鍾乳石(しょうにゅうせき、英: stalactite)は、洞窟内部に形成される堆積物[2]。洞窟の壁や天井からつらら状に垂れ下がるつらら石(氷柱石)を指すこともあるが、学術的には区別すべきとされている[2]。 鍾乳石という語は、3世紀の後漢末の本草書『神農本草経』中巻玉石部中品[3]に「石鍾乳 味甘温 主治咳逆上氣 明目益精 安五臟 通百節 利九竅 下乳汁 生山谷」とあり[4]、また、正倉院所蔵の奈良時代の石薬中に鍾乳床がある[5]。 日本語の鍾乳石に相当する英語のstalactiteは、ギリシャ語で「滴る」を意味するstalasso (σταλ?σσω)という語に由来する。また、英語のdripstone(点滴石、滴下石、水滴石、滴石)は、stalactiteだけでなく、stalagmite(石筍)や他の類似物をも含むより広義な用語である[6]。
語源
分類「洞窟生成物」および「カルスト地形」を参照
滴下する水で形成される鍾乳石
鍾乳管(Soda-straw、Macaroni)
石灰岩洞窟で水滴が落下した後に方解石結晶の輪を残しながら下方(重力方向)に次々と成長して中空の管となったもの[2]。鍾乳石の誕生は、炭酸カルシウムで飽和した一滴の雫から始まる。水滴がしたたりおちるとき、まず方解石の微小な晶出/沈殿が水滴の円周に沿ってリング状に天井面にできる。後から垂れてくる水滴は前のリングの先に新たなリングを次々に沈着させ、次第にそれが伸びていく。こうしてリングから細い(0.5~0.6mm)管状のものに成長し、鍾乳管(ソーダストローあるいは単にストロー)と呼ばれる中空状の細長い鍾乳石が生まれる。
つらら石(Stalactite)
洞窟の天井部などから垂れ下がっている鍾乳管が同心状に成長して氷の「つらら」のようになったもの[2]。鍾乳管の内部の穴が方解石の成長によってふさがれてしまったり、水量が増えてくると、水は外側を流れ始め、より沢山の方解石を沈積させるようになり、一般的なつらら状の鍾乳石の成長へと変わる。鍾乳管は長く成長することがあるが、とても脆い。1m以上の長さをもつものが稀にみられる。鍾乳管がよく発達しているのは、いわゆる密閉型の空間が大半である。不純物や土壌由来の鉄イオンの多少によって色合いが変化し、白色?黄土色?茶色を呈するものが一般的である。金属鉱床を伴う地帯では、方解石ではない鉄や銅などを含む別鉱物種のものができることがあり、赤褐色や黒色、緑色、青色、水色を呈することがあるが、産出は稀である。
石筍(Stalagmite)
洞窟の洞床面からタケノコ(筍)状に上に向かって成長する鍾乳石[2]。
石柱(Column)
洞窟の天井部のつらら石とその洞床面にあった石筍が互いに成長し連結することで柱状になった鍾乳石[2]。石灰華柱、石灰石柱ともいう。
ドラペリー(Drapery)
洞窟の天井部・壁面を水滴が直線?曲線状に流れ薄いカーテン状に成長した鍾乳石[2]。
流水で形成される鍾乳石
流れ石(Flowstone)
洞窟の壁面・床面などをフィルム状に流れる水で形成されるシート状の鍾乳石[2]。
流礫棚(Clastic canopy)
洞窟内に流入した砂礫が堆積した後に、その表面に流れ石が形成され、さらに未固結の砂礫層の下部のみが洗い流されて表層のみが板状に残された鍾乳石[2]。
停滞した水域に形成される鍾乳石
畦石(Rimstone)
洞底に形成された水溜まり(プール)から水が溢流する部分に方解石が沈着して堤防のように形成される鍾乳石[2]。
棚状石(Shelfstone)
洞底に形成された水溜まり(プール)の表面に薄く形成される鍾乳石でプールの表面を閉ざしてしまうこともある[2]。
洞窟真珠(Cave pearl)
洞窟の停滞した水域にみられる真珠に似た球体の鍾乳石[2]。
浸出水で形成される鍾乳石
曲り石(Helictite)
浸み出した水が曲りくねった状態で成長する鍾乳石[2]。
石楯(Shield)
洞床などの割れ目から毛管現象で浸み出す水により2枚の平行な楕円?円状の平板に成長する鍾乳石[2]。
中空球状鍾乳石(Blister)
洞窟の天井部・壁面・鍾乳石の表面にみられる中空の鍾乳石[2]。
ボックスワーク(Boxwork)
洞窟の天井部などに形成される底のない箱状の鍾乳石[2]。
石花(Anthodite)
細い針状結晶が放射状に集合し花状に形成される鍾乳石[2]。
熱水で形成される鍾乳石
巨大結晶(Giant crystal)
熱水により坑道内に形成される鍾乳石[2]。
生物の関与で形成される鍾乳石
珪藻鍾乳石(Diatom speleothem)
地表から流入した珪藻類が群体に成長して形成される鍾乳石[2]。