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コオロギ上科 Grylloidea
エンマコオロギ Teleogryllus emma
分類
コオロギ(蟋蟀、蛬、蛩、?)は、昆虫綱バッタ目(直翅目)キリギリス亜目(剣弁亜目)コオロギ上科またはコオロギ科またはコオロギ亜科に属する昆虫の総称であり、人によって「コオロギ」の概念は異なる[1][2][3]。別名には「しっそつ」「しっしつ」「しっしゅつ」がある[3]。日本ではコオロギ科のうちコオロギ亜科に属するエンマコオロギ、ミツカドコオロギ、オカメコオロギ、ツヅレサセコオロギなどが代表的な種類として挙げられる[2][3]。
コオロギは鳴く虫として知られ、コオロギを飼ってその鳴き声を楽しむ文化は世界各地で見られる[4][5]。日本では奈良時代から和歌に詠まれたり、江戸時代には虫を売ることを生業とする「虫屋」や「虫問屋」が存在していた[4][5]。
食用として、中国南部や東南アジアでは昔から日常的に食べられ、日本でも一部地域で常食されていた記録がある[6][7][8][9]。2013年に国連食糧農業機関(FAO)は、将来の食糧問題の解決策の1つとして、昆虫類の活用を提案する報告書を発表し、世界的に研究、商品化に向けての取り組みが進んでいる[10][11][12]。 成虫の体長は10mm前後 ? 40mmほどで、エンマコオロギ(26mm)、オカメコオロギ(14mm)、ツヅレサセコオロギ(20mm)などであり、アリヅカコオロギ
体の形態
体色は黒 - 茶色のものが多い[2]。頭部には長い触角を持ち、腹部にも1対の尾毛があり、雌は長い産卵管をもつ[2]。地上性-半地上性の多くの種類は他のバッタ目昆虫に比べ胸に柔軟性があり、頭さえ通ればその隙間をくぐり抜けてしまう。しかしスズムシのようにこの特技を持ち合わせていないものもいる。
脚
脚の中では後脚が特に長く太く発達し、移動や逃走の際には後脚を利用して跳躍するものが多い。また、前脚脛節のつけ根に耳(弦音器官)を持つ[13][2]。この感覚器が刺激されると身体が硬直するため、捕食者から逃れようと石の隙間に入り込んだり、ヒトが指でつまんだりすると擬死(いわゆる「死んだふり」)に陥ることがある[14]。
翅(羽)
成虫の雄は前翅に発達した発音器をもち、種特有の鳴き声を出す[2]。一方で、発音器のないものや前後の翅が鱗状に退化したものや全く消失しているものもいる[2]。樹上性の種類の中には、立派な翅があるにもかかわらず雄も全く鳴くことが出来ないものも少なくない。翅を使って鳴く種類のオスとメスを比べた場合、メスの前翅の翅脈は前後に直線的に伸びるが、オスの翅脈は複雑な模様を描く。中にはメスに翅がなく、オスに鳴くための前翅だけがあるカネタタキのような種類や、オスは羽化後に後翅が取れてしまう種類もいる。
成虫には翅(羽)があり、翅を使って飛翔する種類がいる。コオロギ上科の多くの種では、同種、同性であっても、環境その他の影響により前・後翅が長く発達し飛翔することのできる長翅型と、それらが短く飛翔できない短翅型が出現する。これらの違いは、その個体が生育するうえで被ったストレスに関係があることが実験により確かめられている。幼虫時に脚や尾毛等の付属肢(特に脚)を切断したり、高温や低温にさらして飼育すると、その個体は短翅型として羽化し、一方、完品のまま適温範囲内で成長した個体は長翅型として羽化する。また、長翅型として羽化して直後に脚を失うと、飛翔せずに後翅を脱落させ飛翔能力をすみやかに放棄する。これらのことから、コオロギは、体にストレスを受けると、体内のホルモンが、長翅による飛翔という冒険的行動をその個体に控えさせるよう働くと考えられている。
生態ニンジンを餌にして飼育されているヨーロッパイエコオロギ再生紙で出来た卵トレイは、居住区域の表面積を広げ、重なりが生む隙間空間は隠れ家にもなる[15]
田畑、草原、森林、人家の周囲などの地上に生息するが、乾燥地、湿地、山地、海岸など環境によって見られる種類は異なる。ほとんどのコオロギは夜行性で、日中は草地や石の下、穴など物陰に潜むことが多い。中には洞窟性のものやアリヅカコオロギのようにアリの巣に共生するものもいる。触角、尾毛、耳などの感覚器や鳴き声はこれらの暗い空間に適応したものである。夜間に地上を徘徊する種類には飛翔して灯火に飛来するものもいる。
天敵はカマキリ、クモ、ムカデ、カエル、トカゲ、鳥類などである。このような天敵に遭遇した時は後脚で大きく跳躍して逃走する。擬死の習性は、カエルのように動く餌を狙う天敵による捕食を免れるには有効とみられる[14]。また、湿地に適応した種類は水面に落ちてもよく水に浮き、人間の平泳ぎのように後脚で水面を蹴ってかなりの速度で泳ぐ。
産卵、ライフサイクル
普通、成虫は晩夏 - 秋に現れ、種により特有の鳴き声で求愛をする[2][16]。交尾が終わったメスは土中や植物の組織内に一粒ずつ産卵する。メスの尾端には長い産卵管があり、産卵の際に土中や植物の組織内に産卵管を差し込む[17]。日本の本州などの温帯地方に生息するものは、冬になる前に産卵して死に、卵で越冬し、暖かくなると孵化するものが多い[17]。これらのコオロギは、1年に1回しか増えないため、大量飼育には適さない[17]。食用や飼料用に飼育されるフタホシコオロギやヨーロッパイエコオロギは、30℃以上の環境で1年中産卵し、飼育条件が整うと爆発的に増殖する[17]。