、採用などで努力規定しか盛り込んでいない[3]。 厚生労働大臣は、第5条~第7条及び第9条1項~3項の規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するために必要な指針を定めるものとする(第10条1項)。現在「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」(平成18年厚生労働省告示第614号)が告示されている。厚生労働大臣は、指針を定めるに当たっては、あらかじめ、労働政策審議会の意見を聴くものとする(第10条2項)。 事業主は、労働者の募集・採用、配置・昇進・降格・教育訓練、福利厚生、職種・雇用形態の変更、退職の勧奨・定年・解雇・労働契約の更新について、性別を理由として、差別的取扱いをしてはならない(第5条、第6条)。指針によれば、たとえば、募集・採用において以下のような措置は違法となる[4]。
構成
第一章 総則(第1条?第4条)
第二章 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等
第一節 性別を理由とする差別の禁止等(第5条?第10条)
第二節 事業主の講ずべき措置(第11条?第13条)
第三節 事業主に対する国の援助(第14条)
第三章 紛争の解決
第一節 紛争の解決の援助(第15条?第17条)
第二節 調停(第18条?第27条)
第四章 雑則(第28条?第32条)
第五章 罰則(第33条)
附則
目的、管掌等
「法の下の平等を保障する日本国憲法の理念」とは、国民の国に対する権利として「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において差別されない」と規定した日本国憲法第14条の考え方をいい、同規定自体は私人間に直接適用されるものではないものの、その理念は一般的な平等原則として法の基礎となる考え方である。
「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図る」には、企業の制度や方針における労働者に対する性別を理由とする差別を禁止することにより、制度上の均等を確保することのみならず、法第2章第3節に定める援助により実質的な均等の実現を図ることも含まれる。
「労働者」とは、雇用されて働く者をいい、「求職者」を含むものであること。
事業主の具体的義務の内容としては、法第2章に規定されているが、事業主は、それ以外の事項についても第2条の基本的理念に従い、労働者の職業生活の充実のために努力することが求められる(平成18年10月11日雇児発1011第2号)。
男女の均等な機会及び待遇の確保
性別を理由とする差別の禁止
男性または女性についての募集又は採用する人数の限度を設けること(「男性10名、女性5名」など)
男性または女性を表す語を含む職種の名称を用いること(他方の性を排除しないことが明らかである場合を除く)
「婦人警察官」→「女性警察官」(募集の際は単に警察官)
「営業マン」→「営業職」
「保母」→「保育士」
「看護婦」→「看護師」
「スチュワーデス」→「客室乗務員」
「男性歓迎」「女性歓迎」「男性向きの職種」「女性向きの職種」等の表示を行うこと
採用選考において、能力及び資質の有無等を判断する場合に、その方法や基準について男女で異なる取扱いをすること。
募集又は採用に当たって実施する筆記試験や面接試験の合格基準を男女で異なるものとすること。
男女で異なる採用試験を実施すること。
男女のいずれかについてのみ、採用試験を実施すること。
採用面接に際して、結婚の予定の有無、子供が生まれた場合の継続就労の希望の有無等一定の事項について女性に対してのみ質問すること。
「結婚の予定の有無」、「子供が生まれた場合の継続就労の希望の有無」については、男女双方に質問した場合には、法には違反しないものであるが、もとより、応募者の適正・能力を基準とした公正な採用選考を実施するという観点からは、募集・採用に当たってこのような質問をすること自体望ましくない(平成18年10月11日雇児発1011第2号)。
採用活動において、男性(女性)に送付する会社の概要等に関する資料の内容を、女性(男性)に送付する資料の内容より詳細なものとすること
営業、基幹的業務、海外で勤務する職務等の配置に当たって、その対象を男性(女性)労働者のみとすること
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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