阪堺電気軌道161形電車
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阪堺電気軌道モ161形電車
モ166(2014年5月)
基本情報
運用者阪堺電気軌道
製造所川崎車輛
田中車両
大阪鉄工所
製造年1928年 - 1931年
製造数15両
主要諸元
軌間1,435 mm
車両定員90人
自重18.6 t
全長13,716 mm
全幅2,513 mm
全高3,732 mm
主電動機SE104-B
主電動機出力30kw×4
駆動方式吊り掛け駆動方式
出力120 kW
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阪堺電気軌道モ161形電車(はんかいでんききどうモ161がたでんしゃ)は、阪堺電気軌道路面電車車両。日本において定期運用される電車としては日本最古であり[1]、定期運用を退いた動態保存車を含めた場合でも日本で5番目、路面電車では2番目に古い車両である[2]2018年(平成30年)には現役稼働年数が90年となっている。
概要川崎車輌の車内銘板(モ161号)車内(モ162号)

1928年(昭和3年)に南海鉄道が投入した車両である。161 - 170が同年に川崎車輛(現・川崎車両)で、171 - 176が1931年(昭和6年)[3]に田中車両(現:近畿車輛)と大阪鉄工所(現:日立造船)で製造された。

1927年(昭和2年)に川崎造船所(現:川崎車両)で製造されたモ151形とほとんど同型(ただし、室内の屋根構造等に違いが見られる)の車体をもつ13メートル級(新製時は14メートル超)大型車である。

戦後に173(初代)・164(初代)・176の戦災車を含む3両が制御器を多段式間接制御器 (PM-2A) に変更してモ301形の301・303・304になり、一方、モ151形の155・160が改造されて174(2代)・175(2代)として編入され、あわせて空番が詰められて、計15両になった。

1976年(昭和51年)からモ301形とともにワンマン運転対応改造が施工された。前面に方向幕を設置し、運転台側から向かって右側の扉を閉鎖して2扉車とされた。161 - 168については上町線・阪堺線におけるワンマン運転での使用開始後も車掌乗務でも運行可能な兼用形で改造され、ワンマン化されなかった平野線にも使用された。

運行車両数の削減により、モ301形になった車両や151形より編入した車両および廃車や休車となった163・167・169・171・172・173を除いて営業運転に使用されていたが、安全に関わる重要機器に問題が発生したのと1001形「堺トラム」が導入されたのに伴い、168は2016年に廃車、165・170の2両も2017年に廃車となっており、現在、営業運転可能な車両は161・162・164・166の4両のみである。

改番前後対照表改番後161162163303165166167168169164171172301170173304
改番前161162163164165166167168169170171172173174175176



機器類運転台装置(モ162号)ICカードリーダー付きの運賃箱(モ170号)

台車主電動機もモ151形と同一だが、平野線で連結運用を行うために製造されたため、連結器総括制御可能な間接非自動制御器を装備して落成した。低床路面電車としては日本で最初の連結総括運転車両である。連結運用は落成直後から1961年5月まで実施されていたが、終了後に連結器は撤去された。そのため外見上モ151形とはほとんど違いがなくなっている。

登場直後は前照灯尾灯が腰部にあり、前面バンパー部や前面屋根部にも意匠の違いが見られ、見た目の雰囲気が大きく違う。その後、集電装置Yゲル(のちにパンタグラフ)に変更されるにつれ、尾灯・前照灯とも頭部に移植された。

かつて連結運転を行っていたことから、空気ブレーキSMEを使用していたが、連結器を撤去して連結運転が不可能になっていることや、保守管理の手間を減らす目的で、1980年(昭和55年)の南海電気鉄道からの分社化に際してSM-3に取り替えている。

昭和一桁年代に製造された旧形車両ではあるが、過去に冷房化が検討されたことがある。しかし、屋根構造が枕木方向に細い鋼製梁が渡り、そこに木造キャンバス張りという古典的なもので、冷房装置を搭載することは不可能と判断され、計画は白紙になった。

2013年から2014年にかけてICカード導入に伴い、カードリーダーの設置や自動放送の更新が行われた。一方で行先表示機は更新されず、阪堺電軌の車両では唯一幕式が使用されている。

2020年夏季において、全車前面のワンマンプレートが取り外された。
運用

2018年(平成30年)12月の時点で161・162・164・166の4両の現役車輌が在籍している。同車は車齢90年を経ているが現役の車両であり、特に住吉大社初詣特別輸送時には収容力の大きさを生かし、営業運転可能な4両が「フル稼働」(通常は162・164・166のみで、161は待機)している。

特に夏季(6月後半 - 9月末)においては、モ601形が落成した1998年以降平日の日中と土曜日・休日の運用から外れ、2005年以降は夕方ラッシュ時の運用からも外れた。平日の朝ラッシュ時も運行本数の削減および運用の効率化により運用数が年々減少したが、2013年までは冷房付きの車両が通常期においても1編成不足するため、朝ラッシュ時に恵美須町駅 - 我孫子道駅間1往復のみの運用に限定的に入っていた。しかし2014年度以降は阪堺線の運転本数削減と1001形の投入により車両数が充足したため、同年をもって夏季のすべての定期運用から撤退し、全車が冷房付き車両故障時のための予備車として我孫子道車庫(大和川検車区)において終日待機している。

通常運用は前述のとおり秋季?春季(11月 - 6月前半頃)に限定されるが、夏であっても貸切運用に入ることがある。近年はその古風な車体が人気を呼び、イベント使用に登用され[4]、各種復刻塗装の登場などで注目が集まりつつあるが、出庫するのは1?2両程に限られる場合が多い。朝は遅めに出庫し、夜は早めに入庫することが多く、初電終電の運用には基本的に入らない。また、2016年頃からは大阪市内での阪堺・上町線交互運用が主で、浜寺運用には入らない事が多いが、貸切の場合は全区間で運用される。なお、2015年11月29日は稼働可能全車が全線で運用された。内訳はモ161とモ162が貸切運用で、このうちモ161は鉄道写真家の広田尚敬傘寿記念[5]の貸切電車となり、残るモ164とモ166は定期運用であった[6]

なお、夜間の保線作業時にはトロッコ(レール運搬車)の牽引や新車搬入時の牽引車としても使用される。
昭和40年代復元車161号(昭和40年代復元車)
方向幕に車体と同色のカバーが取り付けられている車内(昭和40年代復元車)最新鋭車輌モ1001形との並び

161は阪堺電気軌道開業100周年を記念し、2011年(平成23年)に1965年(昭和40年)当時の状態に復元され、同年の路面電車まつりにてお披露目された。1963年からの連結器撤去および1965年からのパンタグラフ化等を踏まえている。

「ワンマンカー」の表示板を撤去、ワンマン表示は窓へのステッカー貼りに変更し、サボ(行き先板・通常は「貸切」と「回送」)を使用して運行する。方向幕にはカバーを取り付けて隠すことができる。ニス塗りのドアや鉛丹色の屋根など、162・163と比べて、より忠実に当時の塗装が再現されている。また、広告枠は正面に前後一箇所ずつの2枠であったが、側面に2枠ずつの計4枠になっている。[7]

車内においても、側壁や鎧戸といったあらゆる箇所に塗られていた薄緑色のペンキを剥がし、ニス塗りの車体や真鍮装飾等が蘇っているほか、撤去されていた信鈴(合図ベル)が復活した。2016年からは室内灯が電球色蛍光灯に変更されている。この改装以降、同車はほぼ貸切専用となり[8]、通常運用に着くのは正月の「大輸送」時(それも「積み残し」が多数発生した時のみ)になっている。ただし2015年11月19日から11月30日まで、運用開始88年(米寿)記念として平日朝限定で、天王寺駅前・住吉公園間と天王寺駅前・我孫子道間でそれぞれ1往復ずつの通常運用に入った[8]ほか、12月26日には天王寺駅前?浜寺公園間で、2016年3月27日・4月2日には天王寺駅前・恵美須町?我孫子道間で終日運用に入った。

2021年4月24日に天王寺駅前?我孫子道間を3往復し入庫した。クラウドファンディングにより大規模修繕を行い、2021年12月2日からは、修復完了の記念として一般運用に就いている[9]
塗装

1928年の製造当時から1967年まで、車体はモスグリーン単色塗り、屋根は鉛丹、扉等木造箇所は茶色ニス塗りであった。なお、前年に登場したモ151形は木造車に合わせて車体も茶色(現在の164・166の塗装、資料が残されていないために正確な塗色は不明)であったが、本形式の登場後はモスグリーンに統一されていた。

1967年以降はモ501形モ351形と同様、下半阪堺ダークグリーン/上半クリーム色/正面が金太郎塗りの車体色になるが、@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}1975年3月に車両色統一化のために南海ダークグリーン単色(ただし扉も塗りつぶし、屋根は黒である点が旧塗装と異なる)に変更された。


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