錯視
[Wikipedia|▼Menu]
このイラストは、ウサギにもアヒルにも見えるという錯視が起こる。

錯視(さくし、: optical illusion[1])とは、視覚に関する錯覚のことである。俗に「の錯覚」ともよばれる。生理的錯覚に属するもの、特に幾何学的錯視については多くの種類が知られている。だまし絵とは異なる原理による。
おもな幾何学的錯視
ミュラー・リヤー錯視ミュラー・リヤー錯視

ミュラー・リヤー錯視 (Muller-Lyer illusion) はミュラー・リヤーが1889年に発表した錯視[2]。線分の両端に内向きの矢羽を付けたもの(上段)と外向きの矢羽を付けたもの(中段)の線分は、上段が短く、中段は長く感じる[2]が、実際は同じ長さである。この錯覚が発生する説明は様々な側面から行われているが、有名な説明として、グリゴリーが1963年に発表した線遠近法が挙げられる[2]

また、この錯覚を応用したものとして、ジャッドの図形が挙げられる[3]。ジャッドの図形は、線分の中央に中点を打ち、両端に異なる向きの矢羽を付けると、外向きの矢羽が付けられた側に中点がずれて見えるという錯覚が用いられた図形である[3]。このような錯視を「大きさの錯視」という[4]
ツェルナー錯視ツェルナー錯視詳細は「ツェルナー錯視」を参照

非常に有名な錯視の一つ。図にある4本の線分は全て平行である。羽の角度鈍角であるほど、錯視は顕著になる。このような錯視を「方位の錯視」という。
ヘリング錯視ヘリング錯視詳細は「ヘリング錯視」を参照

上の2本の平行線は、斜線の影響を受けてゆがんで見える。このような錯視を「湾曲の錯視」ともいう。湾曲の錯視では他にオービソン錯視ヴント錯視などが該当する。
ポンゾ錯視二つの平行線は同じ長さである詳細は「ポンゾ錯視」を参照

二つに交わる線分の間に平行線を入れると、上の平行線が長く見える。錯視の発生は決して強くないが、一般によく知られる錯視の一つ。また、同視の錯視にはポンゾの円筒がある。なお、この錯視に関しては過去にリップスが発表を行っているが、現在ではポンゾ錯視というのが一般的。
フィック錯視一般にはT字形が知られる

フィック錯視 (Fick illusion) はフィック (Fick) によって1851年に示された、同じ長さの図形は縦にされたものが横にされたものより長く感じるという錯視[5][6]。右の図形「A」と「B」は合同であるが、図形Bの方が長く見える。また、図形Aの方が太く見える。これは一般に、水平な横線より垂直な縦線の方が長く認識されるために起こるとされるが、この図形を90度傾けても図形Bの方が長く見えるため、詳しいメカニズムはまだ解明されていない。垂直水平錯視 (vertical-horizontal illusion, V-H illusion) ともいわれる[6]
ポッゲンドルフ錯視平行線の軌跡はACが正しい詳細は「ポゲンドルフ錯視」を参照

斜線を描き、その間の形跡を別の図形で隠すと、その直線の始まりと終わりがずれて見える錯視で、よく知られる錯視である。図ではAとつながっているのは、一見それらしく見えるBではなく、Cが正しい。なお、この錯視はミュラーリヤーが投稿した論文の中から、審査員であったポッゲンドルフが発見したものであり、彼はミュラーにこの発見も付け加えるように依頼したが、ミュラーが気を利かせ、事実上の発見者であるポッゲンドルフの名前を冠して論文発表したといわれている。
デルブーフ錯視円は同じ大きさである。詳細は「デルブーフ錯視」を参照

デルブフ錯視とも言われる。2つ合同なを描き、片方には外に大きな同心円、もう片方には外に小さな同心円を描くと、元の円の大きさが異なって見える錯視。大きさが極端なほど錯視も顕著になる。応用として、図形の中から別の図形をくりぬくと、くりぬいた部分が大きく見える。円以外に、他の図形(正多角形など)でも発生する。
オッペル・クント錯視オッペル・クント錯視

まずは等間隔に3本の平行線を引き、それぞれA、B、Cとする。AとBの間には何本もの平行線を引き、BとCの間には何も引かない。すると、AとBの間隔の方が広く見える。図の線分ABと線分BCの距離は同じである。なお、最初に文献にて提示したのはオッペルであるが、後にクントが量的研究を行ったことから、今日では先駆者の2人の名を連ねてこう呼ぶのが一般的である[7]
フレイザー錯視渦巻き状の図形を指でなぞってみると、実際は同心円であることが分かる。

フレイザー錯視は、イギリスの心理学者ジェームス・フレイザーが1908年に発表した錯視[8]。中央を共有する複数の円の上に傾き錯視が現れるようにすることで得られ、同心円が渦巻きのように見えるようになる[8]。これは、水平から若干傾けた斜線を平行に置くことで、全体としては水平であるはずの直線が、傾き方向に傾いて見える現象を利用している[9]

なお、直線でも同じ錯視は現れ、傾いて見える。また、他の傾き錯視を用いてもフレイザー錯視のような渦巻き錯視の作図が可能であることが示されている[8]
ミュンスターバーグ錯視・カフェウォール錯視カフェウォール錯視。水平の線が右または左に傾いて見える。1908年に報告。

平行線の両側に等間隔に同じ色の正方形を描く(上下互い違いになるようにする)。すると、平行なはずの線分が歪んで見える。カフェウォール錯視はその線分が灰色になったもので、より屈折度が高まる。
エビングハウス錯視中央の円は同じであるが、異なって見える。詳細は「エビングハウス錯視」を参照

同じ大きさの図形でも、大きい物の周りに置かれると小さく、小さい物の周りに置かれると大きく見える錯視。円形、球体が最も効果が現れる。また、エビングハウスは他の錯視も発表しているため、エビングハウスの大きさ錯視ともいう。
ジャストロー図形2つの扇形は同じであるが、下の扇形が大きく見える。

ジャストロー錯視ともいう。上の図で、二つの扇形では内側、即ち下の扇形の方が大きく見える。また、その応用で台形を上下に並べると必然的に上の台形が大きく見える。
その他の幾何学的錯視
ヴント錯視
ヘリング錯視の逆に当たる。今度は平行線が反り返って見える。
オービソン錯視
ヘリング錯視と同じ原理で、同心円の上に描かれた正方形がゆがんで見える。
ザンダー錯視
同じ長さの対角線が描く平行四辺形の形によって、別の長さに見える(鈍角の方が長く見える)錯視。
ボールドウィン錯視
同じ長さの平行な線分を描き、片方の始点と終点には大きな図形を、もう片方には小さな図形を描くと、線分が異なった長さに見える錯視。
ジャッド錯視
二等分線の両端に、片方は外向けに、もう片方は内向けに矢状の羽を付けると、等分されたはずの線分の長さが異なって見える。羽の角度が鋭いほど錯視は顕著になる。ミュラーリヤー錯視の一種といわれる。
ヘフラーの図形
放射状の線の上に線分を引くと、曲がって見える錯視。任意に交差させた線分だと、なお効果的である。
盛永の錯視
垂直な線を描き、それに接する鋭角を左右対称に描く。垂直線を消せば、互いの鋭角の接点が垂直でなく見える。
小保内の角度錯視
垂直線の先端が、斜線が延長線上で交わるように線分を引いた場合、斜線が実際の交点より内側に見える。ポッゲンドルフ錯視の一種。
内藤の重力レンズ錯視
平行四辺形の交点4箇所にドットを打ち、その周辺に任意の円を描く(接してはいけない)。すると、平行四辺形がいびつな四角形に見える。1991年に内藤率いるNTTの研究グループが発表した。
レニー錯視
斜めの線に接するように45度角を描く。同じ角度なのに、上下で角度が異なって見える。
ブルンズウィック錯視(ヘフラーの湾曲対比)
二つの緩やかな彎曲線を描き、それを強い彎曲線と弱い彎曲線で囲ってやると、弱い彎曲線の方が曲がりが強く見える。ヘフラー彎曲対比とも呼ばれる。
エーレンシュタイン錯視


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:41 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef