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限界集落(げんかいしゅうらく)とは、地域人口の50%以上が65歳以上の集落。若者が流出し、冠婚葬祭などの社会的共同生活を維持することが限界に近づきつつある集落のことである。55歳以上が過半の場合は「準限界集落」と言われる[1]。高知大学人文学部教授時代の大野晃が1988年に提唱した概念[2]。
2015年の国土交通省の調査では、今後10年以内に消滅する恐れがあると予測される集落は570あり、いずれ消滅する恐れがあるとみられる集落と合わせると、過疎地域全体の4.8%(3,614集落)になる。 日本の人口が増加していた昭和中期までの時代でも、山奥で交通が不便、豪雪などの自然災害といった理由で、住民全員が離村したゴーストタウンは各地にあった(福井県大野郡西谷村〈現:大野市〉など)。少子化と都市部への人口集中が顕在化した昭和後期から平成にかけて、外部との道路が整備され災害への対策がとられていても、限界集落やその予備軍となる地域が増えている。 日本国政府の調査では、住民の半数以上が65歳以上の集落は、2015年度時点で全国に1万5568ある。5年前との比較で174集落が消滅した[3]。高齢者が中心となった集落では、子育て世帯や中年以下の転入が存在しないか、極めて少ない状況が続くと、住民の死去や転出に伴い、集落の維持が難しくなり、無人化する。 こうした事例は、中山間地域や離島で目立つ。このような状態となった集落では、住民自治、生活道路の管理、冠婚葬祭など共同体としての機能が急速に衰えてしまい、やがて消滅に向かう。共同体として存続するための「限界」という意味で「限界集落」と表現されている。「限界集落」にはもはや就学児童など未成年者の世代が存在せず、独居老人やその予備軍のみが残っている集落が多く、病身者も少なくない。 社会学者である大野晃が、高知大学人文学部教授時代の1988年に最初に提唱した概念である[2]。大野は元々、林業の衰退と再建を研究テーマにしていた。輸入木材によって日本国内の林業は衰退し、山村の人口減と高齢化、それにより、手入れの行き届かなくなった人工林(ことにスギやヒノキの針葉樹林)の荒廃、さらには集落そのものの消滅が進みつつあった。 大野は、集落の実態調査を進めてゆくうち、その現状を指摘するためには「過疎」という用語では実態とずれていると思ったという。そこで大野は、より深刻な実態を指摘するため、敢えて厳しい批判を受ける事を覚悟の上で「限界自治体」「限界集落」という用語を生み出すに至った。なお最初にこの概念が浮かんだのは、高知県吾川郡池川町(現仁淀川町)の岩柄集落である。 大野は、65歳以上の高齢者が地方自治体総人口の過半数を占める状態を「限界自治体」と名付けた。「限界集落」は、この定義を集落単位に細分化したものである。限界集落に次ぐ状態を「準限界集落」と表現し、55歳以上の人口比率が50%を超えている場合とされる。また、限界集落を超えた集落は「超限界集落」から「消滅集落」へと向かう。 大野によれば、2000年(平成12年)の時点で「限界自治体」となっているのは、高知県長岡郡の大豊町のみであるが、2015年(平成27年)には51自治体、2030年には144自治体が「限界自治体」に転落する(ただし、2005年(平成17年)以降の市町村合併は考慮に入れていない)。 2005年には、大豊町に加えて、群馬県甘楽郡の南牧村と福島県大沼郡の金山町および昭和村の1町2村が限界自治体となった。2010年の国勢調査によれば、限界自治体の数は11町村である。具体的には仁淀川町、群馬県多野郡神流町、奈良県吉野郡川上村、徳島県勝浦郡上勝町、長野県下伊那郡の天龍村、大鹿村、和歌山県東牟婁郡北山村が該当する。 2015年の国勢調査では、限界自治体の数は18町村である。具体的には、南牧村、天龍村、川上村、金山町、神流町、大豊町、昭和村、上勝町、仁淀川町、奈良県宇陀郡御杖村、吉野郡東吉野村、山口県熊毛郡上関町、和歌山県東牟婁郡古座川町、山口県大島郡周防大島町、長野県大鹿村、福島県大沼郡三島町、青森県東津軽郡今別町、長野県下水内郡栄村が該当する。なお、北山村は該当しなくなった。財政再建団体となった北海道夕張市は、2006年(平成18年)時点で65歳以上比率が41%と市では最も高齢者比率が高く、2015年国勢調査では48.6%であった[4]。2017年5月末、夕張市は65歳以上人口の比率が50%を越え、日本の市としては初の限界自治体となった[4]。 2020年の国勢調査では、限界自治体の数は60市町村である。市で該当するのは、北海道歌志内市、夕張市、石川県珠洲市、高知県室戸市、土佐清水市の5市である。他に55町村(具体的には、北海道上砂川町、神恵内村、松前町。青森県今別町、外ヶ浜町、深浦町。岩手県西和賀町。秋田県上小阿仁村。福島県金山町、昭和村、三島町、飯舘村。群馬県南牧村、下仁田町、神流町。千葉県御宿町。東京都檜原村、奥多摩町。石川県能登町。長野県天龍村、根羽村、栄村。静岡県西伊豆町。愛知県豊根村、設楽町、東栄町。三重県南伊勢町、大紀町。京都府笠置町。奈良県川上村、東吉野村、黒滝村、吉野町、上北山村、天川村、野迫川村、御杖村、曽爾村。和歌山県古座川町。鳥取県日南町、日野町。広島県安芸太田町。山口県上関町、周防大島町。徳島県上勝町、神山町、牟岐町、那賀町。
概要
提唱の経緯