長谷川 雪旦（はせがわ せったん、安永7年（1778年） - 天保14年1月28日（1843年2月26日））は江戸時代後期の絵師。姓は金沢[1]、名は宗秀。通称は茂右衛門、または長之助とも称した。別号に一陽庵、嚴岳斎、岩岳斎、岳斎。息子の長谷川雪堤も絵師。「江戸名所図会」、「江戸名所花暦」の挿絵画家、或いは唐津藩・尾張藩[1]の御用絵師として知られる。
目次

1 略歴

2 代表作

3 脚注

4 参考資料

略歴

江戸出身。唐津藩士の子[1]。住居は下谷三枚橋（現在の台東区）。国立国会図書館には「雪旦・雪堤粉本」という大量の下絵や模写が一括して保存されており、それらの研究により、雪舟13代を名乗る絵師長谷川雪嶺を師としたことが確認されている。その模写には師雪嶺や雪舟の作品が複数存在しているが、それに留まらず琳派風・円山四条派風の図や、伝統的な仏画等も含まれており、雪旦が早い段階から様々な流派の絵をこだわりなく学んでいたことがわかる。

中年期には高嵩谷に師事し、狩野派も学んだという[1]。『増補浮世絵類考』の記述を元にはじめ彫物大工で後藤茂右衛門と名乗った言われるが、数え15歳にして既に画技はかなりの習熟を見せ彫物大工の片手間にできる業ではなく、その可能性は低い。

現在確認できる雪旦最初の仕事は、寛政10年（1798年）出版の『三陀羅かすみ』（墨田区蔵、ピーター・モースコレクション）で、北尾重政や葛飾北斎と分担し漢画を担当している。以後も、特定の流派に属することなく、漢画系の町絵師として狂歌本の挿絵や肖像画を描いて生計を立てる。また、俳諧を好み、五楽という俳号を名乗って文人たちと盛んに交流した。

転機が訪れたのは40代に入った頃である。文政元年（1818年）唐津藩主小笠原長昌に従い唐津に赴いていることから、この少し前に唐津藩の御用絵師になったものと推測され、今も唐津には雪旦の作品が相当数残っている。この他にも雪旦はしばしば各地を旅し、その土地の名所や風俗のスケッチを多く残しており、こうした態度が『江戸名所図会』を生み出す土壌になったと言える。天保5年から7年に刊行された『江戸名所図会』では、650景にも及ぶ挿絵を描き名声を得る。その甲斐あってか、文政12年（1831年）に法橋、天保11年（1839年）頃には法眼に叙せられる。

天保14年（1843年）66歳で没す。浅草の幸龍寺（関東大震災後に世田谷区北烏山に移転）に葬られる。弟子に息子の長谷川雪堤、朝岡且?（たんきょう）など。
代表作

作品名技法形状・員数寸法（縦x横cm）所有者年代落款備考
⇒鎌倉・江ノ島図屏風六曲一双152.5*332.0江戸東京博物館天保5年（1834年）頃
韓信股くぐりの図絵馬1面成田山霊光館天保6年（1835年）9月千葉県指定有形民俗文化財
⇒滝沢馬琴肖像並古稀自祝之題詠絹本著色1幅84.5×29.0早稲田大学図書館天保7年（1836年）
春秋隅田川図屏風六曲一双文教大学湘南図書館天保5-8年頃右隻は雪堤、左隻は雪旦担当
四季耕作図屏風六曲一双佐賀県立博物館天保9年（1838年）
桜井の別れ図桐地著色金泥絵馬1面108.9x169.8（額面）浅草寺1839年（天保10年2月）款記「長谷川法橋雪旦」/「宗秀」朱文方印絵馬堂所在[2]。
錣引図桐金箔地著色絵馬1面187.0x13.6（額面）浅草寺1840年（天保11年2月）款記「長谷川法眼雪旦六十三歳画」/「宗秀」朱文方印絵馬堂所在[2]。
松島眺望図絹本淡彩1幅57.0x101.5仙台市博物館
達磨図紙本著色1幅172.5x91.7称名寺（金沢文庫保管）款記「長谷川雪旦拝画」[3]
維摩居士図紙本著色1幅172.3x91.7称名寺（金沢文庫保管）款記「長谷川宗秀藤原雪旦筆」[3]

脚注

[ヘルプ]
^ a b c d 原徳斎 『先哲像傳』「筆林部」より。同著は弘化元年（1844年）に四巻本として出版されているが、雪旦に関する記事は刊行されることがなかった七冊本の稿本のうちにある（国立国会図書館蔵）