防衛記念章
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第3種夏服に防衛記念章を着用した香田洋二海将
※上段二つは外国勲章等の略綬

防衛記念章(ぼうえいきねんしょう)とは、自衛官がその経歴を記念して制服に着用することができる徽章をいう。防衛記念章そのものは略綬ではないが、徽章の形態としては略綬式を採用している。狭義の勲章とは異なるもので、記念章従軍記章表彰歴章等に相当する、自衛官特有の栄誉である。従来、常備自衛官以外の自衛隊員が同じ条件を満たしても防衛記念章を身につける事はできないものとされ、防衛記念章を着用した自衛官が退官し、予備自衛官等に任用した場合は人事書類にて記録されてきた。しかし、2014年8月より予備自衛官及び即応予備自衛官についても訓練招集期間中における防衛記念章の着用が認められるようになった[1]
概要防衛記念章を着用した吉田正航空幕僚長(中央)と1等空佐(右)

勲章略綬類似の形状(長方形)をしており、大きさは横36ミリメートル、縦11ミリメートルである。略綬とは元々、勲章自体を身につけては華美に過ぎる場に於いて勲章に付属するリボンを折って代用としたものである。つまり、外国の軍人が胸に着ける略綬は勲章等(「勲章等着用規程」(昭和39年4月28日総理府告示第16号)第1条、第11条第1項4号)に付属するものであるのに対し、防衛記念章は略綬型のもの自体が章となっている。そのため、自衛官の間では「グリコのおまけ」とも呼ばれている[2]

防衛記念章の制式及び着用規定は防衛記念章の制式等に関する訓令(昭和56年防衛庁訓令第43号[3])により定められており、自衛官の服装のうち、常装、第1種礼装、第2種礼装及び通常礼装に着用することができるとされている。記念章単体では着ける事が出来ない構造になっており、専用の着用台(留めピン付きの連結金具)に通して左胸ポケット上に着ける。この着用台は記念章の数ごとに固有のものである。なお自衛官が外国勲章を受章した場合、その略綬を防衛記念章と一緒に並べて着けられる。

隊員の士気の高揚及び魅力化対策の一環として、防衛記念章はその着用資格が発生する(受章)ごとに1つが配付される(一部を除く)。同一記念章2つ目以降はその数に応じた銀・金の桜花が配布されるほか、自衛隊員として初回の受章については1個用着用台も配布される。なお、これは「一回限り」の配布であり、経年劣化による交換や着回し用にもう1セット作成する場合等は、自衛隊員が自費で購入することとなる。また、着用台については、2つ用以上は自費購入となる。つまり、章・桜花自体は受賞毎に配布されるが、着用台は章の数が増える毎に自費購入の必要がある[4]

着用手続きについて陸上自衛隊では、自衛官が着用資格(防衛庁訓令昭和56年11月20日第43号第2条各項)を得ると、部隊長が管理する「防衛記念章着用資格記録簿」にその旨が記載され、それに基づいて「防衛記念章着用資格証」が交付される。また、対象者が既に資格証を交付されている場合には、その資格証に追記される。そして、着用資格者が防衛記念章を購入する場合は資格証を提示するように規定されている[5]。海上自衛隊も同様であるが、記録簿と資格証はそれぞれ「防衛記念章着用記録票(甲)(乙)」及び「防衛記念章着用資格通知書」と称される[6]

授与に関しては着用資格を元に中隊長以上の部隊長による裁量で表彰者が決定し、主として定期表彰の他に災害派遣等の功績の場合は派遣終了し部隊が恒常勤務に移行した後に適当な期日をもって表彰式が行われる。

また、授与を行う部隊長の役職と階級によっても授与される賞詞の区分は規定によって定められている[注 1]

防衛記念章の調達は公募入札によって行われ、防衛省入札公告で「新規防衛記念章」が告知される[7]
沿革

創設時の自衛隊には旧軍経験者が在籍しており、戦前に受章した勲章・記章の略綬を着用する者もいたが、戦後の叙勲基準では自衛官が現職の間に叙勲されることが無くなり、従軍記章や記念章も発行されることが無くなったため、旧軍の軍歴が無い当時(昭和57年)の現職自衛官は勲章や略綬を正当な権原をもって[注 2]着用できる場合がほとんど無くなっていた[注 3]。他方、他国の軍人は制服に多数の勲章類を保持しており、特に米軍では記念章・従軍記章が数多く制定されているため、常装には大量の略綬を着用している。そのため、外国軍人との外見上の均衡をとるという必要性もあり、1982年(昭和57年)4月1日に防衛記念章制度が設けられた。

制定当初は15種類だったが、その後種類が増加している。特に、自衛隊の活動領域が狭かった昭和時代には「防衛記念章の制式等に関する訓令」の改正はわずかに3回しか行われていないが、平成に入り自衛隊の活動領域が飛躍的に拡大すると共に、同訓令は平成元年から平成10年末までの間に8回も改正が行われ、授与対象が拡大(2017年6月の改正時点で48種類の防衛記念章が存在)している。
外国との均衡アメリカ海兵隊のピーター・ペース海兵隊大将。ブルードレスに勲章の正章(左胸)を着けた正装に略綬状のユニットアワード(右胸)を併用している。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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