陶芸
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伝統的な乾燥棚に置かれた焼成前の「生素地」
アメリカ合衆国インディアナ州フィッシャーズ市、生きた歴史の博物館「コナー・プレーリー(英語版)」にて展示)ブルガリアトロヤンの伝統工芸と応用美術ミュージアムにて再現された伝統的な窯場

陶芸(とうげい、: Pottery)とは、粘土を成形して高温で焼成することにより陶磁器などを作る技術のこと。陶磁器以外にも種類はある。焼きものとも呼ばれる。生業として陶芸を行う者を陶工もしくは陶芸家と呼ぶ。

焼きものは施釉しない土器(および高温で焼成したb器)と、施釉した陶磁器(陶器磁器)とに大別されるが、この区分には地域や文化によりばらつきがあり、欧米では施釉されたものもb器(ストーンウェア)に含み[1]、また中国では土器と陶器を区別しない[2]九谷焼で使用された窯

造形方法には、手びねり、を用いて土の形を整える方法、轆轤(ろくろ)の上に置き手足や機械で回しながら両手で皿や壷などの形を作っていく方法などがある。焼き方には、窯を用いない「野焼き」や、七輪を用いる「七輪陶芸」などという手法もある。土の種類やこね方、、そして焼く温度など、様々な要素が作品に貢献する。したがって、世界中にいろいろな技法が存在する。

陶芸は人類のもっとも古いテクノロジーおよび芸術形式のうちのひとつであり、今日もなお主要な産業であり続けている。考古学者たちのよる定義では、人形などの器ではないものや、轆轤によって作られたのではないものは、同様の過程で、おそらくは同じ人々によって作られたセラミックス製品であっても陶芸品に含めない傾向にある。
胎土

陶芸では、粘土の素地(胎土)を求める品物の姿に成形し、で加熱することで強度を高め、硬化させ、形を固定させる(時には気泡のため壊れてしまうこともある)。陶芸に用いられる素材の性質には地域により大きなバリエーションがあり、このために各地域に独特の焼きものが生まれる。ある目的に適した胎土を得るために粘土とその他の各種素材が混合されることが普通である。

成形を行う前に、胎土の中に入った空気を取り除く必要がある。この作業は脱気と呼ばれ、真空土練機を使うか、もしくは手で土揉み(土練り)して行われる。土揉みには胎土全体の水分含量を均一にする働きもある。胎土の脱気・土揉みが済むと、さまざまな技法を用いて成形が行われる。成形した胎土は焼く前に乾燥される。乾燥にはいくつかの段階がある。「半乾き」(Leather-hard)は水分がおよそ15%の段階を指す。この段階の胎土は非常に堅固で、可塑性は大きくない。削りや、取っ手の取りつけなどはこの段階で行われることが多い。「絶対乾燥」(bone-dry)は水分が(ほぼ)0%となった段階を指す。焼く前のものは生素地(greenware)と呼ばれる。この段階の胎土は非常に脆く、簡単に壊れてしまう。
成形の方法

陶芸の成形にはさまざまな方法がある。
手びねり手びねり(ネパールカトマンズ

手びねりは最初期から存在した手法である。球、紐(紐作り)などの形をした粘土を手でこねて形を作る。ほかに、板状に伸ばした粘土(タタラ)をつなぎ合わせたり皿状に成形したりするタタラ成形や、中をくり抜いた粘土塊をつなぎ合わせるくり貫きといった手法がある[3]

手で成形した器の部品は、胎土と水の水性懸濁液であるスリップ(英語版)(泥漿)を用いて結合されることが多い。手びねりは轆轤による成形より時間がかかるが、器の大きさや形をよりきめ細かく制御することができる。迅速で反復しやすいほかの技法はテーブルウェアのようなぴったり合った揃いの器を作るのにより適している一方で、ただ1つしかない芸術作品を生み出すには手びねりの方がよいと考える陶芸家たちもいる。
轆轤「轆轤」も参照轆轤を用いて成形を行う男性(トルコカッパドキア電動の轆轤で成形する陶工Help:音声・動画の再生昔ながらの足踏み式轆轤(蹴轆轤)(ドイツエアフルト

轆轤による成形では、粘土の球が鏡盤と呼ばれる回転台の中央に置かれ、これを陶工が棒、足、もしくは速度を制御できる電動機を用いて回転させる。

急速に回転する轆轤の上で、柔らかい粘土の球が手で押され、潰され、上方もしくは外側へと引かれ、空洞のある形が作られていく。粗い粘土の球を下方と内側に押して完全な回転対称とする最初の工程は「心出し」「土殺し」と呼ばれ、以降の工程に入る前に習得すべき重要な技能である。それから、穴を開け、広げ、底を作り、壁面を挽き上げ、厚みを均等にし、切り揃えて形を整え、足を作るなどといった作業を行う。

轆轤により一定水準の器を作るためにはかなりの技能と熟練を要し、高い芸術的価値を持つ作品も作り出せる一方で、再現性には乏しい[4]。回転による成形という性質上、円形の回転対称形しか作ることができない。成形の後、型押し、盛り上げ、線刻、溝彫り、彫刻などが施されることもある。陶工の手のほか、ヘラ、@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}金床とリブ[訳語疑問点]、切除や穴開けのためのナイフ、鉋、切り糸なども用いられる。さらに取っ手、蓋、足、注ぎ口などを取りつけることもある。
粉体成形

粉体成形は、粒状にした半乾きの粘土を型に入れ圧力をかけて成形する方法である。粘土は小孔のあるダイスによって型に押し込まれ、小孔を通し高圧の水が注入される。噴霧乾燥により、5 - 6%ほどの水分を含む精細で自在に流れる粉流体の粘土が作られ用いられる。粉体成形はタイルの製造に広く用いられるほか、皿にも用いられるようになりつつある。
射出成形

射出成形熱可塑性樹脂や金属部品の成形に長年用いられてきた方法で、食器産業にも応用されるようになった[5]。複雑な形をした品目の大量生産に向くこの技法の大きな利点のひとつは、ティーカップを取っ手も含め1つのプロセスで生産できることであり、取っ手を取り付ける工程が省けるのみならずより丈夫なものが作れる[6]。成形ダイスには50 - 60%の未焼成の陶土の粉体と、結合剤(英語版)、潤滑剤可塑剤ならなる40 - 50%の有機添加剤との混合物が供給される[7]。この技法はほかの成形法ほど広くは使用されていない[8]



ジガリングとジョリイング

映像外部リンク
ジガリング

ジガリングとジョリイングは轆轤の上で行われ、器を画一的な形にするのにかかる時間を短縮する。ジガリング(: Jiggering)は、轆轤の上の石膏型にセットされた胎土に、成形した工具を接触させる操作である。ジガー工具が一方の面を、型が他方の面を成形する。ジガリングは皿のような平らな器の生産にのみ用いられるが、カップのような深みのある器(ホローウェア)にもこれに類似した技法であるジョリイング(: jolleying)が用いられる。これらの技法は遅くとも18世紀には陶芸に用いられていた。工場での大量生産では通常これらは自動化されており、半熟練労働によって操業することが可能となっている。
ローラーヘッドマシン

映像外部リンク
ローラーヘッドマシンによる成形

ローラーヘッドマシンはジョリージガー同様に回転する型の上で成形を行うが、ジガー工具の固定されたプロフィールの代わりに回転式の成形具が使用される。回転式の成形具は成形される器と同じ半径の浅い円錐であり、製造する器の背面の形に作られている。製造する製品の大きさにもよるが、1分に12個ほどを比較的単純な労働によって成形することができる。この技術は第二次世界大戦直後のイギリスでサービス・エンジニアーズ社により開発され、すぐに世界中の製造業者に採用された。今日も平らな器(フラットウェア)製造の主流であり続けている[9]
圧力鋳込み

特別に開発された高分子材料により、4.0MPa(メガパスカル)までの外圧に耐える型を作ることができる。これは毛細管力が0.1 - 0.2MPaほどの圧力相当となる石膏型でのスリップ鋳込みよりもはるかに大きな値である。高圧は非常に高速な鋳込み速度をもたらし、よって製造サイクルも速くなる。さらに、鋳込み物を取り出す際に高分子材料の型に高圧の空気をかけることで、同じ型で即座に次の鋳込みサイクルを開始することができる。石膏型では乾燥に長時間を要するのである。また高分子材料は石膏よりもはるかに耐久性に優れるので、よりよい寸法許容差を持つ成形品を作ることができ、型の寿命もずっと長い。圧力鋳込みは1970年代に衛生陶器生産のために開発されたが、近年ではテーブルウェアにも応用されるようになっている[10][11][12][13]

小規模な工房などでは、轆轤で水挽きした素地を型に入れ叩いて成形する型打ち、型起こしと呼ばれる方法が行われている。轆轤成形には適さない皿や鉢の生産に向いた手法であり、日本ではおもに磁器の生産に使われ江戸時代初期から有田焼などで行われている[14]
ラム鋳込み

ラム鋳込み(英語版)は、小孔のある2つの鋳込み板の間で調合した胎土に加圧してテーブルウェアや装飾品を成形する工場での工程である。加圧後には、鋳込み板越しに圧縮空気を吹きつけることで成形したものを取り外す。
スリップ鋳込みスリップ鋳込み(英語版)


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