開化探偵帳
ジャンル刑事ドラマ
原作島田一男
脚本島田一男、矢代静一他
演出小林万顕
『開化探偵帳』(かいかたんていちょう)は、1968年11月1日から1969年10月10日まで、NHK総合テレビで、金曜日の20時から21時に放送されたテレビドラマである。『金曜時代劇』としては珍しく、明治維新後の東京を舞台にしている。 明治7 - 8年の文明開化期に、チョンマゲを切り落とし「ざんぎり頭」となって、背広に身を包んだ元武士の新宮寺京介が、警視庁(内務省管轄)に奉職、浅草伝法院屯所の探索方(現在の刑事)として、上司や仲間、町の人たちとともに浅草を舞台に活躍する[1][2][3]。 原作者の島田一男は、このドラマのために警視庁に日を置かず通い、神田の古本屋で300冊以上の資料を購入した。浅草にも十数回訪れている。 また、「グラフNHK」1968年11月1日号で「明治時代は、史実はわかっているが、その史実の周辺は知られておらず、その知られていない部分を調べ、考証して、ドラマを作る。江戸時代が舞台の捕物帳にはこの苦労はない」と語り、その一方で、これは苦労であっても楽しい苦労であり、明治版の捕物帳ではない「探偵帳」を書き続けるとも話している[1]。
概要
登場人物
伝法院屯所
新宮寺京介
演:緒形拳探索方二等巡査、深川の浪人の子で長屋育ち、事件解決には証拠を何よりも重んじる。
藤井弥太郎
演:川崎敬三探索方二等巡査、京介の同僚。元南町奉行同心で、探索方となってからも同心時代の着流し姿で捜査に取り組む。一見気取り屋だが本当は優しい。
大木一郎太
演:小山田宗徳浅草屯所長の大警部
門司勝之助
演:郷^治探索方二等巡査。京介の同僚で、六尺棒の使い手である。京介同様に洋装で捜査に携わる。
庄司孫右衛門
演:巌金四郎探索方頭の小警部、元会津藩士。屯所の最年長者で温厚な人物。
難波竹丸
演:木下秀雄探索方三等巡査、屯所の書き役(書記)。生真面目で仕事熱心だが、小藩の出のため出世が遅れがちである。
駒形の浅吉
演:花柳喜章探索方の手先。元南町奉行所の目明しで、維新後も親分と呼ばれている。浅草一帯の土地鑑がある。
お源
演:滝那保代屯所の雑役婦、屯所の探索方に噂話などの情報を持ち込む。自分が頼りにされるのを喜ぶ。
浅草の人々
伊之助
演:中原成男探索方がひいきにするそば屋「紅梅そば」の主人、元は深川の板前。
お富
演:小柳弥栄伊之助の女房で小梅の姉、元は深川の羽織芸者。
小梅
演:香山美子浅草芸者で、お富の妹。そば屋に同居している。弥太郎の優しさを見抜きつつも、実は京介ファン。
長十郎
演:内田朝雄京介が下宿している質屋「鈴や」の主人、京介の捜査の手伝いもする。
お金
演:鮎川いずみ長十郎の娘、京介に恋心を抱いている。一方で、京介に子供扱いされたり、ゆっくり話す時間がないことなどに不満を持っている。
[1][4][5]
スタッフ
原作:島田一男
脚本:島田一男、土橋成男、中沢昭二、岡田光治、矢代静一
演出:小林万顕、浦野進、沼野芳脩
製作:NHK
[6] 明治7年(1874年)ごろの浅草は、神社仏閣と繁華街とを抱えた街で人口が多く、事件もまた多かった。その浅草の浅草寺の本坊、癜風インに「浅草巡査屯所」が置かれるようになる。屯所というのは私服刑事の詰め所であり、30人ほどの巡査が交代で詰めていた。この伝法院の屯所がドラマの舞台である。 当時の東京府下には、捜査を担当する屯所が40あった。1871年(明治4年)、フランスの警察制度などを参考に編み出された邏卒制度が採用され、1875年(明治7年)に東京警視庁が設立された。警視庁設立後は、邏卒は巡査となった。巡査屯所は警察署の前身で、現場は屯所、そして事務は警視出張所が担当した。屯所にいつも詰めていたのは巡査長、巡査部長、警務員(刑事)3名、書記、30名の巡査だった[1]。 東京警視庁の管轄は府下全域で、これを六大区に分け、1つの大区は16の小区から構成されていた。屯所は小区に1つの割で設けられ、伝法院の浅草巡査屯所は、第五大区第八小区の屯所であった。ちなみに、伝法院にはかつて新徴組や、維新後の府兵の屯所も置かれていた。屯所の下には交番所が置かれた。警視庁の役職はまず警視総監に当たる大警視、そして権大警視、小警視、権小警視、大警部、権大警部、中警部、権中警部、小警部、権小警部がいた。彼らの下にいる巡査には一等から四等まであり、一等巡査は他の巡査の指揮監督に当たった[1]。 主人公の京介を演じる緒形拳の台本には、赤や青のペンでメモがびっしり記入されており、同じプロダクションの先輩である川崎敬三に、かなりのライバル意識を燃やしていた。また、このドラマに出演して、警察官に親近感を持つようになったとも話している。役作りのため、警視庁から資料を借りて読むこともあった[5]。 一方で藤井弥太郎役の川崎敬三は、硬派や熱血漢の多いドラマの登場人物の中で、二枚目半という異色な存在だった。本人に言わせれば、薩摩や長州の天下となった明治時代の江戸っ子の悲しさが、弥太郎を演じるうえでの核心となっていた。一方で弥太郎にはややとぼけたところもあり、役作り、特に声の出し方には気を使い、この役作りのため、また、コマ割り
当時の浅草の警察
エピソード
捕物が主体であるため、殺陣も多かった。このころには殺陣にもテンポの速さが求められるようになり、また、主人公が警察官であるため、攻めより受け身の殺陣がメインであった。セットが狭いため、出演者がけがをしないように、殺陣師の高瀬将敏は気を使った。殺陣以外にも、ドラマの中で古武道の大会が登場したこともある[5]。
放送当時は、明治風のウエストを絞った四つボタンの背広やマントが流行っており、京介を演じる緒形拳や、勝之助を演じる郷^治の服装は、そのまま外に出て行っても、違和感がなかったのではないかと言われている[5]。