仏教用語
アビダルマ・コーシャ
サンスクリット語Abhidharmako?a-bh?sya
(IAST: Abhidharmako?ak?)
チベット語???????????????????
(chos mngon pa'i mdzod)
中国語阿?達磨?舍論
阿??磨?舍?
日本語阿毘達磨倶舎論
(ローマ字: Abidatsuma-kusharon)
朝鮮語???????
(RR: Abidalma-Gusaron)
英語Sheath of Abhidharma
テンプレートを表示
阿毘達磨倶舎論(あびだつまくしゃろん)は、ヴァスバンドゥ(世親)を作者として、4世紀-5世紀頃にインドで成立したとされる[1]、部派仏教の教義体系を整理・発展させた論書である[2]。サンスクリット原典の題名は『アビダルマ・コーシャ・バーシャ』(梵: Abhidharma-ko?a-bh??ya、略称: AKBh)[3][注 1]。
サンスクリット原典のほかに、2種類の漢訳本とチベット語訳本が現存している。漢訳本は、一方は真諦訳『阿毘達磨倶舍釋論』(略称『倶舎釈論』)22巻であり[4]、もう一方は玄奘訳『阿毘達磨倶舍論』(略称『倶舎論』)30巻である[5][6][7][注 2]。倶舎宗が伝統的に後者の玄奘訳を用いてきたため、玄奘訳に基づく呼称『倶舎論』が浸透した[6][8]。真諦訳は『旧倶舎』『旧訳』とも呼称され区別された[9]。
20世紀にサンスクリット原典が発見されてからは、漢訳に依らない研究が行われている。 ヴァスバンドゥ(世親)が作成した『アビダルマ・コーシャ・カーリカー』(梵: Abhidharma-ko?a-k?rik?)の598偈の本頌に、ヴァスバンドゥ自ら註釈(自註)を書き加えたものが『アビダルマ・コーシャ・バーシャ』(梵: Abhidharma-ko?a-bh??ya)である。玄奘が漢訳する際には、『アビダルマ・コーシャ・カーリカー』を『阿毘逹磨倶舍論本頌』[10]と訳し、『アビダルマ・コーシャ・バーシャ』を『阿毘達磨倶舍論』と訳した。したがって、『倶舎論』とは厳密にはその注釈部分(バーシャ、長行釈)のことである。 「アビダルマ」の語義については複数の解釈があるが、『阿毘逹磨倶舎論』の自注によれば、「阿毘達磨」 (abhidharma, アビダルマ) とは、 "abhi+dharma であり、それぞれ「対」と「法」と訳され、「法に関して」という意味である[11]。また、「倶舎」(ko?a, コーシャ)とは入れ物、蔵、宝物庫の意味である。漢訳の際には、以上のように、意味を訳すのではなく音写によって訳された。よって、阿毘達磨倶舎はアビダルマ・コーシャ(梵: Abhidharma-ko?a)の音写であり、「アビダルマを収蔵する蔵」もしくは「アビダルマという蔵から取り出されたもの」という意味である[12]。対法蔵とも訳される[12]。『アビダルマ・コーシャ』が『阿毘達磨倶舎論』とみなされることもある[13][14]。 本書の思想史上の位置付けとしては、以下のように複数の見解がある。 仏教学者の櫻部建は、説一切有部のアビダルマ論書が多数世に現れたのちにその業績を継承して、その上にさらに新しい進展を加え、およそアビダルマ論書の一つの完成態というものを示した[15]ものであると述べている。また、経量部の論書として理解しようとする見解もある。
概要