隕石(いんせき、meteorite)とは、惑星間空間に存在する固体物質が地球などの惑星の表面に落下してきた物体のこと[1][2]。
「隕」が常用漢字に含まれていないため、「いん石」とまぜ書きされることもある。昔は「天隕石」「天降石」あるいは「星石」などと書かれたこともある[1]。 惑星間空間に存在する固体物質が地球あるいは惑星表面に落下してきた際、大気を通過中に高熱で気化せずに残ったものが隕石である[1]。 1985年までに発見された2700個の隕石中、落下するところが目撃されたのはおよそ45%である[2]。南極では日本をはじめとする各国の南極観測隊が1985年まででも7500個の隕石を回収した[2]。隕石カタログ(Catalogue of Meteorites 2000年版)には2万2507個(南極隕石1万7808個を含む)が掲載されている。このうち2万1514個(95.6%)が石質隕石、865個(3.8%)が鉄隕石、116個(0.5%)が石鉄隕石である[3]。 放射性同位体を用いた測定によって、隕石の多くはおよそ45億年ほど前にできたもので、太陽系の初期、原始惑星が形成された当時の始原的な物質であろうと推定されている[2]。また、隕石の起源天体と流星物質の起源天体は必ずしも同種ではない[4]。 大きさ今のところ発見された中で最大とされるホバ隕石アメリカ自然史博物館に展示されたウィラメッテ隕石 地表に到達するまでに小片になることもあれば、大きな塊のまま到達することもある。 大気との衝突によって多数の破片になり、楕円形の飛散地域
概説
大きな塊のまま落ちてくることもあり、北アメリカのバリンジャー隕石孔(直径1.2キロメートル)を作った隕石は数万トン から数十万トンの質量だったと推定されている[1]。隕石そのものが発見された中で最大なのは(1988年の『世界大百科事典』出版当時で)ナミビアのホバ隕石で、重さ66トン、幅約3メートルである[1]。 「隕石」を意味する英語 "meteorite
語源
漢字の『隕』は「天空から落ちる」という意味があり、日本でこの漢字を "meteor" の訳語に使ったのは宮里正静(明治8年・1875年)の「隕星石」が最初と考えられている[要出典]。その後、明治20年代には「隕石」あるいは「大隕石」の語が用いられている(ただし、「隕石」という単語自体は中国の歴史書である「漢書」で既に使用されており、卷八十五・谷永杜?傳第五十五に「?未拜,病卒。?言民訛言行籌,及谷永言王者買私田,彗星隕石牡飛之占,語在五行志。」とある[5])。 落下の時には巨大な火球が出現し、夜間は空が真昼のように明るくなることもある[1]。衝撃波による爆音の響く範囲は数十キロメートル四方を越えることも多い[1]。 伝承 さまざまな地域に隕石のことを語ったと思われる伝承や記録が数多く残されている[1]。
落下の様子
『続日本紀』の天平宝字8年(764年)9月18日条の記録として「是夜有星、落于押勝臥屋之上」という記述がある[1]。この他、宝亀3年(772年)6月19日条には、「京内に隕石、大きさは柚子くらいあり、数日でやんだ」とある。
落下の伝承と隕石自体が現存する中で最古のものは、861年に福岡県直方市に落下した直方隕石である[1]。ただし直方隕石が実際に落下したのは1749年とする説も存在する。 金属鉄 (Fe) とケイ酸塩鉱物の比率で大きく3つに分類される。 鉄隕石 (iron meteorite) は、主に金属鉄(Fe-Ni合金)から成る隕石である。分化した天体の金属核に由来する。 ニッケル含有比と構造から、ヘキサヘドライト (hexahedrite) 、オクタヘドライト (octahedrite) 、アタキサイト (ataxite) に大きく分けられる。 オクタヘドライトには、数百万年の時間スケールでの冷却によって生じるウィドマンシュテッテン構造が特徴的な模様として現れる。これはFe-Ni合金の正八面体型結晶構造が出現したものでオクタヘドライトと呼ばれるものの特長である。平均して8.59%程度のニッケル、0.63%程度のコバルト[7]、数ppmの金、白金、イリジウムなどの貴金属も含まれる。また少量のリンおよび炭素などの非金属元素も含まれる。地域によっては、農具などに利用されていた。日本刀の原料(材料)として使われたこともある。 石鉄隕石 (stony-iron meteorite) は、ほぼ等量のFe-Ni合金とケイ酸塩鉱物から成る隕石である。分化した天体のマントルに由来する。パラサイト (pallasite) とメソシデライト (mesosiderite) に分類される。 固体惑星に似た組成の小天体のうち、概ね直径100キロメートル以上のものは内部が融解し得ると考えられている。小天体の内部で融解が生じれば、重力によって成分分離が起こり、密度の大きい金属が中心に集まって核となり、これをより密度の小さい岩石質の物質が包んでマントルとなる。このような小天体が、相互衝突などによる何らかの外力を受けて破壊されたものが、隕石として地表に落下してくる天体小片であると考えられる。中心核が鉄隕石であり、マントル部が石質隕石である。小天体の中心核とマントルは明瞭な境界があるのではなく、境界領域では金属鉄と岩石が混在する。これが石鉄隕石の起源物質であると考えられている。 トロイライトと呼ばれる鈍い金属光沢を持つ硫化鉄鉱物を伴うことが多い。 石質隕石 (stone meteorite) は、主にケイ酸塩鉱物から成る隕石である。球粒状構造のコンドルール (chondrule) があるコンドライト (chondrite) と、ないエイコンドライト (achondrite) に大きく分けられる。 コンドライトは未分化の天体、エイコンドライトは分化した天体の地殻やマントルに由来する。月隕石、火星隕石などはエイコンドライトに含まれる。
分類
鉄隕石(隕鉄)鉄隕石
石鉄隕石石鉄隕石
石質隕石
有史以降の主な被害2013年チェリャビンスク州の隕石落下では火球が目撃され、衝撃波で多数の人が負傷した。