陽だまりの彼女
[Wikipedia|▼Menu]

陽だまりの彼女
著者
越谷オサム
イラスト西島大介[1]
発行日2011年6月1日
発行元新潮文庫
ジャンル恋愛小説ファンタジー
日本
言語日本語
形態文庫本
ページ数253
公式サイトhttps://www.shinchosha.co.jp/
コードISBN 978-4-10-135361-6

ウィキポータル 文学

[ ウィキデータ項目を編集 ]

テンプレートを表示

『陽だまりの彼女』(ひだまりのかのじょ)は、越谷オサムによる日本恋愛小説。2013年、映画作品が公開された。
概要

「女子が男子に読んでほしい恋愛小説No.1」[2]と謳った書店のパネルが話題を呼び[1]、普段は恋愛小説を読まない中年男性の目も留まるようになり売上が急上昇[3][4]。2011年6月に刊行された文庫版は啓文堂書店の「2011年 おすすめ文庫大賞」の1位に輝き[1]、2013年9月には累計発行部数100万部を突破した[5]

2013年10月12日、今作を原作とした映画が公開された。映画公開後さらに売り上げが伸び、10月28日付のオリコン“本”ランキング文庫部門では週間4.6万部を売り上げ、発売から2年4か月で初首位を獲得した[6]
あらすじ

交通広告代理店の営業マンである奥田浩介は、新規のクライアントであるランジェリー・メーカー「ララ・オロール」との初の打ち合わせの場で、まさかの人物と再会した。中学時代の同級生、渡来真緒である。

中学1年生の2学期に浩介のクラスに転校してきた真緒は、バカなうえに団体行動ができず、クラスでいじめにあっていた。しかしクラスメイトの潮田が真緒の髪の毛にマーガリンを塗ったのを見た浩介はついに黙っていられなくなり、真緒をかばって潮田の顔にマーガリンを塗りかえした。おかげで親まで呼び出されて怒られ、クラスの人間からは「キレると何をするかわからない」と煙たがられたが、真緒には懐かれ、なんとなくいつも学校帰りに一緒に浩介の家の裏手にあった銀杏公園に行く習慣もできた。真緒は「夜道を裸で歩いていた」「両親は本当の親ではない」など噂にも事欠かなかったが、浩介にはある日あっさりと「自分は里子だ」と打ち明けるなど打ち解けており、14歳の秋、真緒が漢字の小テストで満点をとった日に銀杏公園で2人はファーストキスをした。キス以降、変わらない真緒に対してぎこちなくなってしまった浩介だったが、浩介が引っ越すことを知ると、引っ越しの前日、真緒は大泣きしながら浩介の部屋にやってきて、ちぎれんばかりに手を振って浩介を見送った。

あの学年有数のバカでチビでいじめられっ子だった真緒は、美しく、そして仕事もしっかりできる女に成長していた。仕事のやりとりを続けるうち、いつからか付き合うようになった2人。浩介のマンションに泊まり、一夜を過ごすようになるまでそう時間はかからなかった。浩介の両親に真緒を紹介すると、大歓迎された。しかし渡来家でもそうなるだろうという予想に反し、渡来家では父親に「真緒と付き合うのはもう少し考えてからでもいいのでは」と反対される。そして真緒が「全生活史健忘」であると話し、生まれてから養父が保護した12年前の5月2日までの記憶がないことを告げる。真緒から聞かされていなかった浩介はショックを受けたが、真緒への気持ちは変わらないと宣言。しかし真緒の両親の態度は変わらず、真緒は怒って浩介を連れて飛び出す。そして酒の勢いで駆け落ちを思いつき、1か月後に結婚。お互いの両親にはケータイで事後報告し、新居へ引っ越した。浩介は犬を飼うことを提案するが、真緒はすげなく却下。そういえばと、浩介は昔ロシアンブルーに似た雑種の仔猫を拾ったことを思い出す。弱っていたらしく、1週間ほど世話をしたが、結局いなくなってしまった。その話を聞いた真緒は「優しいね」と微笑み、「あなたと結婚してよかった」と改めて口にするのだった。

真緒のドレッサーから謎の現金の束を発見してしまったり、真緒の両親から真緒が昔保護された時、本当に全裸で住宅街を歩いていたということを知らされたりと驚くこともいろいろあったが、実は真緒との出会いは偶然ではなく、真緒が浩介を全力で探し求めたゆえの出来事だったことを知り、さらに真緒への愛おしさが募る浩介。しかし当の真緒は度々「疲れた」と呟くようになっていた。浩介がサプライズで贈った指輪もサイズを慎重に調べたにもかかわらずブカブカで、真緒が以前より急激に痩せていることを示していた。心配した浩介は「大丈夫」と主張する真緒を押し切って病院に連れて行き検査を受けさせるが、結果は異常なし。しかし浩介は腑に落ちなかった。

病院から帰ると、隣の部屋のベランダからしゅう君が落ちそうになっており、母親が腕一本で支えていた。浩介も加勢するが支えきれず、もうダメだと思った時、階下の303号室から真緒が飛び出し、空中でしゅう君を抱き留めて一緒に落下。しかし奇跡的に2人大した怪我もせず助かる。念のためにと入院したしゅう君と同じように真緒も入院を勧められたが断り、その帰り道で真緒は浩介に「私の寿命はそろそろおしまいなの」と告げる。愕然とする浩介に、真緒は最後には冗談だと笑ったが、翌朝、元気に朝食の用意をした後、朝刊を取りに行くと外へ出ていった真緒は、そのまま戻らなかった。浩介は焦って真緒を探すが、信じられない事実に直面する。出会った平岩夫婦は昨日の落下事件などまるで無かったかのように冷たい態度で、真緒の実家に電話をしても「どちらの奥田さん?」と言われる。会社から真緒の会社に電話をかけても「渡来?そんな人間はおりません」と言われ、自分以外の全ての人間から真緒の記憶が消えてしまっているのを認めざるをえなかった。しかし部屋には確かに真緒がいた痕跡があり、あちこち調べると、真緒のつけていた家計簿が出てきた。そして再び引き出されていた現金と「私と一緒に口座も消えるはずだから、ここに移しておきます」というメモがついていた。

浩介は真緒を失った悲しみで仕事も手につかないような日々を送っていた。ある日、浩介は駅で真緒の両親に再会する。真緒の両親は浩介のことを覚えていなかったが、夫婦が最近「まお」という名前の仔猫を飼いはじめたことを知った。そこで浩介はふと思い当たり、大型書店で「ネコ」に関する本を読んだ。そして真緒の性格や行動、仕草、寿命や死期を悟った時に姿を消す行動など、全てが「ネコ」に当てはまることに気づく。浩介はCDショップでアルバムを買い、真緒がいつも口ずさんでいた「素敵じゃないか」の歌詞ブックレットを改めて見ると声も抑えず泣いた。それは真緒の思い描いた二人の結婚生活そのままだった。帰り道、浩介の心には本に書いてあった「猫は九生を持つ」ということわざが引っ掛かっていた。浩介が「真緒のは、いくつめ(の命)だったのかな?」と呟くと「二つ目だよ」と、背後から真緒の声がした。振り返ると浩介の足元に一匹の仔猫がすり寄ってきた。その仔猫の首には指輪が下げられていた。浩介はその場にひざまづき、「三つめの命」を抱き上げた。
登場人物
奥田 浩介(おくだ こうすけ)
鎌ヶ谷西中学出身。3年の1学期に隣町の松戸に転校したが、それまでは真緒によく勉強を教えていた。松戸の中学から県立高校に進み、一浪して多摩の大学に入学。同時に高幡不動で一人暮らしを始めた。ギリギリの成績だったが4年で卒業し、西新宿の交通広告代理店「日本レイルアド株式会社」に就職し、営業として働いて2年目になる。現在は上井草のワンルームマンションに住んでいる。昔から鉄道好きで、大学では鉄道サークルに所属していた。4つ年下の弟がいる。
渡来 真緒(わたらい まお)
中学1年の2学期に奥田のクラスに転入してきた。当時は中学生にもかかわらず分数の割り算レベルで四苦八苦するほど勉強ができず、「学年有数のバカ」と謳われていた。小顔で愛らしい顔立ちをしていたが、チビでいじめられっこで注意力散漫、すばしっこさだけが取り柄だった。団体行動が苦手。当時、どんなに冷たくあしらっても浩介にまとわりついていた。親とは血がつながっていないが、中3の秋に養子縁組をしている。中学卒業後は中の下レベルの県立高校に進み、そこで猛勉強して名門女子大に進学。その後、近年成長が著しい恵比寿にあるランジェリー・メーカー「株式会社ララ・オロール」に就職した。浩介が鉄道系のサークルに所属していると確信し、大学の鉄道サークルのHPをあたったり合コンに次々と参加したりして浩介を探していたが、ついに浩介の就職先を探し当て、理由をつけてその会社との仕事をセッティングした。現在25歳で仕事は3年目。ショートヘアも今は肩の下まで届くほどのロングヘアとなり、ウェーブがかかっている。昔と変わらず、くつろいでいる時には背中が丸まる。豪快だが小食。気まぐれ。機嫌が良いとザ・ビーチ・ボーイズの「素敵じゃないか」をよく鼻歌で歌う。
真緒の養父母
養父は高卒の警部補。来年の春で定年を迎える。禁煙していたが、浩介が初めて挨拶をしにきた日に解禁してしまう。
平岩夫婦
浩介と真緒が結婚後に住む西武池袋線大泉学園駅から徒歩10分のマンション402号室の隣に住む夫婦。夫は浩介より5歳くらい年上。しゅう君という人懐っこい性格の一人息子がおり、真緒と仲良くなる。
潮田(うしおだ)
中学1年生の時のクラスメイト。真緒の髪にマーガリンを塗るなどしていじめていたが、中3の時には勉強面で真緒に抜かれてしまう。大人になってから、鎌ヶ谷駅の小さなイタリアンレストランで浩介と真緒が2人一緒にいる時に偶然再会する。姓は山本に変わっており、7-8歳の息子「亞呂覇(あろは)」がいる。相変わらず人を小馬鹿にした態度や、品のない言動は変わらない。息子も行儀が悪い。
田中
「日本レイルアド社」での浩介の先輩。10年目。コンペで競合他社を何度も打ち負かす話術をもっている。鈍感な浩介とは対照的に着眼点が鋭い。独身。
梶尾
「ララ・オロール」での真緒の上司。広報部部長。
東海林(しょうじ)
「ララ・オロール」の依頼で大型セットボードを手掛けた外部デザイナー。
山井 百香(やまい ももか)
あだ名:モモ。真緒の大学時代の親友。2人の婚姻届の証人になっている。酒豪。既婚。
金沢
あだ名:金ちゃん。真緒の友達。編集者。
書籍情報

単行本:
新潮社、2008年4月20日発行、ISBN 978-4-10-472302-7

文庫:新潮文庫、2011年6月1日発行、ISBN 978-4-10-135361-6

映画

陽だまりの彼女
監督
三木孝浩
脚本菅野友恵


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:146 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef