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銃社会(じゅうしゃかい)とは、銃が日常的に存在する社会を指す言葉。 この言葉は日常生活には必要とされないはずの、または容易に人命を失わせかねない危険な銃器が社会の至る所に存在しその治安維持に役立っている反面、治安を悪化させる要因ともなっている状態を指す。 この状態にある社会では、銃は所持する人の生命と財産を守る道具として扱われ、犯罪や暴力に対する抑止力となっている。しかし、銃が数ドルにも満たないコストで他人の命を奪いかねない危険な器具であることから、その扱いには厳重に注意しなければならないのだがそれが携帯することが可能で、また誰にでも(もちろん、未熟な子供には持たされないが)入手可能であるため、害意を持った人間の手にある銃器はその害意を増幅・増長させる結果を発生させる。 なお、人間は往々にして「間違える」動物であるが、これが銃に絡む問題ともなると、取り返しのつかない間違い[1]をすることもある。銃器は取り扱いを誤れば不用意に弾丸が発射される暴発という事故になるが、このコントロールされていない弾丸が誰かしらに当たってしまえば重大な負傷を招く。これ以外にも例えば玩具の銃で遊んでいた子供を「今まさに銃を発砲しようとしている凶悪犯」と誤認、射殺後に「玩具で遊んでいた子供」だと判明するケースもあり、銃の存在から来る社会的ストレスは計り知れない。なおこういった事情にも絡み、米国などでは遊戯銃に対してその外観が本物と混同されるようなものが禁止されており、この規制は水鉄砲やガンシューティングゲーム用のコントローラー(ライトガン)にも及ぶ。警察などで訓練に使われる銃の外見を模した模造銃は、材質と無関係に全て赤や青に塗られることが義務付けられており「レッドガン」や「ブルーガン」という名で販売されている。 主にアメリカの実情を示唆した言葉とされるが、ユネスコの報告によると、実際はアメリカよりも南米のベネズエラやブラジルの方が銃器の使用による死亡率は遙かに高く、2008年から2012年のいずれかの年の1年間でブラジルでは人口10万人当たり21.9人が、ベネズエラでは55.4人が銃が原因で死亡した[2]。 ちなみにアメリカでは銃による凶悪犯罪(強盗・殺人など)の問題もあり、銃規制法案がたびたび提出されるなど規制の方向で進んでいる。しかしながら、規制法案が提出されるたびに政治的発言力のある全米ライフル協会の反対により法案の成立が阻止され、実効力の見られる規制法が成立したのは1991年のことである。(後述) アメリカ以外でも社会に存在する銃が社会に及ぼす影響は計り知れず、日本のように国民への銃所持条件を厳格にし、凶悪事件発生時には無力なままでいさせるのか、アメリカ等のように銃を民間に開放してそれらが強盗などを行うのを看過するかという問題に絡み、議論を招いている(無差別乱射に対し応射がなされ、犯人を無力化できた例はない。月刊Gun連載「自衛する市民たち…―ドキュメントUSA」)。 2010年代のアメリカでは、度重なる銃乱射事件などで銃器の販売を続けてきたスーパーマーケット、ウォルマートが販売規制を行うなど銃規制の流れが形成された[3]。だが、2019新型コロナウイルスの感染が国内に拡大すると銃器や弾薬を求める客が増加して売上が拡大した。2020年4月2日、連邦政府はコロナウイルス対策の勧告の中で銃器の販売を外出禁止令下でも営業継続が認められる「必要不可欠なサービス」に認定した[4]。 日本では、明治時代に上流階級の一部[5]や職業によっては銃を所持することが多く見られたが、第二次世界大戦終結以降に銃刀法などにより社会の銃所持が厳しく規制されていることもあり、密輸入ルートを持つ一部(非合法)組織を除けば、銃を携行できるのは狩猟を行う猟師、競技射撃の選手、国防を担う自衛官や国内治安を維持する警察官などに限定されている。 1960年代には、自分のコレクション用に個人で拳銃を日本国内で違法所持することが一部の銃マニアの中で密かなブームになっていたことが土壌となり、角界拳銃密輸事件(1965年発生。大鵬・柏戸・北の富士の3横綱)・芸能界拳銃密輸事件(作曲家の平尾昌章・俳優の里見浩太朗・山城新伍・石原裕次郎・北条きく子 1960年代から1980年代には暴力団絡みの抗争事件で暴力団員が死亡したり、暴力団抗争事件の巻き添えとなる形で一般人に犠牲者が出る事件はあったものの、一般人が銃を持って犯行に及ぶケースは、比較的入手しやすいが拳銃よりも犯罪に扱いづらい側面がある猟銃による犯行を除けばほぼ皆無であった。一方、密輸拳銃などを相当数保有していたと見られる当時の暴力団は銃を徹底管理する方針を取っており、拳銃が暴力団との繋がりを持たない一般人を対象に大量に流れることに否定的だった。 1990年代に入ると、交通・物流の活性化や国際的な人的交流の拡大等のあらゆる面での国際化や、暴力団対策法施行による警察による暴力団取締り強化という変化があった。この変化は、外国から流入する拳銃へのアクセスを容易とし、新たな形の拳銃密輸ルート構築や警察の取り締まり強化によって従来の資金源を断たれた暴力団末端構成員が上位組織への上納金捻出のために大量の拳銃を密売するなどして、日本での拳銃流通量が増加して一般人が拳銃を入手しやすくなったり、外国人流入によって従来の日本暴力団と異なる性格を持つマフィア化した外国人犯罪組織が増加したりしたことで、一般人への拳銃使用に躊躇しない犯罪が発生するようになり、1992年7月の町田市立てこもり事件や1994年10月の品川医師射殺事件、さらに1995年7月の八王子スーパー強盗殺人事件は日本で新たな形態の銃犯罪として大きな注目を集めた。上記の社会の変化は警察に配備された銃器では対応できない事件やテロの発生が懸念されたため、警察機構では従来では殺傷力が強く、被害が広範囲に出やすいと採用を見送っていた機関けん銃等の強力な銃器を配備する傾向も出ているほか、警察官を襲撃して拳銃を強奪するケースもある。 2000年代では、2007年12月9日に東京都目黒区の医師宅で5歳の長男が医師が所有していたライフルで2歳の弟を誤って射殺し、所有者の医師が重過失致死傷罪、銃刀法違反、火薬類取締法違反などで書類送検される事件が[7]、その5日後の12月14日には長崎県の佐世保市でルネサンス佐世保散弾銃乱射事件が発生し、銃の所持について国会で問題になった。 約1億の人口が住む2000年代の日本において銃犯罪の犠牲者総数はわずか数名[8]であり、人口単位を合わせた被害者数で銃の所持が容易なアメリカと比較すると日本では銃犯罪による犠牲者は少ない。 2010年代に入ると3Dプリンターで製造した銃を所持していた男性が逮捕される事件が起きた(3Dプリンター銃製造事件。2014年発生)[9]。2020年代に元内閣総理大臣である安倍晋三を銃撃した事件(安倍晋三銃撃事件。2022年発生)でも手製銃が使われており、こうした拳銃メーカー以外で製造された密造銃の摘発や押収が課題となりつつある[9]。
概要
銃社会と日本