長時間労働
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経済協力開発機構(OECD)の報告による各国年間平均労働時間の推移(1970年以降)[1]日本の年間総実労働時間数の推移(1947年?2019年)[2]
但し、不払い残業(サービス残業)や副業を除く。また、1969年以前はサービス業を除く規模30人以上事業所を対象とした数値である。1970年?1989年はサービス業を含む規模30人以上事業所を対象とした数値であり、1990年以降は規模5人以上事業所を対象とした数値である。

長時間労働(ちょうじかんろうどう)とは、労働時間が本来予定されている時間数と比較して特に長いこと、又はその状態を指す。

2022年現在、OECD加盟諸国において労働時間を比較した場合、2000時間(h)/年を超える国は、上位からコロンビアメキシココスタリカとなっている[3]。かつて日本も、2000時間(h)/年を超えていたが、1992年以降は2000時間(h)/年を切り、2022年時点で1633時間(h)/年(サービス業を含む30人以上事業所を対象とした場合、1718(h)/年)となっている[2]

但し、パートタイム労働者を除いた場合は、2022年で1948時間(h)/年であり、平成期は2000時間(h)/年前後で推移していた。更に業種別で見た場合、建設業運輸業郵便業は、2019年まで2000時間(h)/年を超えていた[4]。また、このデータは毎月勤労統計調査によるものであるが、あくまで企業側に認められた労働者に支払う労働時間に対する対価に対してのみである為、不払い残業(サービス残業)や副業は含まれない。労働者(非農林業雇用者)の自己申告に基づいた労働力調査によれば、2023年は1935時間(h)/年であり、2000時間(h)/年を切ったのは、2018年以降である[5][6][7]。但し、2020年・2021年に関しては2019年コロナウイルス感染症の流行による経済的影響により時間外労働の減少や宿泊業や飲食業をはじめとした休業者数が2019年に比べて増加していることに留意する必要がある[8]

しかし、パートタイムは世界のどの国も存在し、職種によって労働時間が異なることも世界のどの国も同じであるため、日本の労働時間が2019年基準のoecd平均よりも低いということは意味がある。[9]

労働時間は各種の法令等により上限が定められているが、実際の事業場ではこの上限を超えて使用者が労働者に労働させている例がままみられる。著しい長時間労働は、生産性の低下や、労働者の健康問題を引き起こすことから、長時間労働を規制するための法の枠組みが必要となる。.mw-parser-output .toclimit-2 .toclevel-1 ul,.mw-parser-output .toclimit-3 .toclevel-2 ul,.mw-parser-output .toclimit-4 .toclevel-3 ul,.mw-parser-output .toclimit-5 .toclevel-4 ul,.mw-parser-output .toclimit-6 .toclevel-5 ul,.mw-parser-output .toclimit-7 .toclevel-6 ul{display:none}
世界49時間以上長時間労働者の割合の国別状況(2009年以降最新年度)49時間以上男性長時間労労働者の割合の国別状況(2009年以降最新年度)49時間以上女性長時間労労働者の割合の国別状況(2009年以降最新年度)49時間以上長時間労労働者の割合の男女差の国別状況(2009年以降最新年度)

パートタイマー自営業者も含めたILOのデータ[10]によれば、日本を含めた171カ国・地域の週労働49時間以上の長時間労働者の割合は以下の表のようになっている。日本は総合で171カ国・地域中91番目に少ない国であり、男性は105位(ニウエ除く)、女性は70位(ニウエトケラウ・シンガポール除く)であり、世界的に総合と男性は、中の中、女性は中の上位の位置にある。しかしながら、OECD諸国の中で見た場合は、総合と男性は下位、女性は中の下に位置する。また、日本のデータは2019年コロナウイルス流行下にある2022年のデータであり、68カ国・地域は流行前のデータであり、流行による経済的影響や他国で行われたロックダウン等の流行対策が加味されてないため、単純比較できないことに留意する必要がある。しかし、日本の2019年のデータでは総合で18.28%(男性:26.25%、女性:8.32%)であり、総合で106位、男性は117位、女性は81位に少ない国となる。つまり、日本の長時間労働比率が偏見ほど高くないことを示している。

そして、世界全体の傾向としては、ヨーロッパ地域及びロシアが長時間労働者が少なく、特にロシア・東欧地域が低い傾向がある。これをもって冷戦時代に共産主義陣営に属した影響によるものと思われるが、その陣営に属していたモンゴルやベトナムは、冷戦時代に資本主義陣営に属していた日本やタイよりも長時間労働者の割合が高いため、地域的な影響が大きい。なお、ロシアの年間労働時間は2019年で1965.0時間、コロナウイス感染症2019流行下の2020年は1874.0時間であり、2019年においてOECD加盟諸国で長時間労働者の割合が多い日本・韓国より下回るもののこれら2国に近い労働時間であった[1][7]

更に、国・地域別では、プエルトリコ・ブルガリアが低く、どちらの国・地域も男性が2%未満、女性が1%未満である。逆に高い国・地域は、男性の場合、高い順にインド・ブータン・バングラデシュ・パキスタン・ブルキナファナ・レバノン・コンゴ共和国が45%以上あり上位4位までを南アジア諸国が占め、女性は、高い順にブータン・コンゴ共和国・カンボジアが35%以上いる。

そして、男女差であるが、多くの国は女性より男性の方が長時間労働者の割合が多いが、東南アジアでは、男女差が少ない傾向にある。国別では、低い順にツバル・フィリピン・ミクロネシア、ウォリス・フツナ、香港・東ティモール・タイ・エルサルバドルでは女性の方が多く、特にツバル・フィリピン・ミクロネシアは女性の割合が男性より約1.3倍以上ある。

なお、アフガニスタンは2021年ターリバーン攻勢による混乱の影響か、週労働時間49時間以上の者が、前年(2020年)に比べ、男性は約39%、女性は約77%減少している。また、男女差もターリバーン政権による女性の就労制限の影響を一因とする長時間女性労働者数の大幅な減少で、10倍以上と最も男女差が高い国となっている。

他に、イラク2013年から2017年まで続いたISILとの武力紛争の影響により、ナイジェリアは2016年において石油価格と生産量の低下、ニジェール・デルタ地域における石油およびガスのインフラに対する軍事攻撃、外貨の制約によって生じた1991年以来の不況[11][12]により周辺国と比べて長時間労働者の割合が少なかった。

週労働49時間以上長時間労働者の割合(性別、男女差)国名
(枠内が緑色の国はOECD加盟国)総合(%)男性(%)女性(%)男女差(倍)最新年
 アフガニスタン15.3319.771.118.012021
 アルバニア20.3825.7113.741.872019
 アルジェリア26.0129.948.223.642017
 アンゴラ30.7234.2327.341.252021
 アルゼンチン15.42209.382.132021
 アルメニア9.4914.395.262.742021
 オーストラリア11.8116.646.412.592020
 オーストリア7.07103.782.642022
 アゼルバイジャン3.915.322.412.212021
 バングラデシュ47.3660.2518.213.312017
 ベラルーシ1.462.160.772.82022
 ベルギー7.9410.984.512.432021
 ベリーズ20.422414.881.612019
 ベナン26.6730.9922.631.372011
 バミューダ諸島21.2228.8913.542.132010
 ブータン61.2962.7159.411.062022
 ボリビア22.6326.2518.51.422021
 ボスニア・ヘルツェゴビナ6.618.074.421.832022
 ボツワナ34.9539.7429.271.362010
 ブラジル10.7913.227.531.762022
 ブルネイ24.4126.121.871.192021
 ブルガリア1.171.490.791.892021


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