鍵のかかった部屋_(テレビドラマ)
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『防犯探偵・榎本シリーズ』(ぼうはんたんてい・えのもとシリーズ)は、KADOKAWAより2004年から刊行されている貴志祐介推理小説シリーズの総称。2012年には第3作目の表題作『鍵のかかった部屋』(かぎのかかったへや)のタイトルでテレビドラマ化され、第3作目の表題作は同年に朗読劇化もされている[1]
概要

防犯ショップ「F&Fセキュリティ・ショップ」店長の防犯コンサルタントで本職は泥棒である本作の探偵役・榎本径と、本作のワトスン役である美人で常識人だがどこか天然の気がある弁護士・青砥純子が、密室殺人が絡む事件に関わり、密室の謎を解き明かして事件を解決していく姿を描く。

全作品を通して密室殺人のみを取り扱っている他、純子が様々な仮説を立てては榎本が反証することで、解を一つ一つ潰していきながら推理するという「別解潰し」が基本的なパターンとなっている。犯罪そのものは陰惨なものが多い一方、純子の仮説が暴走してしまうのが次第にお約束ギャグとなっていく点(『ミステリークロック』ではこれにとどまらず、極限状況下でヒロインにあるまじき道化役を演じる)など、全体として貴志作品としてはユーモラスな味を湛えた作品が多いが、劇団『土性骨』が関わる話はとりわけスラップスティック・コメディに近いタッチとなっている。

当初、著者は榎本と純子を1作目の『硝子のハンマー』のみの登場人物にするつもりだったが、『硝子のハンマー』では使用されずにストックされたトリックを活かすためにシリーズとして描かれ、2作目『狐火の家』が刊行されたという経緯がある[2][3][4]。『硝子のハンマー』以降の榎本・純子の活躍は短編として2005年から『野性時代』(2011年に『小説 野性時代』に改題)で不定期に掲載されている。

2013年から2014年まで、JTの公式WEBサイト「ちょっと一服ひろば」で、テレビドラマ版オリジナルキャラクターの芹沢豪が主人公の番外編「一服ひろばの謎」(全5話)が連載された。この短編は、2015年に発売されたアンソロジー・角川文庫『サイドストーリーズ』(ISBN 978-4-04-102611-3)に収録されている。

2020年、文庫本の装幀が刷新。各巻ごとに異なるイラストレーターが起用されている。『硝子のハンマー』はyoco[5]、『狐火の家』は浮雲宇一[6]、『鍵のかかった部屋』は田中寛崇[7]、『ミステリークロック』『コロッサスの鉤爪』は鈴木康士[8][9]が担当した。
シリーズ一覧
硝子のハンマー


単行本:2004年4月20日発売[10]角川書店ISBN 978-4-04-873529-2

文庫本:2007年10月25日発売[11]角川文庫ISBN 978-4-04-197907-5

狐火の家


単行本:2008年3月19日発売[12]、角川書店、ISBN 978-4-04-873832-3

文庫本:2011年9月23日発売[13]、角川文庫、ISBN 978-4-04-197908-2

鍵のかかった部屋


単行本:2011年7月25日発売[14]、角川書店、ISBN 978-4-04-874224-5

文庫本:2012年4月25日発売[15]、角川文庫、ISBN 978-4-04-100286-5

ミステリークロック


単行本:2017年10月20日発売[16]KADOKAWAISBN 978-4-04-104450-6

文庫本『ミステリークロック』:2020年11月21日発売[17]、角川文庫、ISBN 978-4-04-109876-9

文庫本『コロッサスの鉤爪』:2020年11月21日発売[18]、角川文庫、ISBN 978-4-04-110889-5

登場人物
メイン
榎本 径(えのもと けい)
防犯ショップ『F&Fセキュリティ・ショップ
[注 1]』の店長にして防犯コンサルタント。だが本職は泥棒であり、防犯関連の仕事はマネーロンダリングのために始めたに過ぎない。色白で繊細な感じの細面で小柄な男性。移動手段は『F&Fセキュリティ・ショップ』のロゴが入った白いスズキ・ジムニー。冷静かつ理論的で、自分のペースを崩さない飄々とした性格。知的で自分では敵わない女性に惹かれる傾向があり、そういった女性に自分の力を見せつけたい欲求を秘めているため、純子に対しても同様の気持ちを抱いている。防犯に関して並々ならぬ知識を持ち、純子と会う以前に松戸市での殺人事件で弁護側の証人として密室を破り被告を無罪に導いたことがある。警察ともパイプを築いており、事件に関する情報を聞き出したり、自身も警察の依頼で捜査に協力している。こうした実質的な探偵業も含めたコンサルティングでも生計を立てられるのが現状だが、貴重なアンティーク時計を目の前にして「入手」したい欲にかられるなど泥棒は性分としての面も強い。自分に都合のいい解釈だと自覚しながらも盗みを許容しても殺人だけは絶対にしないという矜持を持ち、同時に殺人を許さない気持ちは強く、それを犯した人間には容赦はしない。防犯以外にも物理化学など多岐に亘る知識を有しており、店が閑散な時間にCSアニマルプラネットディスカバリーチャンネル[注 2]を見ていることから蜘蛛にも詳しい。ビリヤードが得意で将棋にも造詣がある。
青砥 純子(あおと じゅんこ)
『レスキュー法律事務所』弁護士。清楚で知的な佇まいの美人で、本人も自分が美人であることは否定しない。愛車はアウディ・A3。趣味はテニスとエステ。介護サービス会社「ベイリーフ」社長殺害事件の被疑者の無実を証明するため、先輩の弁護士から聞いた榎本を頼ったのが彼との初対面。気丈かつ正義感の強い性格で筋の通らないことを嫌う。聡明で頭も良く、榎本と推理を戦わせるが榎本に反証されることが多い。だがしっかりとした風貌とは裏腹に天然の要素もあり、トンチンカンな推理や思いつきを披露しては榎本を呆れさせることもしばしばで、果ては事件関係者からもツッコまれている。だが、榎本でも眼を張る推理を思いついたり、榎本の知恵を借りたとはいえ自力で真相に辿り着いたこともある。榎本のことは直感で泥棒だと感づいており、次第にその疑いを濃厚にしている。榎本の素性に胡散臭さを感じ、榎本の物言いや飄々とした態度に腹を立てることがしばしばだが、密室の解明においては全幅の信頼を寄せている。弁護士に対して接見妨害やなかなか情報を開示しようとしないなど悪質に対応する警察を良く思っていない。「ベイリーフ」での密室殺人を榎本と解決して以降、その実績を買われて数々の密室殺人に関する依頼が来るようになり、当初は「日本初の密室専門の刑事弁護士として売り出せる」とうそぶいていたが、次第にうんざりした表情も見せるようになった。
その他

本節では2話以上登場した人物を記載。劇団『土性骨』の面々もそれに倣う。
鴻野 光男(こうの みつお)
警視庁捜査一課 警部補。190cmを超える長身に不摂生による弛んだ体と躯強い膂力の持ち主。目は陰険で頭髪は薄く、特に口臭が酷い。榎本とは互いを知り尽くし長い付き合いのある仲で、榎本からは「ハゲコウ」と呼ばれている。性格は狡猾で執念深い。口が悪く態度は横暴で、怒らせると凶暴性を見せかねないタイプ。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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