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槍(やり、英: spear)は、長い柄(え)の先に鋭利な刃物を着装した道具。刺突を主目的とする猟具、武器・武具の一種。先史時代から人類が使用し続け、軍によって戦場で主要な兵器のひとつとして使われ続け、槍と銃の双方の機能を備えた銃剣にその機能は受け継がれた。鎗、鑓とも書く。日本語の「やり」という音の言葉は建武政権期に大光寺合戦(1333年?1334年)で「矢利」が使用されたとあるのが初出である。(※)なお現代中国語では「槍」(qi?ng, ???)という漢字は「銃」という意味に変化した。本来の槍と区別するために銃を「火槍」と表記することもある。 槍は人類最古の狩猟道具・武器の一つで、人類の戦いの歴史(en:Timeline of wars
概論
槍の特性
剣を使うより有利に戦うことができる。欠点は、大型ゆえ閉所での戦闘や乱戦には向かないことや、近接戦闘では長い柄が不利に転じ得ること、携帯に不便なことなどである。
戦闘時に相手との距離がとれることによる恐怖感の少なさや、振りまわすことによる打撃や刺突など基本操作や用途が簡便なため、練度の低い徴用兵を戦力化するにも適した武器であり、洋の東西を問わずに戦場における主兵装として長らく活躍した武器である。
槍を長くするほど、相手との距離を空けて戦えるうえに相手の攻撃が届かず優位に立てる。一方で、槍が長くなればなるほど接近戦が絶望的になるのと同時に、森林や狭所での移動や取り回しが難しくなるなどの大型の武具全般に言える欠点がある。この欠点は洋の東西を問わず認識されており、ファランクスや槍衾(やりぶすま)など野戦で槍兵の密集陣形を作り「鋭い槍先の壁」を作ることで敵を圧倒し撃破する方法が発展した。大軍と大軍が激突する戦争においては槍兵の密集陣形は圧倒的な威力を発揮する。古代マケドニアのサリッサを用いたファランクス
密集陣形で使うことを前提にしつつ、古代マケドニアの国王ピリッポス2世は、当時の常識を覆し、古代ギリシアの槍をさらに2倍ほどの長さの4.0- 6.4mに進化させたサリッサを生み出し、そのサリッサのファランクスで勝利を重ね国を大きくした。
ただし戦場での戦列が乱れた乱戦状態での使用は困難である[1]。しかし、乱戦での使用が不可能という訳ではなく、日本の戦国時代の乱戦においては槍組足軽が「横槍を入れる」といい、槍で側面攻撃する場合もある[2]。
個人戦(一対一の戦い)の場合も、俗に「剣にて槍に対抗するには三倍の段位が必要」と言われるように[3]、一定技量を持った者同士の場合、一対一の戦いでも槍のほうが剣より圧倒的に有利である。
長柄形の武器は、基本的に使用者の身長からその2倍程度までが無難であるとされるが、使用者の身長の数倍以上のものを扱う者もいる(約4?6m)。逆に1mくらいのものもあり、片手で扱う武術もある。「無用の長物」と言うように、使用者が扱えないほど長くなれば戦闘にほとんど使えないということもあり得るので、特殊な方法(集団戦法など)を除いて自分の力量や戦術に似合った大きさのものを選ぶ方が良い。
右手で柄尻に近い側を握り、左手を前に出して支える構えから、左手の中で滑らせながら右手の力で突き出すというのが最も基本的な使い方である。重量のある長槍では両手で握り締め突進しながら突き出すほか、高く差し上げて打ち下ろす使い方も洋の東西で見られる。古代ギリシャの重装歩兵は盾と併用し片手で投槍の要領で肩の上に構えたが、いずれにしても得物の長さや状況に応じて臨機応変に構えを変えたようである。突き刺す以外にも、叩く、なぎ払う、かすめ・叩き斬る、絡める、引っ掛ける、フェイント的に柄の側を使うなど、さまざまな用法が開発されている。
日本では槍術と呼ばれる技術体系がある。槍術は、棒術と組み合わせることも多く、棒術などの他の武術体系の領域とも重複し習得内容の幅が広く、非常に難しい。とは言え、同じ長物である大剣などと比較すると、そこまで扱いづらいものではない。
槍はその威圧感を利用されることもあり、特に衛兵や門番は槍を持った姿が多い。
投げ槍
槍を投擲する概念も、紀元前から存在する用法である。腕の延長としてスイング半径を拡大し飛距離を増大させる槍投器が世界各地から発掘されている。投擲用の槍は、適当な重量やバランスが手持ち用の物とは異なるため、独自の発展を遂げた。古代ローマのピルムは最も高度に発展したものの一つと言える。
弓の発明・伝来がなかったアフリカ、オーストラリア、ニュージーランド、ニューギニア島、ポリネシア・メラネシア・ミクロネシア太平洋諸島圏及びハワイ諸島、南米奥地などでは、近代まで狩猟具や武器として用いられてきた。