集団免疫
[Wikipedia|▼Menu]
集団免疫(Herd immunity)のモデル。.mw-parser-output .legend{page-break-inside:avoid;break-inside:avoid-column}.mw-parser-output .legend-color{display:inline-block;min-width:1.5em;height:1.5em;margin:1px 0;text-align:center;border:1px solid black;background-color:transparent;color:black}.mw-parser-output .legend-text{}  (赤):感染者  (青):獲得免疫のない健康な人  (黄):感染や予防接種で免疫を獲得した人 1.上の図は、誰も免疫がないため、感染者が激増する。
2.中の図は、少数の人が免疫がある場合、免疫のない健康な人が感染し、免疫がある人は感染しない。
3.下の図は、人口の多くが免疫がある場合、免疫のない健康な人を含め、感染が大きく広がらない。
上の2つの例では、免疫のない健康な人のほとんどが感染するが、下の例では免疫がある人が流行を防ぐ壁となり、感染が拡大しなくなる。

集団免疫(しゅうだんめんえき、: herd immunity, herd effect, community immunity, population immunity, social immunity)は、感染症のみに適用される間接的な防御であり、個人だけでなく集団での病気の予防を目指すものである[1][2]。これは、ある感染症に対して、人口の十分な割合が、過去の感染や予防接種によって免疫を獲得した場合に生じ、免疫を持たない個人の感染する可能性を減少させる[1][2][3][4]。多数の人々が免疫を持っている集団では、感染の連鎖が断ち切られる可能性が高く、病気の拡大は収まるか緩やかなものとなる[5]。あるコミュニティにおいて免疫を持っている人の割合が高ければ高いほど、免疫を持たない人が感染者と接触する可能性は低くなる[1]

自然感染して治癒した場合も、個人の免疫は獲得できるが、自然感染は重篤な症状や後遺症、死亡のリスクを伴い、集団免疫が成立するまでに多大な犠牲が生じる[6][7]。ワクチンは病気のリスクを回避して免疫を得るために開発され、ワクチンにより作られた集団免疫は、麻疹風疹ポリオ百日咳水痘などワクチンで予防できる病気の減少に貢献している[6][8][9][10]
概説麻疹の発生数は、予防接種が導入されると急激に低下した[6]

個人の免疫は、感染症からの回復や予防接種によって獲得される[5]。一部の人々は医学的理由により免疫を獲得することができず、集団免疫はこれらの人々に対する重要な保護手段となる[11][12]。免疫を持つ人々の割合が一定の値に達すると、集団免疫によって病気が徐々に集団から排除されるようになる[12]。この排除が世界中で達成されれば感染の数は永続的にゼロまで減少する可能性があり、この状態が撲滅または根絶と呼ばれる[13]。この感染の拡大と予防接種による集団免疫で天然痘は1977年に根絶され、他の感染症についても地域的な排除が行われている[8]。集団免疫は全ての感染症に適用されるわけでなく、伝染、つまりある人から他の人へうつる疾患のみに適用される[12]。例えば、破傷風は感染症であるが伝染しないため、集団免疫は適用されない[11]

予防接種は個人を感染から守ると共に、集団全体の免疫率を上げることで流行を防ぐ壁となる[14][15]。これは感染症に弱い人を、繭(cocoon)のように周囲の人たちが守るという意味で、コクーニング(cocooning)と呼ばれる[14][10]。現在、ワクチンで予防できる病気は、ジフテリアや破傷風、百日咳、ポリオ、麻疹など30種類以上ある[9][16][17]世界保健機関(WHO)は、予防接種は最も費用対効果の高い病気を回避する方法であり、世界中で毎年200 - 300万人の死亡を防ぎ、世界全体の予防接種率が向上すれば、更に150万人の死亡を回避できるとしている[9][18]。それにもかかわらず、ワクチンへのためらい反ワクチン運動が起きており、これは集団免疫の課題となっている[19]。特に予防接種率が不十分な社会・コミュニティでは、集団免疫が低下したり消失したりしており、ワクチンで予防可能な病気が根強く残ったり、再流行が起きたりしている[19][20][21]
効果
免疫を持たない人々の保護シャーロット・クレバリー=ビスマンは、髄膜炎菌感染症により、生後7ヶ月で四肢の一部を切断した[22]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:195 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef